第2話 まず、必要なものは方針、軸
第1話で書いた通り、管理会計は評価のための仕組みとなる。そのため、まずは評価の軸を決める必要がある。
基本的には企業活動は利益のために行っている。(もちろんそれ以外の目的もあるが、利益を問わないケースは少ないだろう。)
その事業の利益の源泉はどこから生まれているのかを踏まえてPL(Profit and loss:損益のこと)の粒度と置き所を決めなければならない。
具体例を挙げよう。
私が勤めていた会社では、本の企画、制作、製造、販売を行っていた。つまり出版社というやつだが、言い換えれば本という商品のメーカーである。ただ、一般の機械製品などのメーカーに比べ、とても多品種で、小ロットであること、そして、文庫、小説単行本、コミックス、ビジネス書などのジャンルがあり、ジャンルごとに異なる客層があり、市況があった。
したがって、ジャンルごとに損益の状況を知りたいというニーズがあり、一方で、同じコミックスというジャンルの中でも複数の編集部があり、それぞれの編集部の損益に対する影響も知りたいというニーズもあった。
そのため、その会社では商品の1企画ごとにPLを分解し、企画ごとの損益を作り、それを組織別に集約したり、ジャンル別に集約するといった形で切り口を変えることで損益を見ていた。
このケースでは、組織の評価と、ジャンルの評価を両立するための粒度が企画単位だったということになる。
この粒度を決めるためには何を評価したいのか、どういう切り口で評価したいのかという軸を決める必要がある。
もうひとつ。PLの置き所の話をしよう。
PLは先に書いた通り損益の話だ、つまり期間売上から期間費用を引いたものが利益であり、どこまでの利益を見たいのかを決める必要がある。
メーカーは財務会計上、原価計算を行っている。そのため売上総利益までは商品別に計算されている状態だが、営業利益まで見たければ販管費を割り振る必要があるし、当期純利益まで見たければ営業外費用や、特別利益、法人税等も割り振る必要が出てくる。そしてそうやって割り振られたものを、どの組織に紐づけるのかを決めなければならない。
大抵のメーカーはPLを企画部門に紐づけるか、営業部門に紐づけるかのどちらかであるケースが多い。
上記出版社では、価値の源泉は企画・コンテンツにあった。そのため企画部門である編集部に企画を紐づけ、販管費を企画単位まで配賦し、営業利益まで作成していた。
毎月の配賦計算量は多く、データも大量なものだったが、編集部別の営業利益や、ジャンル別の営業利益といったものが把握できて、なんだったら企画別の営業利益までわかる状態だった。
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