第143話 初体験

「ハルくん、先に行ってて」


「ん?わかった。早く来いよ?」


隣の部屋も予約してるなんて知らなかったな。俺は隣の部屋に向かうと、もう既に布団は敷かれていた。


「なんで、2つ?」


男と女で部屋分けするなら、3つずつだよな?まぁ、旅館の人が間違えたのかな?


何も知らない俺は、ただの間違いと判断して、特に気にすることはなかった。香織に言われて先に来たものの、特にすることがない。


「テレビでも見るか」


俺は、テレビをつけるが、ちょうどこの時間はニュースくらいしか見るものがなかった。そのため、仕方なくニュースを見て待つことにした。


「んー、特に気になるニュースもないな」


それにしても、香織遅いな。電話してみるか?


俺は、スマホを取り出すと、香織に電話をかけようとするが、スマホのディスプレイには大量のメッセージが入っていた。


「うおっ、なんだこりゃっ!?」


チェックしてみると、大体は彼女達からのもので、SNSにあがっている七五三木さんとの写真の話だった。


『晴翔、あれ誰!?』


『晴翔様!?今どこに居るんですか!?』


『ハル先輩っ!!私とも温泉行きましょう!!』


んー、うん、とりあえずそっとしておこう。俺は悩んだ末に、そっとアプリを閉じた。これは、俺の手には負えない。


しかし晴翔が思っている以上に、七五三木さんの投稿により、ネットは結構な盛り上がりを見せていた。



『HARU様のサービスショット!?」


『肉体美が半端ない!』


『もう、血が足らないです。幸せです』


『是非、レギュラー化を!』


晴翔のファンは、晴翔の姿がテレビで見れることに、喜びを爆発させていた。


『だぁぁぁ、なんだこいつはぁぁぁ!?』


『我らの珊瑚ちゃんがぁぁぁ!!』


『あんなに密着して、け、けしからんっ!!』


一方、珊瑚のファンは羨ましがりながら、晴翔に対して妬み嫉みを吐きまくった。


しかし、晴翔が世間の盛り上がりに気付くのは、もう少し後のことだった。


ガチャ


おっ、来たか?


部屋のドアが開く音がすると、モジモジしながら部屋に入ってくる香織が居た。


「どうした?早く来いよ」


「う、うん」


香織は、部屋の入口付近の壁に設置してあるスイッチを押して部屋の電気を消した。


さっき、眠いと言っていたので、このまま寝るのだろう。


香織は、布団まで来るとリモコンを使ってテレビを消す。


「あれ、テレビも消す?」


「う、うん・・・暗い方が、いいから」


「そうか、じゃあ仕方ないな」


どうやら香織は、明るいと寝れないらしい。なら仕方ないな。俺は、香織が寝れるまでスマホも枕元に置いて使用しないようにした。


部屋は、月明かりが差し込んでいて、思ったよりも明るかった。しかし、目を凝らして見ないと、お互いの表情までは見ることは出来なかった。


隣の布団に転がった香織は、終始無言のまま、こちらに背を向けて居た。もしかして、もう寝たのかな?


俺は、目の前にある、香織の頭をそっと撫でた。一度撫でると、なんとなく癖になり、俺はしばらくの間、香織の頭を撫でていた。


「・・・くすぐったいよぉ、ハルくん」


「あ、ごめん、起こしちゃったか?」


「ううん、起きてたから気にしないで」


香織はそう言うと、ゴロンと寝返り、こちらに顔を向ける。


「ハルくん、なんだかドキドキするね」


「そうか?昔から、良く一緒に寝たじゃんか」


「いつの話してるのさ。もう、私達婚約者なんだよ?いつまでも子供の時とは違うんだから」


「まぁ、そりゃそうか」


俺は、特に気にせず香織の頭をもう一度撫でる。


「うん、やっぱり香織の髪はサラサラで綺麗だね」


「あ、ありがと。ハルくん、手繋いで寝てもいい?」


「いいよ」


こちらに伸ばされた手を握り、しばらくの間、手を繋いだまま話をした。


「そういえば、今日の浴衣すごい反響みたいだよ?」


「そうなのか?」


「うん、早速予約の電話来てるみたい。さっき女将さんに会ったけど、すごい感謝してたよ」


「そっか、少しでも協力できたならよかったよ。まぁ、浴衣を着た香織がすごい美人だっだからな」


香織は照れくさそうに、微笑むと隣の布団からこちらの布団に入ってきた。


「お邪魔します」


「ど、どうした?」


香織は、俺の腰に手をまわして、軽く抱きつき、俺の胸元に顔をうずめる。


「ハルくん、ギュってして」


「どうした、今日は甘えん坊だな」


俺は香織の要望どおりに、香織の身体に腕を回すとギュッと抱きしめる。


「ふふふ、幸せぇ」


温泉に入った後だからか、香織からはとてもいい匂いがした。なんだか、リラックスしたせいか、少し眠くなってきたな。


「なんだか眠くなってきたな」


「えっ、うそ!?」


「えっ、香織も眠いんじゃなかったのか?」


「そ、そうだけど!えっ、どうしよう??」


何故だが俺の腕の中で、あたふたと慌てだす香織。どうしたんだろうか?


