7 鬼退治-2  Vs  サイクロプス

 レオンキメラ小鬼ゴブリン達が涌いて出てくるゲートへと向かう。



「ウーツキとセイヤーに任せて、大丈夫かしら。妾がコヤツを早く仕留めてレオンとウーツキの応援に行かなきゃならないわね。でもその前に、厄介なあのゲートをどうにかしたいかしら。レオンも数が多いから苦戦しているみたいだしねぇ。

 Protect Earth Wallいでよ、土壁――!」

 

 エキドナは小鬼ゴブリン達が湧き出る門に向かって呪文を叫ぶ。エキドナを中心に足元に魔法陣が浮き上がる。


「う〜ん、重ね掛けをしていたほうが良いかしらね。

 Double二重の|Protect Earth Wall!《土壁カモ~~ン!》」


 するとエキドナの頭上にもう一つの魔法陣が浮き上がる。


 頭上に浮かんだ新たな魔法陣は、ユックリと足元に降りて行く。やがて、二つの魔法陣が合わさると光が一瞬だけ消えた。


「行け――!」


 エキドナの鉄扇が杖に変わると杖を地面に突き刺す。すると、エキドナの号令に応えるかの様に光が漆黒の門に向かって飛び出す。


 光は門に当たると、周りの地面から土壁が四方から門を取り囲む様に立ち上がる。


 そして土壁が門を取り囲むと岩の塊となった。その上にもう一度土壁が覆う様に取り囲む。土壁の重ね掛けだ。そうなれば、開いた門からは小鬼達は外に出てくる事は出来なくなってしまった。


「少しの間だけしか持たないかしら。その間に、コヤツサイクロプスをなんとかしないとならないかしらねぇ。レオン、もう少し頑張ってほしいかしら」


 キメラが苦戦している為、エキドナはサイクロプスから視線を外し、門に土魔法で封印をかけた。


 その瞬間、サイクロプスは例の3mの巨大な矢を、視線を外したエキドナに叩きつけた。隙あらば襲い掛かるのは戦闘の常識。

 

「ギュイーン――――」


 振り下ろされたサイクロプスの持つ巨大な矢と、それを受け止めるエキドナの杖から姿を戻した鉄扇がぶつかり合う。


 ぶつかり合う二つの武器が、辺りに金属音を響き渡らせる。


 まさか自分の攻撃を防ぐとは思わなかったのか、サイクロプスは驚き、動きを止めた。


 かたやエキドナは余裕の表情をしている。かつて、富士山でルークと戦闘になった時も、エキドナの力技はルークに引けを取らなかった。


「ふん、小鬼ゴブリンにせよ、アンタサイクロプスにせよ、多数角じゃ無くて一本角なんか目じゃないのに、いい気にならないでほしいかしら。

 アンタに時間をかけてる暇は無いってゆぅ――の!」


 余裕を見せるエキドナではあるが、明らかに体格差はある。サイクロプスは10m。かたやエキドナは170㎝程度。どうみても無理がある。敵はエキドナの5倍以上はある。サイクロプスの一撃を受けたとしても、体格差では数合打ち合えばエキドナも不利になるかも知れない。なにしろサイクロプスはエキドナの身長よりも長い槍を振り回しているのだ。それを鉄扇で受け止めるエキドナも凄い。


「時間は掛けたくないのよね。すぐに終わらせてあげるわ」


 そう言うと、エキドナの容姿が変わる。髪は風がないのに逆立ち始め、瞳は金色の爬虫類の様な瞳に変化する。体格は下半身がするすると伸び始め蛇のような下半身になってしまった。そしてトグロを巻くように下半身が上半身を持ち上げる。鎌首を上げた背丈は、サイクロプスの半分の高さになる。


