鬼の啼く島:編

鬼ヶ島の章

1 謎の島

「悔しい……。何故故に、我がこの様な仕打ちを受けなければならないのか……。我が一体何をしたというのか? 何故に、どうして?……。

今に見ておれ、幾千年掛かろうとも、この怨み、きっと晴らしてみせようぞ……」

「ソンナニクヤシイノカ?」

「……誰だ?」

「ソンナニ、怨みガアルノナラバ、我がチカラヲカスコトモデキルのだが、ソチはどうしたい?」

「力を貸すと言っても、こんな所にいればどうしようも有るまいに……。何を戯言ざれごとを…」

「ワレニ任せればオヌシはフクシュウをハタスコトも出来るカモシレン。ドウスル?現世にモドリタイカ?」

「戻りたい。そしてあやつの子孫を、我のこの手で……」

「ヨカロウ……。オヌシの怨念のココロイキ、しかとミトドケタ。血肉をクライ、現世ニモドルカヨイ。楽しみにシテオルゾ……。ファファファファ……」

「本当なのか? ならば……」




 時はさかのぼるが、インキュバスが女子高生を襲い、エキドナが第一体目として覚醒して一週間後、二人目の女子高生の変死体が見つかった。隔週を於いて、三人目、四人目の変死体が見つかり世間は大騒ぎとなった。


 エキドナは富士山へと向かっていったが、二体目は、四国沖へと。三体目は、北の大地へと。四体目は、南の大地へと夜空を駆け抜けていった。彼等は、一体何何者で何がしたいのだろうか?





 ◇ ◆ ◇ ◆



 




 例の最初の四国沖の海底地震から三か月が過ぎた。地震の発生当時は多くの学者たちが集まり、様々な機器を用いて地震の発生源を突き詰めようとしていたが、原因不明のまま数日が過ぎた。


 やがて静かに、いつの間にそんな物が出来たのか? いや、生まれたのか? と思う様な小さな岩が海面から現れた。

 現れた。と思ったら、それを目掛けて天より赤い光のような何かが落ちて来た。


—―ズドン—―!


 海面に浮かぶ岩に何かが当たった瞬間、岩は大きく膨らんだ。

 そして、ブクブクと泡のように分裂を繰り返すと、それはジワジワと島へと変化した。暗闇の続く夜の間、その奇妙な島は大きく変貌を遂げた。


 

「速報です! 昨夜の未明。例の高知沖に起きた地震から三か月経ちましたが、その震源地辺りからまたもや、奇妙な揺れが発生しました。

 夜が明けて、震源地に向かった調査隊からの報告が終わった後、連絡が途切れました。更に、空からヘリコプターからの映像ですと、島が発見された。と言う事です。

 この島の大きさは、異常です。一夜に出来た島にしては、大きすぎです。大きさは、三宅島とほぼ同じ大きさ。現在、海底からの噴火も疑いもあるので、付近の船舶は近寄らないように注意して下さい」


 TVの画面が緊急速報に変わり、どの局もこの事態を重く見た。


 この島については奇妙な事が多い。一夜にして海に海底噴火も起きらず、海上から海底に向かって大きな揺れが起き、島が生まれてしまった。更に、発見された時には、岩だらけだったのに、1日経つと、多くの木々に埋もれてしまった。

 あたかも、随分前からこの島はこの場所にあったかのように……。







「おい、この近くじゃなかったっけ? 例の島。行ってみようぜ! 例の地震から出来た島に緑が茂っているらしいじゃないか? 探検しに行かないか? もしかして、初上陸した人の名前がこの島に着くかもよ?」

「おぉ~面白そうじゃん。行ってみるか?」


 不思議な島の近くを小型のクルーザーに乗ってクルージングをしていた4人の若者達は、肉眼で見える島に興味を示した。数日前には何もなかったのに今、島が浮かんでいる。好奇心を持つ若者達は上陸を決行した。


 低速で島の周りを一周し、船を着けやすい場所を選んだ。いかりを降ろし、それぞれが海に飛び込んだ。足を付けると腰までの深さ。彼等は歩きながら海から島に上陸した。護身用にサバイバルナイフを三人が持ち、船に備えられていた調理用の包丁を携えていた。


 上陸しても前人未踏で有る為に、道は無い。山歩きをするような靴を履いていない為、サンダルでは歩きづらい。文句をブツブツと言いながら前へ前へと進んだ。


 やがて30分後、目の前が開けた。芝生程度の短い草むらが一面に広がっている。


「何でここだけ木々が無いんだ。ここって、何かの広場のようだが?……」

「この島は未だ人が来ていなかったんじゃなかったのか? それとも、俺達みたいな奴が来ているのか?」


 サッカー場ぐらい広く感じがする場所に違和感を覚えた。先程歩いた場所に比べると此処だけはまるで整備された場所に思える。


 ここから見える山裾には小さな穴がポツポツと開いている。ここから凡そ100m位の距離。


「おい、あそこ……あそこの穴のあたりに、何か動いて無いか?」

「本当だ……。でもオカシイじゃないか? ここは無人島だろ? さっき、船で島を一周した時に、他の船は無かっただろう? 何か、ヤバいんじゃ?……」

「だよな? 装備も手薄だし……。出直そう」


 そう言って来た道に戻ろうとして、後ろを振り返った時に4人は凍り付いた。


「ウギャギャギャギャゲ……」

「「な、何なんだ、コイツラは?……」」


 見た事も無い緑色した肌の、小さな背の醜悪な顏がニヤリと笑う。唇から長い犬歯がのぞいている。


「「「「う、うわぁ~、た、たすけてくれ~」」」



 4人の若者たちの悲鳴が島の辺りに響いた。






 島の周りに一艘の小型のクルーザーが取り残された様に浮かんでいた。

 










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