「ん〜、もうやるしかないっ!!」


香織は俺の腕から抜け出すと、ガバッと掛け布団をまくり俺の上に馬乗りになる。


「お、おい、どうした!?」


「ハルくん、お願い・・・少し、目つぶってて」


香織は浴衣の帯をするすると解く。浴衣を脱ぎ捨てると俺の目の前には、下着姿の香織の姿がある。


「ちょ、おま、何してんだ!?」


「・・・ハルくん」


香織は、ブラジャーのホックを外すと、そのままブラジャーをとり、たわわな果実が2つ現れた。


「そ、そんなに見られると、恥ずかしいよ、ハルくん」


「わ、悪い」


悪いと思いながらも、俺は香織の身体から目が離せなかった。月明かりに照らされた香織は、とても綺麗で、言葉を失った。


「・・・ハルくん」


香織はゆっくりと顔を近づけると、優しく唇を重ねる。


「っん、んん」


香織はゆっくりと、離れると俺の浴衣の帯に手を伸ばす。


「か、香織!?」


「ハルくん、だ、大丈夫、わ、私に任せて。すぐ終わるから」


必死に俺の浴衣を解こうとする香織。俺は、そんな香織の腕を掴む。


「えっ、ハルくんっ??」


なんとなく、俺には香織が焦っているように見えていた。俺は、香織を抱き寄せると、ゴロンと転がり体勢を入れ替える。


「ハ、ハルくん!?」


「最初に誘ったのは、そっちだからな?」


俺は逃げずに向き合うことにした。俺は香織と何度も唇を重ねた。


経験のない俺は、なんとなく自分の知識に従って、香織の体を愛撫する。


「あっ、ハルくん、ちょ、んんっ、まってぇ」


「痛かったか?」


俺は心配になるが、どうやら違うようだ。


「・・・ううん、気持ちい。でも、濡れちゃうから、ぬ、脱がして」


俺は香織の言う通り、下着を脱がす。香織は恥ずかしいそうに、胸と下腹部を腕で隠すが、それが余計に俺の理性を吹っ飛ばした。


「ね、ねぇ、なんか、来ちゃう、よ。ハル、くん、あぁぁぁっ!!」


俺は、香織がびくびくと痙攣する身体を鎮めている間に、準備をする。初めて装着するコレは、なんとなく大人の階段を登ったと感じた一つだった。


そして、そこからは記憶が曖昧だった。初めての経験に痛がる香織を気遣いながら、時間をかけて愛を育んだ。


「お風呂、入るか?」


「ううん、今日はこのまま。もう少し、余韻に浸りたいかも」


「でも、みんな来ちゃうんじゃないか?」


「ううん、誰も来ないよ。お母さんと真奈さんにお願いしてあるから」


「えっ、もしかして、初めから」


「うん、だからね安心して。それよりさ、もう一回・・・しよっ?」


俺は、香織の可愛い要求に、逆らえるはずもなく、その後も何度も身体を重ねた。


ーーーーーーーーーー


「ど、どうやら上手くいったみたいね」


「そ、そうね」


・・・。


「ねぇ、晴翔くんって初めてなのよね?」


「そのはずだけど」


既に泥酔しきった旦那達を放って、2人は壁に耳を当てて隣の様子を伺っていた。2人の耳に聞こえてくるのは、初めてとは思えないほど、喘いでいる香織の声だった。


「な、なんか変な気分になるわね」


「自分の娘の初体験を聞くって、ちょっと変な気分ね」


・・・。


「ねぇ、明日香?」


「ど、どうしたの、真奈?目が怖いわよ??落ち着いて、旦那もいるから、ねっ!?」


「大丈夫よ、ぐっすり寝てるから。それに、いつもしてるんだからいいじゃない」


「そ、そうだけど、それは2人のときだけで、ちょ、待って」


「だーめ♡」


次の日、旦那達は妙に肌艶のいい女性陣3人を見て不思議に思った。


「なぁ、なんかあったのか?」


伊織から話をふられるが、晴翔は曖昧に言葉を返すしかなかった。何故なら、真奈達同様に、晴翔にも隣の声が聞こえていたからだ。


「さ、さぁ、何があったんだろうね」

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