第124話 会議
「晴翔さん、これから向かうのは生徒会室でしたよね?」
「そうだよ」
「生徒会には、澪さんもいらっしゃいますか?」
「そうだね、生徒会長だからね。忙しいみたいだから、ちょっと顔出したら出ようか」
「はい」
俺達は、生徒会室の前までくると、中から声が聞こえてくる。
あれ?
生徒会は女子だけだった気がするけど、男子の声がする。それに、どこかで聞いたことがあるような。
俺は、不思議に思いながらもドアを開けた。
「お邪魔します」
「・・・はい、どうぞ?」
俺が入ると、思った反応と違った。しかし、澪は何かに気づいたようでこちらに近づいてくる。
「あの、もしかして、晴翔様ですか?」
澪は周りに聞こえないように、俺に耳打ちする。
「あ、そっか。この格好だと誰も気づかないのか。よくわかったね」
「晴翔様なら、どんな格好でも気づきますわ。それに、エミーさんがいらっしゃいましたからね。すぐにわかりました」
「俺は顔出しに来ただけだから、邪魔にならないうちに帰るね」
「え、帰ってしまうんですか!?」
「そうだね、邪魔になるしね」
澪はあからさまにしょんぼりしている。チラッとこちらを見ると、そっと俺の服を掴んだ。
「晴翔様、もうちょっとだけ、居てくれませんか?」
「え、でもなぁ」
「いいんじゃないですか?私、生徒会気になります」
エミーは、うちの生徒会に興味があるようで、少し見学をすることになった。
生徒会室に入ると、澪の隣に席が2つ用意された。俺達がそこに座ると、生徒会のメンバーはこちらをチラチラと見ている。
「だ、誰だろうね、あの人」
「凄く綺麗。隣の子も可愛いし」
「会長の知り合いみたいだけど」
どうやら俺とエミーが気になるようだ。そりゃそうだろうな。大事な会議中に部外者が居るんだし。
「大丈夫ですから、ここに居てください。では、会議を再開しましょう」
その後、会議は再開し学園祭について話し合っていると、西園寺がずっとこっちを見ている。何見てるんだ、あいつは。
俺とエミーを交互に見ている。なんだか嫌な予感がするな。
「さて、今日はこんなところでしょうか、会長」
「そうですね。晴、ハルちゃんは、何かありますか?エミーさんも何かあれば言ってくださいね」
「んー、そうだなぁ。俺、私としてはお化け屋敷もバンド演奏も楽しみだったけどなぁ。中止じゃしょうがないよな」
「ハルちゃんは、お化け屋敷好きなんですか?バンド演奏も?」
「好きというか、学園祭っぽいかなぁって思って。ちょっと楽しそうだよね」
「なるほど、ハルちゃんはやりたいんですね。わかりました。お任せ下さい」
「えっ、何が?」
「いえ、気にしないでください。では、終わりにしましょうか?」
澪が会議を閉めたあと、俺とエミーはさっさと帰ろうとしたが、西園寺に引き止められる。
「やぁ、初めまして。俺は西園寺日向、生徒会副会長だ。君達は?」
西園寺は、軽く自己紹介するとこちらにウインクしてきた。うげ、キモい。男からウインクをもらう日が来るとは。
チラッとエミーを見ると、見るからに引いている。
《残念なイケメンっているんですね》
辛辣なコメントありがとう。てか、ドイツ語になってるぞ。いや、ドイツ語なら悪口言ってもわからないのか。
《居るんだよ、この学校には何人か》
《やっぱり晴翔さんは貴重な人材ですね。国の、いや、世界の宝です》
《大袈裟だな》
「えーっと、日本語でお願いできるかい?」
流石に困ったのか、西園寺は日本語で話して欲しいと言ってきた。
「私はいいけど、エミーはドイツ語しか喋れないから」
「そ、そうかい、なら仕方ないな。よかったら、俺が学校の中を案内するけど、どうだい?」
西園寺のお誘いに、俺達が引いていると、澪が助け舟を出してくれた。
