第144話 昔、見ちゃったよ

旅行2日目、伊織と貴史は二日酔いのため、部屋で大人しくしていることになった。


「うっ、すまんな、晴翔。みんなをよろしく頼む」


「ごめんね、おぇっ、俺達のことは、気にしないで、楽しんできて、ぐえっ」


「とにかく、帰りまでには何とかしておいてよ?それまでは、4人で回るから」


全然俺の話も聞こえてないようだ。それだけ、昨日は飲みまくったのだろう。


何せ、同じ部屋にいて明日香さんと母さんのアレに気づかないぐらいだし。


俺は、父さん達を部屋に残して、フロントへと向かった。


「どうだった?」


「ダメだってさ。4人で行ってこいって」


「あれだけ飲めばダメよね。どうする?また2人でデートしてくる?」


「あー、香織、どうする?」


俺は一応香織に確認する。


「ハルくんとデートしたいっ!」


「だってさ」


「了解。じゃあ、お昼過ぎには帰るから、またここで集合ね」


「わかったよ」


俺達は、仲良く手を繋いで出て行く母さん達を見送った。


「なぁ、母さん達のこと知ってた?」


「私は知ってたよー。忘れ物取りに家に戻ったときにたまたま見ちゃったんだよねー」


確かあれは中学の頃だったかなぁ。


ーーーーーーーーーー


今から約2年前。


「お母さん、今日はハルくんと直接道場に遊びに行くから、帰り遅くなるねー」


「はいはい、伊織さん達の邪魔しちゃダメよ?」


「わかってるよ、行ってきまーす」


「行ってらっしゃい」


私は、ハルくんと学校に向かうため、ハルくんの家に向かった。


ピンポーン


「はーい、どちら様?」


「あ、おはようございます真奈さん!」


「香織ちゃんね、おはよう。入っていいわよ」


「はーい」


私は、ハルくんの家にお邪魔すると、すぐにリビングに向かう。そこには、長い前髪で目が見えないハルくんが居た。


「あ、香織。もうこんな時間か」


「急がなくていいよ」


私はハルくんの向かいの席に座り、ハルくんが食べ終わるのを見守った。あぁ、ご飯を食べてるハルくんも可愛い♡


「ハルくん」


「なに?」


「好きだよー」


「な、なに言ってんだよ、冗談はやめてくれ」


ハルくんは、すぐに悪態をつくが、満更でもないようで、照れくさそうにしている。急いでご飯を食べ終えると、私達は学校へ向かう。


「母さん、行ってきます」


「真奈さん、行ってきまーす!」


「はーい、行ってらっしゃい。晴翔のことお願いね」


「はい、任されましたっ!」


「恥ずかしいからやめてくれよ、行くよ香織!」


「あっ、待ってよハルくん!」


私達は、学校に向かって歩き出したのだが、ここで重要なものを忘れたことに気づいた。


「あっ!宿題机に置いてきたっ!」


「はぁっ!?何やってんだよ、今日の宿題って数学だろ?廊下に立たされるぞ?」


「い、急いで取ってくるから待ってて!」


私は急いで自宅に戻ると、真っ直ぐに自分の部屋へと向かった。


「あ、あった、良かったぁ」


数学の先生は厳しいからなぁ。忘れたらやばかったよぉ。急いでハルくんのところに戻らないと。


部屋から出ると、廊下の奥の方から声がした。奥の部屋は、両親の寝室しかない。多分お母さんだと思うけど、なんだか苦しそうな声だった。


私は少し心配になって、覗きに行くことにした。


「・・・お母さん?」


私は、少しだけあいたドアから部屋を除く。


「えっ、真奈さん!?」


私は、動揺しながらもすぐに口を両手で塞いだ。どうやら2人は、私に気づいていないようだ。それにしても、女性同士って本当にあるんだ。


私は、好奇心から学校のことを忘れて、火照った身体を慰めた。今覚えば、あれが初めてだったかも。1人でやったの。


初めてで、訳も分からぬうち、すぐにイッた私は、ハッと我にかえり急いでハルくんのところに向かった。


ーーーーーーーーーー


「あの日は焦ったよねぇ。私、廊下にパンツ置いて来ちゃってさー」


「はぁっ!?じゃあお前その日」


「うん、ずっと履いてなかった。あれは刺激的な1日だった。初めての1人エッチに、プチ露出まで」


「変態みたいだから、変なこと言うな。てか、下着置いて来て大丈夫だったのか?」


廊下にパンツが置いてあったら、もうバレバレだろう。


「特に何も言われなかったけど、見てたのはわかったんじゃないかな?その後は、隠してる様子もなく堂々とヤッてたし」


「マジか、俺知らなかったよ」


香織と明日香さんって、本当に姉妹みたいそっくりなんだよな。昨日の香織の姿から、なんとなく明日香さんの姿も想像できる。


