15 門の中 -2
エキドナは鉄扇を杖に変え地面へ突き刺す。突き刺した地面から
「—―
地割れはマザーゴブリンの手前で治まると、地面から無数の石槍がマザーゴブリン目掛けて姿を現し襲い掛っていった。
地割れが無数の石槍に変わりマザーゴブリンを襲う。
しかし、マザーゴブリンは悠然と立っている。まるで避ける仕草もみえない。
「
マザーゴブリンが呟くと首に掛けているネックレスが妖しく光る。
瞬間、深緑色の身体のマザーゴブリンの身体の色が黒く変色する。
やがて地面から容赦なく襲い掛るエキドナの石槍の魔法を、こともあろうか両足で踏みしめ破壊していく。手の届く範囲であれば、腕を払い問答無用に石槍をなぎ倒していく。
「舐めないでホシイワネ。こんな石の槍ぐらい地面から幾ら生やしても刺さりはしないわ」
「へぇ~角の多数持ちだから、中々やるじゃないかしら。サイクロプスでも刺さった石槍を壊すなんて、どれだけ頑丈な身体かしらね~。セイヤーがここに居れば、どんだけ~~!って言うかしらね。ふふふっ」
「何を分け解らない事をホザイテいるのか?オマエの攻撃はアタシには効かないんだヨ」
「ふ~ん、果たしてそうかしら。まぁ、妾もいつまでもアナタを相手にしている暇はないのよ」
「フン。コッチもそうよ。イクゾ!」
マザーゴブリンは右手に持った杖を振りかざしエキドナに突進していく。
どうしようかしら。サイクロプス以上に体が硬いなんて、想定外もいいところだわ。サイクロプスも風魔法の刃は効かなかったから、コイツの頑丈な身体をどうしようかしらねぇ。
負けない自信はあるけど、コイツ等の目的も聞き出さないとねぇ。
そうか、同じ土俵で格の違いを見せつけるのも一興かもね。
「来るがいいかしら!
「な、なに――」
マザーゴブリンの杖の攻撃をエキドナは左腕で受け止めた。
エキドナの身体はマザーゴブリンの様に肌が黒くなっている。マザーゴブリンの様に硬質化したようだ。
マザーの攻撃を受けたエキドナは、右手に持つ閉じた鉄扇ごと自らの拳をマザーの顔面に叩き込む。
エキドナの攻撃を顔面に受けながらもマザーは
数合の打撃攻撃は、もはや物理攻撃だけの殴り合いになってしまった。
数発の殴り合いも、お互いノーダメージのまま時間だけが過ぎていく。
やがて、マザーゴブリンの身体強化の魔法が解けていく。肌も黒色から緑色に戻りつつある。
「ふふん。身体強化の魔法もそろそろ時間切れのようね。そもそもこんな初歩の魔法なんて自分だけが使えるなんて思うのが
アナタ、どう見ても、五分が限度かしら? 妾は一時間は大丈夫かしらねぇ」
「ッチ。……クッソ――」
◆ ◇ ◆ ◇
――時は少しだけ遡る――。
レオンは聖也と卯月を城のような建造物に送り届けてから、エキドナが向かった門へと舞い降りて来た。
門からは相変わらずゴブリン達が溢れかえるように湧き出てくる。
エキドナは暴風を身に纏いながら門の中へと入っていく。
エキドナの暴風の隙間から絶え間なく逃れるように出てくる数の暴力達。
やがてレオンが地上に降りた刹那、エキドナが潜った門が音を立てて閉じた。
――ガッシャーン――。
レオンは焦る。折角、主であるエキドナを心配しエキドナの元へと来たが、エキドナは門の中に入り、その入り口である門は閉ざされてしまった。
大丈夫だろう。レオンの三つ首は、そう自分に言い聞かせて、残党であるゴブリン達を相手に翼を羽ばたかせ小さな竜巻を起こす。
不意にレオンの三つ首の頭に何かが
‟レオン、妾はゲートの中に入るけど、アナタの力を全て出さない様にね。恐らくマダマダ敵は出てくるだろうから、適当に相手をしておいて。
妾からの合図かあるまでは、遊んでいればいいかしら”
エキドナからの念話だ。三つ首の内の山羊頭がエキドナが入っていった門へと顔を向け、山羊頭が返事をする様に一鳴きする。
「ヴェェェェ――――}
しかし、門からの新たな気配に緊張がレオンの三つ首に走る。
門が閉じる瞬間、普通のゴブリンに紛れた別の個体の4体が飛び出てきた。
少し雰囲気の違う4体のゴブリンの頭には紅い帽子をかぶっている。手に持つ獲物は、己の背丈位は有ろうかと云うほどの大きな鎌。
しかし、その個体達は動きが素早い。通常のゴブリンに紛れながら、巧みなフットワークでレオンからの攻撃を避けている。
いくらレオンが魔獣の力を見せても、数の暴力の前ではやがて体力が尽きてしまうのは火を見るよりも明らかだ。最弱でも恐るべき人海戦術。ライオンでもアリの大群の前では膝を屈するのだ。
レオンのトカゲ頭の口から火柱が、獅子頭の口から威圧のブレスがゴブリン達を襲う。
しかし、逃れた紅い帽子をかぶっている数体の動きは素早い。その4体がレオンの足元を大鎌で急襲する。時間差で上から下から左右から大鎌で斬りつける。
「「「ギャウッ、ググッ――――」」」
◇ ◆ ◇ ◆
マザーゴブリンの身体強化が解けたので、エキドナも自ら己の身体強化を解き、マザーに向き直る。
「そろそろ、観念しても良いんじゃないかしらね~。妾はここでユックリしている時間はないのよね。アナタが産み出した、いや呼び出したあのゴブリンが多すぎて妾のレオンが危ういのよ。あの仔も疲れているみたいだから、休ませてあげないと……」
「フン! 休ませたいなら、一生ネテいるがイイワ!」
「何よ、その意味深なセリフ。で、アナタ何がしたかったのかしら?」
「フン、そんな事イチイチお前が知らなくていいコトだ。
それに同じ魔族だから分かるけど、外のキメラはオマエの産み出した子供でしょうが?
アタシハ、多くの子供達と一緒にこの島でクラシタイだけなのに……」
「何を今更言っているのかしら。そもそも、この島で住みたかったならば、この島へ上陸した人間達を襲わなければいいじゃない。穏便にすれば良かったのじゃないのかしら」
「飢えるモノの目の前に、御馳走がアッテも食べるナと? オマエも魔族なら分かるのじゃないのか? ワレラハ常に飢えている。飢えてイル闇の世界から、ヨウヤクこのセカイへと来れたのに……」
「だからと言って、人間を襲って食べるのはどうかしら」
「笑止千万! ドコノ世界でも弱肉強食はアルであろう。オマエノ今までの食事のメニューの中に、肉類はナカッタのカ? 子供達は飢えを満たしたいダケナノニ……。
ナノニ、なのに、オマエは私の子供達を……」
「それで、牛だか鬼だか解らないヤツと、サイクロプスは何でこの島に居るの?」
「知るか。アタシも気がツイタラこの地へ居たのダカラ。
フン、そんな事よりアレを観るがイイワ。オマエも子供を失う辛さを味わうがイイワ……」
「って、何よ?」
マザーゴブリンそう言うと、壁際に大きなモニターのようなモノが映し出される。それは、この門の外を映し出している。
そこには、4体の大鎌を背負い紅い帽子をかぶった雰囲気の違うゴブリンが、レオンを襲っている瞬間だった――。
「って、レオン――――」
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