2 いざ決戦の前に!/ 聖也
俺達は一旦、和歌山市へと向かう。卯月の薙刀の打ち直しが始まり、一本ダタラの工房に居ても何もする事がないから、
卯月のスマホのグーグル先生に先導され、和歌山市へと到着した。時間は昼過ぎでギリギリなランチタイムという所だな。
今は、午後の3時前だけど……。まだ食べるのかよ? 今更だけどな……。
「卯月ちゃん、お食事処決まった?」
「う~~ん。どうしようか? 色々候補は有るんだけども、エナさんと聖也さん、何が食べたい?」
「妾は何でもいいかしらね?」
「俺も何でもいいよ。卯月ちゃんが食べたい物なら俺は何でもいいからさぁ、卯月ちゃんが決めてくれよ」
「う~ん、それが決まらないから迷っているのよね~。そうだ、じゃ季節関係なく、珍しくて意外性のモノを食べましょう。私に任せてね?」
「「いいけど、何?~~」」
「鯨の良いのが入ったらしいから、ハリハリ鍋で決定ね!」
「ハリハリ鍋て何よ?」
「そりゃ~言えねぇわよ。お楽しみね~。うははっは……」
「そうと決まったら行くわよ。ヘリィヘリィポット~鍋へ!」
「エナさん、又何か変事言ってる。そりゃ、【ヘリ―ポッターと愉快な仲間】の映画じゃないんですか?」
「そうそう、そんな感じかしらね? 妾は魔法の四角い板で様々な映像を観てしまったから、少しばかり混乱しているのかしらね~。恐るべし、現代の魔法かしらね~」
「何言ってんですか、一体どんだけTV観てんですか?」
残念魔女、ここに降臨! って今更始まった事じゃないしな……。
ってな訳で、目的のハリハリ鍋の有名な店に着きました。俺達三人と一匹は店の中に入る。
「こんにちは~。先程予約入れた卯月で~す。今日はよろしくお願いしますね~」
「あぁ~電話でのご予約有難うございます。ようこそ、【ヘリーポッ
「うぇ、何だよ。マジホンマでっか? っていう名前の店じゃんか。パクリまんまじゃんか。大丈夫なんか?」
「うふふふ、面白いでしょ聖也さん。私も検索してたら笑い過ぎてお腹が痛くなっちゃったもんね? ヘリーポッ亭のハリハリ鍋楽しみ~。ハリハリ鍋って大阪じゃ有名らしいわよ。でも、和歌山では稀に鯨があがるから、そりゃ一度ぐらいは食べないとね」
「【はりはり鍋】とは、鯨肉と
鯨の赤身肉に片栗粉をまぶして下処理したものを、鍋に入れて調理したもの。鯨肉自体は、鶏肉や鴨肉のような味わいに似ている。しっかりとだし汁で煮込むことで、旨味が倍増している。名前の「はりはり」は、水菜のしゃきしゃきした食感を表現しているといわれている。
鍋に直接唐辛子を入れて辛味をつけたり、薬味として山椒や唐辛子を加えピリ辛にして食べるのが特徴。」
やがて、例の鍋がやって来た。鯨の赤身の肉の上に山盛りの水菜。焼き目の付いた餅がある。ぐつぐつと煮える鍋の水菜がやがて小さくなっていく。
「そろそろじゃない? いただきま~す」
今回は卯月が鍋奉行だ。俺はハリハリ鍋は初めてだから今回は遠慮しておこう。
今の時期は夏なのに、どうして鍋なんだ? と思いながら口にする。
「おぉ、臭みがなくて鳥のようだけど少し違うな。なんだろう、噛めば旨味が出てくるような感じだ。これは、ユヅ胡椒が合いそうだな。唐辛子でも良いんじゃないか」
「ほんと~。何か違う味かしら。ヘリヘリポッ
「本当に笑っちゃうような店の名前だったけど、水菜のしゃきしゃきした食感も美味しいわよ。今回もハズレ無しって事で、決戦の前の食事は皆さん大丈夫ですか?
