第7話 決断

戦争が生み出すモノは

悲劇

憎悪

苦しみ

その一方で生まれる想いと

新たな再建


戦争という目に見える戦いは無い

この日本という国だけれど

みんな各自自分の''心"と戦っている

劣等感

孤独感

喪失感

嫉妬

欲望

様々な感情が渦巻いている

一喜一憂してその瞬間、一瞬を一生懸命生きている

各々に事情があって、悩みは尽きない

大切な物は何なのか、見失いそうになる

でも、人は皆たった一つ

"幸せ"を手に入れる為に生まれて来たのでは無いかと思う

自分の幸せを願って欲しいと思う

誰かの為じゃなく

他人の、意見じゃなく

自分がどうしたいのか?

どうすれば自分を満たすことができるのか?どうすれば笑顔になれるのか?

自分を大切にする選択肢を選んで行って欲しいと思う

たった一度切りの自分の人生だから

自分の一番の理解者は自分で

自分を幸せにできるのは自分しかいないのだから


PiPiPiPi PiPiPiPi...

カーテンの隙間から流れ込む朝日

眠い目をこすらながら携帯のアラームを止めるとすかさず鳴り響く電話

電話越しにはいつもの明るい声

「おはよう、大地」

「…あぁ…おはよう」

「…どうしたの?大丈夫?」

「え?あ、あぁ…」

気が付くと、涙が溢れていた

自分でもよく分からないけど

悲しい夢でも見ていたかな?


梨花は、週に一~二回は電話をくれた

他愛もない話題、職場であった出来事をお互い話し合う

せっかく梨花がくれた電話も、時々上の空で聞くようになってしまっている自分がいた

頭にはいつも茅野さんが居て

消そうとしても消えてくれなくて

忘れようと思っている時点で既に頭は彼女の事でいっぱいなのだと気付かされる

このままじゃダメだ

梨花と会う事にした

梨花は、幼なじみで大切な存在だ

だけれどもこんな気持ちのままで、彼女の今や将来を奪う訳には行かない

それが、俺が決めた答えだ


待ち合わせ場所には、十分以上前に着いていて

声を掛けるといつもの笑顔で

「久しぶり、元気だった?」

切なくなった…

本当に良い女だよ、梨花は

解ってる

梨花は、俺を受け入れてくれる

こんな無愛想で、偏屈で、つまんないそんな俺のことも

どんな時も側にいてくれる

このまま一緒にいたら

きっと、良い奥さんになるだろう

面倒見の良い、良い母親に、なるだろう

そんな事は容易に想像出来た

自分の決断が、本当に正しいかどうかは分からない

だけど、気づいてしまった

大切な存在に

守りたい存在に

だから


公園を散歩しながら、何気無い会話をしていた、すると

梨花が

「…あのね、この間、職場の人に告白されたの」

一瞬沈黙する

そして、考える

梨花を幸せにしてくれる存在がいるならありがたい

俺が幸せにしてあげられなかった分、どうか幸せにして欲しいと

勝手ながら、そう思ってしまった

「そっか…」

「梨花…俺…」

梨花の表情が曇る

「待って!」

「…今の、嘘だから」

「大地が、少しは私に興味持ってくれるか、試したの、私には大地しかいない」

「だから、お願い…私を見て…」

上目遣いで、真っ直ぐに俺を睨みつける

梨花は、俺が何か言う前から、何かを察していて、覚悟していたんだと思う

「梨花、俺さ…」

「大地が、私の事を女として見ていないことなんて、気づいてた」

「最初から...最近は特に、

でも、それでも一緒にいたい…」

いつも強がってばかりいた梨花

目の前で

俺の前で初めてボロボロ泣き出す

胸が苦しくなった

"そんな事ない、ちゃんと好きだったよ"

"大切だよ、今でも"

そんな言葉、言えるはずも無く

「ごめん…」

としか言えなくて

延ばしたい手をグッと握りしめて

もう、抱きしめることも出来なくて…

ただ、謝るしか出来なくて…

俺は一度だって、梨花に想いを伝えて来ただろうか…

ずっと不安にさせていたんだな…

幸せに、出来ていなかったんだな…

梨花に甘えてばかりだったな

不器用で、無愛想で

こんな、つまんない俺と一緒に居てくれてありがとう…

梨花は、負けず嫌いでいつも強気で

ちゃんと夢や目標は叶えて、いつでも前を向いて輝いてる

良い女だよ、本当に

だから、きっと今よりももっともっと幸せになれるよ

勝手だけど

梨花の幸せを祈る

俺の手で幸せにしてあげられなくて

ごめん…

「梨花、別れよう」

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