「大丈夫ですよ。2人の案内は私がしますので」
《残念イケメンはお断りです》
笑顔で酷いこと言ってるな。
「不知火さん、そ、そう言わずに」
「すみません、私は男性が苦手なんです(男なんで)。だから、大丈夫です」
「そ、そうでしたか。そう言うことなら、仕方ありませんね、綺麗なお姉さん」
うげ、やっぱり気持ち悪い。
「わ、私は年下ですので、気にしないでください」
「そうだったのか。そうだ、いいものをあげよう。ほら」
そう言って手渡されたのは、学園祭の招待券だった。マジか。俺は震える手で招待券を受け取る。
「ぜひ来てくれると嬉しいな。それじゃ俺はもう行くよ」
残念イケメンは、颯爽と生徒会室を後にした。
「ハルちゃん、それ下さい」
澪は、俺から笑顔で招待券を受け取ると、躊躇なくシュレッダーにかけた。
「ハルちゃんには、後で私から差し上げますので、あんな汚いものは捨ててしまいましょう」
「ははは、あ、ありがとう」
生徒会メンバーに見送られ、生徒室を後にした俺達は、これ以上の面倒を避けるため、澪と一緒に乗降口まで来てもらうことにした。
「それにしても、晴翔様は可愛らしいですね」
「喜んでいいのかわからんが、ありがとう」
「ところで、エミーさん。例の物は順調ですか??」
「えぇ、お任せ下さい!さっき香織さんにデータを渡したところです」
「なるほど。当日が楽しみですね」
「はい!」
2人は、なにやら盛り上がっているが、俺は早くこの場を離れることだけを考えていた。
そして、家庭科室の前を通った時、思い出したことがあった。姫流先輩って、なんであんなところに居たんだろう。
「あのさ、澪」
「なんですか?」
「この間、家庭科室で姫流先輩?って人に会ったんだけどさ。あの人なんであんなところに居たの?」
「えっ、会ったことあるんですか!?」
「え?う、うん。たまたまだけどね」
会ったのは、本当にたまたまだったが、そんなに驚くことなんだろうか?
「姫流さんは、同じクラスの私でも、2回くらいしか会ったことありませんから。ほとんどの生徒は一回も会ったことがないと思います」
「そ、そんなにレアな人なんですね」
「はい。彼女は特殊な生徒でして、登校していればどこに居てもいいことになっています」
登校していればそれでいいのか。俺や桃華も随分特殊な扱いだったが、俺ら以上だな。
「理由は彼女の体質というか、特技?によるところが大きいようです。これは個人情報なので、本人に直接聞いて下さい。また、会えればですが」
「そうですね。会えたら聞いてみます」
俺とエミーは、乗降口で澪に見送られ、学校を後にした。とりあえず、我慢の限界がきた俺は、早く元の格好に戻ることにした。
ーーーーーーーーーー
「ちぇっ、もう少し楽しみたかったのに」
「悪いね。でも、スカートは防御力が皆無で、もう耐えられない」
「仕方ないですね」
俺は男に戻ると、エミーと出かけることにした。しかし、これは遊びではない。
今日は学園祭で使う物を買い物に行く。それをエミーに手伝ってもらうことにした。
買い物リストは香織からもらってある。食材は当日に揃えるので、今日はテーブルクロスや飾り付けに使う小物などなど。
「どこに行きますか?」
「そうだなぁ、ホームセンターに行ってみるか?」
「ホームセンターですか!?行きましょう!」
ホームセンターと聞いて目を輝かせるエミー。そんなにホームセンターに行きたいのかな?
「最近のホームセンターは、オタクが好むグッズも結構扱ってるんですよ!それに収納もオシャレなの多いですし、天国ですよ!」
興奮を抑えられないエミーを引き連れ、学園祭の買い出しに向かった。
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