26 進化するレッドキャップ

 

 その瞬間、天上より四体のレッドキャップ達に紅い光が舞い降りて来た。

 それは、レッドキャップ達の頭上に当たり、そして身体の中に吸い込まれる様に消えていく。


――ドクン――。


 すると四体のレッドキャップ達の姿が変化する。体長120㎝から150㎝と一回り大きくなり、手にした大鎌も大きくなった。体のサイズに合わせて大鎌も変化するようだ。


「ほう~。レッドキャップ達が進化したということは、他のグループの奴らがやられたという事か。それはそれで残念だが、これも又面白くなってきたか」


 変化したレッドキャップ達を見ながらミノタウルスは一人呟く。


 時間軸はエキドナがマザーゴブリンと対峙していた時に、エキドナからの指示で覚醒したレオンがレッドキャップ達を倒した瞬間、横たわるレッドキャップ達の身体から何かが抜けて空へと飛んで行った。

 それが、今の瞬間だった。


 進化した四体のレッドキャップ達は自身の身体を見回すと、大鎌の柄を握りしめながら笑みを浮かべて、再びルークへと襲い掛かって行った。


『いくら進化しようが所詮はゴブリンじゃねーか。幾らでもかかって来い!』


 進化した四体のレッドキャップ達はルークを四方から囲み、上下左右と時間差攻撃や同時攻撃を繰り出す。身体が大きくなっただけではないようだ。力も動くスピードも素早くなっている。


 ルークは堪らず一旦距離を取るべく翼を使い宙に逃げた。上から地面にいるレッドキャップ達を見下ろすと、彼等は隊列を変えた。横一列になり自慢の大鎌を肩に掛けている。まるで早く降りて来いよ。と言わんばかりの態度にみえる。


『クッ、調子に乗りやがって――』


 ルークは手に持つ紫電の長剣の姿を槍に変えた。いくら長剣といえど大鎌にはリーチの差が出る。長い槍のほうが有利だからだ。槍の穂先も紫電を発生させている。


『行くぞ!』


 空中から槍を携え進化したレッドキャップ達へ急降下するルーク。


 こんなザコに構っている時間など無い。とばかりに言わぬ勢いで……。

 

 




 ◇ ◆ ◇ ◆




 一方、島を見守っている海上自衛隊達の緊張は緩まない。異常事態は継続中だ。

 いつまた事態は急変するかも知れない。戦艦アマテラスからの大型デジタル望遠鏡や、軍事衛星からの画像や、そして身近にいるアパッチ01からの映像を観ながら日本本土にいる防衛長長官:岸和田との定期連絡を行っている最中だ。


 大型爆弾を積んだ近距離弾道ミサイルの発射までもう後わずかなのだから……。


「こちらアマテラス、アパッチ01応答せよ!アッパッチ01応答せよ!」

「こちらアパッチ01、アマテラスどうされました?」

「上空から見る島の状況はどうだ? なにか変化があったか?」

「例の蛇女が、ゴブリンを無数に生み出す門へ入ってから数分後、ライオンの様な翼を持つ魔獣が、炎を吐きながら物凄い竜巻を操りながらゴブリン達を蹂躙しました。

 我々も危うく竜巻に巻き込まれそうになりました。今や、島にはゴブリンの姿は確認されていません。

 そ、それから、例の門が消えました……」

「門が消えただと?それは確かか?」

「はい、戦闘機とアマテラスの砲撃にも耐えた門が掻き消えました……」

「それは、牛鬼と同様に脅威が又一つ消えた。という事か?」

「分かりません。島を上空から見ると、とても穏やかです」

「そうか、いやしかし、あの島の建造物が気になる……」

「翼の生えた人型が入ってから、建造物の窓から煙や爆炎が見えましたが、今は落ち着いています」

「そうか。短距離弾道ミサイルの発射まで、あともう一時間しかない。出来るならばミサイルが発射されるまで、この島をどうにか出来ればいいのだが……。

 アパッチ01そろそろ帰還せよ。燃料の残りも少ないだろう」

「了解!これより帰還します」

「全艦に告ぐ!これより例の作戦の攻撃座標へ移動する準備を行え。アパッチが帰還し次第、移動する。主砲の点検を再度行い不備の無いように努めてくれ」

「「了解――!」」



 短距離弾道ミサイルの発射まで後、一時間を切ってしまった。一キロトンの爆薬を積んだミサイルが島に当たれば、徳島県をはじめ淡路島や和歌山県まで津波が発生して甚大な被害が起きるであろう。出来れば使いたくない。


 戦艦アマテラス艦長の大森の額と背中に嫌な汗が伝い落ちた――。


 




  ◇ ◆ ◇ ◆





  地上に降り立ち、長剣から槍に持ち替えたルークの優位性は格段にアップした。


 ルークの槍が縦横無尽に動き始める。長い柄を持つ槍は、大鎌の刃先を絡め捕るように動く。それは蛇の如く。それは太刀の如く。進化したレッドキャップ達を蹴散らす。


 数合の打ち合いの後に、一体のレッドキャップの腹に槍を打ち込もうとするルーク。


 その瞬間――。

 又しても、天上より四体のレッドキャップ達に紅い光が舞い降りて来た。それは、レッドキャップ達の頭上に当たり、そして身体の中に吸い込まれる様に消えていく。


――ドクン――。


 すると四体のレッドキャップ達の姿が変化する。体長150㎝から2mと大きくなった。背丈ならルークと同じ大きさになってしまった。手にした大鎌も大きくなり、体のサイズに合わせて大鎌も変化するようだ。


「ほう~。レッドキャップ達が又しても進化したということは、他の奴らが全滅したという事か。それはそれで残念だが、これで更に面白くなってきたか。

 どうやら最終形態が見えそうだな。はははっ、これはこれで更に楽しめそうだ」


 時間軸は、聖也と卯月が五色の鬼達と対峙する前に、五体のレッドキャップ達を倒した瞬間だった。それらが倒された瞬間、又しても生存しているレッドキャップへ融合したのだった。


『面倒なヤツだ。まさかゴブリン如きに俺様のギヤを一段階上げるとは思わなかったぜ。いいだろう、目障りな奴は早めに倒して、後ろのミノタウルスの野郎をぶん殴ってやらないとな。掛って、来い!』


 更に進化したレッドキャップを威嚇するようにルークも自らの身体を変化させた。


 それはグレーの肌色から純白の煌めく姿へと……。ルークも又、進化というか変化する。


 進化するレッドキャプ。その最終形態はどのような姿になるのだろう……?







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