そう言えば、【鯨の竜田揚げ】まいう~なんですよ。オーダーしましょうか?」
「そりゃ、しないとダメダメかしらね。【エクスペクト・パトローナム】ってヘリィも呪文を言ってたかしら」
「エナさん、そりゃ映画の中の話でしょ。どんなシーンだったかなぁ?」
『おい、俺様の食い物がありゃしねぇーじゃねぇか?』
「あぁーしまった。ルークの事すっかり忘れてた――――! はい、ピーナッツ! だケロよ~」
『くぅ~たまにはいいモノ食わせてケロよな……。リンゴを出してクレヨン』
おいおい、なんで卯月ちゃんも屁のカッパ口調になってんだケロよ!
ありゃりゃ、俺も危ないかも知れないケロロ……。
遅い昼食を和歌山市で食べている間に、緊急速報がTVに、Jアラートがスマホに一斉に流れたのだった。
過去二か月前に高知沖にて地震発生。後の数回の地震にて島が生まれる。その島に近寄ると行方不明になってしまう。更には、その島は移動し、淡路島に向かい衝突する恐れがあるという。その衝突する凡その時間は未定だが、日本に被害が及ぶ前に、島の破壊作戦を執ると言う。日時は8月15日20時00分だという。しかも本日だ!
その内閣府の発表で世論は驚愕の嵐に包まれた。奇妙な島が淡路島に衝突すると大規模な地震や津波が本土を襲う。
それを防ぐ為に中距離弾道ミサイルと原子力潜水艦の大型魚雷にて謎の島の爆破壊滅作戦を執るというのだ。
これでパニックにならないはずが無い。淡路島周辺の県民、いや中国四国地区の県民達は本土の北と南へ逃げるように移動する。
交通網は渋滞を巻き起こし、物流は停滞し食料を始めとする経済が麻痺しようとしていた。
TVの映像では、逃げまどう人の群れを映している。道路で事故を起こすが渋滞の為、何も出来ない。各都市部では、親と逸れた子供達の泣き叫ぶ姿が垣間見える。もうすぐ暴徒化するのかも知れない。
「ルーク、大変な事になってきたぞ。どうする? 前のインキュバスの時みたいに結界は張れないのか? 被害もかなり出そうだぞ」
『そうだな、結界は張れそうもないな。取り合えず現地に行ってみなけりゃ解らないが、今回は苦戦するかも知れない。まぁ、聖也が神器を持っているから何とかなるかも知れないが、無傷では終わらないかもな』
「えぇっ――! そうなのか? エナさん、大丈夫ですか?」
「解らないわねぇ。妾の
取り合えずこの危機を止めるのは俺達しかいないだろう。何せ、俺は神器の一つ、草薙剣を持っている。卯月の実家の伝承の内容にも、【神器目覚める時、悪鬼目覚める。神器を持って悪鬼の業を断罪せよ!】と言っている。
一本ダタラいや天目一箇神が打ち直した草薙剣と、かつて弁慶が愛用していた
ここでのんびり昼飯を食ってる場合じゃない。これが最後の晩餐にならないよな?
「卯月ちゃんとエナさん、早く一本ダタラの所に行きましょう。急がないと……」
「そんなに慌てなくて大丈夫かしら。ほれっ、
【腹が減ったら高楊枝】ってね。腹が減ったら沢山食べて爪楊枝で、シーハーしないとねぇ。お~ほっほっほ……。妾も博識よね~」
「流石~エナさん」
何言ってんだか。そりゃ、【武士は食わねど高楊枝】の間違いじゃないか。意味が違うし、使い方も間違えてる……。卯月ちゃんも歴女のくせに、他は
取り合えず、御婦人二人の食事が終わるのを待つしかない。いつもの如く景気付けに大飯を食らった後で、和歌山の一本ダタラの元にキメラに乗って飛び立った。
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