「もうっ、ハルくんは知らなくていいの!!今、お母さんのこと考えたでしょっ!?」


「考えてねーよ!?」


「本当に??」


腑に落ちないと言いたげな視線を向けてくる香織。実際、明日香さんのことを考えていた為、居た堪れない気持ちになった。


「それより、ほら」


「あっ」


俺は、香織の手を握ると温泉街へと向かう。


「行くぞ、もう少しお土産とか見て回ろう」


「うんっ!」


ーーーーーーーーーー


「早かったな?もう買い物終わったのか?」


「あ、あぁ、ちょっとね」


結果として、俺と香織はすぐに部屋へと戻ってきた。何故なら、香織が歩くのが辛いと言うからだ。


昨日、めでたく初体験を終えた俺達だったが、調子に乗ってやりすぎたのか、俺は腰が痛いし、香織も気を抜くと、がに股になるほど違和感があるらしい。


父さん達は、朝風呂に入って来たようで、サッパリした様子で、テレビを観ていた。


「香織と晴翔くんも温泉入って来たらどうだい?お母さん達帰ってきたら、チェックアウトになるから、今のうちだぞ?」


温泉か。それもアリだな。


「俺も入ってこようかな。香織はどうする?」


「じゃあ、せっかくだし私も行く」


俺達はタオルなどを準備をする。


「せっかく温泉来たのに、家族風呂使えなかったな。あんなに酔うとは思わなかったよ」


「本当だね。まぁ、今回はお互い子供も来てるから、イチャつく訳にもいかないでしょ」


そんな父さん達の会話を聞いた俺達は、なんとなく申し訳なくなった。俺達は、隣の部屋でイチャついてたし、貴方達の奥さんに限っては、目の前でヤッてましたよ。


気まずくなった俺達は、そそくさと、部屋を後にした。


「それにしても、家族風呂か」


「お願いしたら入れるかな?」


「いや、ああいうのは予約でしょ?それに、温泉だって、そろそろ掃除の時間で入れなくなるんじゃない?」


「そっか、でも一応聞いてみようよ!」


香織がどうしてもと言うので、念のためフロントにいた女将さんに聞いてみた。


結果。


「もちろん構いませんよ。お二人には大変お世話になりましたから。もう、予約がいっぱいで。むしろもっとサービスしたいくらいです」


聞いてみるもんだな。こういう縁もあるということか。人との繋がりは大切にしていこう。


俺達は、家族風呂に向かう。扉を開けて入ってみると、そこには六畳間一部屋と露天風呂が備え付けられていた。


「へぇ、こんな感じか」


「凄い、露天風呂だぁ」


俺は、服を脱ぎ始めるが、香織は一向に服を脱ごうとはしなかった。


「どうした?」


「いや、そのぉ・・・先に入ってて」


香織は顔を真っ赤にして、こちらに背を向けてしまった。どうやら昨日のことを思い出して、恥ずかしがっているようだ。


「わかったよ」


俺は先に身体を流して温泉に入ることにした。それにしても、朝から温泉なんて、サイコ〜。


俺は目を瞑って、温泉を堪能する。


そういえば、この辺の温泉の効能は美肌が有名らしい。七五三木さんがロケの時に言っていたことを思い出した。


七五三木さんが、美肌なのも温泉ばっかり入ってるからなんだろうか?


ガラガラガラ


「お、お待たせ、あっこっち向かないでね」


「はいはい」


俺の後ろでは、香織が身体を流す音が聞こえる。なんだろう。前まではそこまで意識してなかったのに、どうしても気になってしまう。


俺は、邪念を振り払うように、頭をぶんぶんと振った。


「隣、失礼します」


そう言って、香織が隣に入ったのだが、特にタオルなどで隠す様子もなく、綺麗な視界に入る。


昨日も思ったけど、やっぱり


「綺麗だなぁ」


「・・・あ、ありがと」


「香織」


「え、なに?あっ、ハルくん?」


俺は、香織の胸元にキスをすると小さく痕をつけた。


「首よりいいだろ?」


「そ、それは、そうだけど」


「なに?」


「・・・したくなっちゃうよ」


一度、一線を超えたせいなのか、感情の起伏は激しく、お互いを強く求めてしまう。


結果として、香織の身体には胸元だけでなく、何箇所か痕をつけてしまうことになったが、隣で俺に寄り添う香織は幸せそうで、俺はそれ以上何も考えなかった。


「おい、随分仲いいな。温泉どうだった?」


「ん?最高だったよ。身も心も潤った」


「そうか、確かに香織ちゃんツルツルというか、なんか艶がいいもんな。温泉ってすげーな」


今思い返すと、俺達は何をしていたのだろうかと、恥ずかしさが込み上げてくる。苦笑いを浮かべる俺達に、父さん達はどうした?という表情を浮かべていた。

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