13 コードネーム:【ツクヨミ】

 この奇妙な島での魔物達の戦いを固唾を飲み、海上と空の上から送られてくる映像を観ながらアマテラス艦長大森は考えていた。


 あの奇妙な空を飛ぶ魔獣のような生き物と共に降りて来た人型は味方なのだろうか。出来る事ならば、彼等にこの島の怪物を倒して欲しい。

 現代の軍事力をもってしても傷一つ付けれなかった牛鬼を両断した男女。彼等の力をあやかりたい……。





 不意に艦内の無線が鳴った――。


「こちら防衛庁の岸和田だ。アマテラス艦長、応答せよ。繰り返す、こちら防衛庁の岸和田だ。アマテラス艦長、応答せよ」

「こちら、アマテラス。大森です」

「岸和田だ。此方の弾道ミサイルの準備は着々と進んでいる。定刻の予定だと後二時間後になるが、なにか変わった事や、解った事はないか?」

「はい、変わった事と言えば空から奇妙な生き物たちが降りて来て、牛鬼や巨大な鬼や、無限に湧きだす小鬼達を倒してくれています」

「ああ、その事か。その映像は、軍事衛星とそちらから送られてくる映像でこちらも認知している。彼等は一体何者なんだろうか」

「それは、分かりません。私達は事の成り行きを見守るしかありません」

「確かに……。気になる事が一つ有るのだが。君たちアマテラスが島へ向かった時期に、あの島は移動を停止した。どういう事だろうか? こちら本島に進行しなくなったのはいいのだが、又移動するやも知れぬ。

 今や四国、和歌山圏域では避難民によるパニック状態だ。こちらで一度ミサイルの発射時間を協議したのだが、時間通り本日の20時と決まった。発射まで後二時間。原子力潜水艦スサノオにも連絡を既にしており、彼等の進行準備も順調だ。

 君たちも弾道ミサイル1キロトンミサイルと潜水艦からの大型魚雷と合わせて、アマテラスの主砲撃を行い確実にあの島を沈めてくれ!

 作戦:コードネームは【ツクヨミは夜に笑う】だ」

「分かりました。此方も準備します」


 防衛庁長官の岸和田との無線での会話を艦内の仲間達は息を飲んで聞いている。


 作戦決行までもう後二時間しかない……。





 無線が終わった直後――。


 この戦いを空から見守っているアパッチ01は、この島の小山の建造物である城のような建物の一角から火柱が上がる様子をアマテラスへと連絡した。


「こちらアパッチ01。アマテラス応答せよ」

「こちらアマテラスだ。どうしたアパッチ01?」

「こちら、例の建造物の上空で待機していますが、建造物から炎や煙が発生しています。どうやら、この中で戦闘が行われている模様です。

 恐らく、背中に翼の生えた不思議な人型が例の小鬼達と城の中で戦っていると思われるのですが、確証は得られません。

 それと、例の鳥居の様な漆黒のゲートが再び開かれ、小鬼達が湧き始めました。例の魔法を使う蛇女は門の中へと入って行きました。

 更に例の牛鬼を倒した男女二人は奇妙なライオンに翼の生えた生き物に乗って、この城の中へと入っていきました。

 彼等の動向に目が離せません。事態は急変するかもです」

「そうか、どうやらあの城が元凶かも知れない。そうなるとやはり彼等に任せるしかないのか……。

 引き続き、戦闘に巻き込まれないように注意しながら映像を送ってくれ」

「了解!」


 城の中で戦闘が行われているようだが、一体彼等は何と戦っているのだろうか?

 島に現れていた小鬼達や牛鬼。あれ以上の怪物が居るとしたら……。

 我々は対抗する術を知らない。恐らく先程、防衛庁長官からの無線を受けたが、弾道ミサイルでもダメだろう……。


 神様、もしも居るならどうぞ、お助け下さい……。


 アパッチからの無線を受けた大森艦長は、右手の握りこぶしに力を込めながら、一人呟いた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る