 まるで、鎌首を上げて挑みかかるような態勢を持ち、神話に出て来た女帝の姿に変わる。エキドナの威圧が異常に跳ね上がる。


 エキドナの変貌に驚くサイクロプスではあったが、いかんせよ彼は知能が低い。言葉も話す事は出来ない。場の雰囲気は読めるのかも知れないが、所詮魔物。

 闘争本能だけで生きているのかも知れない。驚きながらも咆哮をあげエキドナに襲い掛かる。


「ウゴォォォォォ――」

「そんな大声を出したからって、五月蠅いだけよ! さぁ、風の刃の餌食になるがいいかしら。Aero Slash切り裂け。風の狂刃――!」


 サイクロプスが巨大な矢を振り回す攻撃の狭間、エキドナは静かに呪文を呟き、サイクロプスに向けて鉄扇を広げ、風を払う様にサイクロプスに向けて扇ぐ。


 エキドナの持つ鉄扇の先に魔法陣が現れ、そこからサイクロプスに向かって巨大な風の刃が向かっていく。


 向かい合う二人の間に距離は無い。サイクロプスの持つ巨大な矢が届く範囲。

 その距離からエキドナの風魔法がサイクロプスを急襲する。


 逃げる隙も無い距離ではあるが、そこは戦闘種族の魔物。咄嗟の判断で手にした矢を自分自身を守るべく体の前に出した。


「ザシュ――――」


 エキドナから放たれた風の刃は、サイクロプスの持つ巨大な矢を両断したが、サイクロプス自体には傷を負わせることが出来なかった。


「ッチ! どうやら身体だけは硬くて頑丈なようかしら。風の力じゃ切れないようね。そうしたら、これはどうかしら。Earth Spear貫け。凶悪な槍 ――!」


 エキドナは鉄扇を閉じて杖に変え、地面に向けて杖を突き刺し呪文を呟く。

 エキドナの頭上から魔法陣が浮かび、それが足元に降りてくると手に持つ杖が妖しく光り輝く。


 すると、サイクロプスの足元から石槍が天に向かって突き上がる。


 魔物の感で咄嗟に避ける事が出来たが、次々と足元から石槍が襲っていく。


 次々と足元から出てくる石槍を器用に右に左に躱していくサイクロプス。

 

 段々とエキドナとの距離が開いていく。


 辺りは一面石槍が剣山の如く生えわたっている。


「中々、簡単に串刺しにはなってくれないわねぇ。でもまぁ、それも想定内かしら。そろそろ頃合いかしら」


 そう言うと、余裕の表情を浮かべ手にした杖を鉄扇に変える。閉じた鉄扇を広げ、新たな呪文を呟く。


Tornad吹き飛べ ――!」


 エキドナの頭上に魔法陣が広がり、それが扇の中に吸い込まれていく。エキドナはサイクロプスに向かってその扇を一振り。


 すると扇からサイクロプスに向かって強烈な竜巻が巻き起こる。如何に巨大な体を持つサイクロプスといえども、竜巻の勢いに負けて成す術もなく空に向かって舞い上がって行った。


 サイクロプスが居た付近には、エキドナが地属性で創った凶悪な石槍の群れが剣山の如く、空から落ちてくる獲物を今か今かと待ち構えている。



 


 数秒後、空から落ちて来たサイクロプスは、辺りに轟音と地響きを響かせた。


 ……ズシン――!


 エキドナの張った石槍の罠にまんまと嵌り、体中が石槍によって串刺しになり絶命した。


「ウゲェ…………」



「思ったより手が掛ったかしらねぇ。まぁ、角があっても多数持ちじゃなくて一本角だから、こんなものかしら。

 さぁ、レオンとウーツキはどうなっているのかしら。応援に行かないと……」


 エキドナの背後では石槍に貫かれたサイクロプスが横たわっている。

 やがて絶命したサイクロプスは、黒い霧となって姿を消してしまった。


 エキドナは戦闘モードの下半身蛇の状態を解除して、通常モードの二本足に戻った。 


 そしてエキドナは、後のサイクロプスの最後を振り向いて確認しようとせず、小鬼達と戦っているキメラの元に向かった。










 エキドナ VS サイクロプス。

 エキドナの圧勝‼


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