第123話 生徒会
今年もまたこの時期がやってきました。
一年に一度やってくる、一大イベント『学園祭』。特に、当学校の学園祭は、この周辺地域でも有名な催しである。
昔は5日間も開催されていたと聞きますが、いろいろな諸事情により、徐々に縮小され、今年は3日間に縮小されました。まぁ、それでも長く感じますが。
そんな学園祭を、無事に運営するために、我々生徒会が居ます。各クラスの出し物の精査をし、現実的に問題がないかの確認、使用教室や屋台などの場所決め、費用の確認、招待客の確認、当日にはパトロールもしなくてはなりません。
生徒会長として、最後の仕事になる為、なんとしても無事にやり遂げなくてはなりません。そのため、必要以上に力が入ってしまうのは致し方ありません。
「不知火会長、全員集まりました。そろそろ、会議を始めますか?」
「そうですね。そうしましょうか、
我が生徒会には、優秀なメンバーが揃って居ます。私が生徒会長になった際に、指名させて頂いた方々です。
三年生は、本来ならあと1人居るのですが、現在は私のみで、他のメンバーは1、2年生で構成されています。
彼女達を紹介しておきましょう。
『副会長』
『庶務』
『広報』
『監査』
『書記』
『会計』
そして、現在は参加していませんが、もう1人副会長が存在します。
流石に女子だけではダメだということで、男子を1人入れました。同じクラスの西園寺日向。先生からの強い要望で入れることにしました。
学校側と何かあったんでしょうが、正直私としてはどうでもよかったですから。
しかし、この選択が間違いでした。
西園寺さんは、いや、もう西園寺でいいですね。西園寺は、事あるごとに私に関わろうとしてきます。
一々口出ししてくるのも面倒くさいです。まともな意見なら聞きますが、全くためになりません。
なので、私からの強い要望で、生徒会から外すことにしました。ですが、流石に男子が1人も居ない訳にもいかず、西園寺は生徒会に在籍しては居るものの、活動には参加しない事が決まりました。
「さて、では倉木さん、会議の進行をお願いします。今日の議題は学園祭についてです」
「はい、会長。では、まず各クラスから上がってきている、出し物についてです」
副会長の倉木さんが、各クラスから上がってきた報告書を読み上げていきます。
3年生にもなると、何が通るかよくわかっているようで、無理な要望はして来ません。
ですが、2年生の一部や1年生はこうはいきません。少し時間をかけても、方向性を示してあげる必要があります。
「今のところ、問題がありそうなのが、お化け屋敷、バンド演奏、あとは飲食で食中毒の危険がありそうなクラスが何箇所か、ですかね」
「そうですね。うちは原則お化け屋敷とバンド演奏は禁止していましたね」
「なんで、ダメなんですか?」
「確か、昔問題が起きたからだった気がしましたが。定かではありませんね」
とりあえず、問題のありそうなクラスはメモをして、各クラスの実行委員が集まった時に指摘すればいいでしょう。
今年はすんなりいきそうでよかったです。
しかし、そんな和やかな会議に水を差す人物が現れました。
「やぁ、順調かい?」
「げっ、西園寺先輩」
「な、なんで西園寺先輩が?」
皆一応に、顔を引き攣らせている。西園寺に面と向かって敵対するような人は、あまり居ません。
もしかしたら自分だけでなく、親にも迷惑をかけるかもしれませんからね。
「不知火さん、学園祭の準備はどうだい?」
「・・・えぇ、順調ですよ」
「そうかい?先生に手伝うように言われたんだが、何かあるかい?」
「いえ、邪魔なのでお帰りください」
私の一言に、生徒会のメンバーは身体を硬直させる。私の機嫌が悪いことに気づいたようで、とにかく何もしないことを選んだようです。
「そんなこと言わないでおくれよ。俺の席は、ここでいいかな?」
西園寺は、場の雰囲気など読まず、空いている椅子にこしをかけた。
はぁ、どの先生かは知りませんが、余計なことをしてくれました。後で釘を刺しておきましょう。
私が、席を立とうとした時、私のスマホが鳴りました。
あ、晴翔様から。
でも、今は会議中です。会議に集中しないと。でもでも、晴翔様の声が聞きたいです。
私がスマホを置いたり、手に取ったりを繰り返していると、倉木さんが声をかけてくれました。
「会長、もし良かったら休憩にしましょう」
「そ、そうですね。会議も順調ですし、一度休憩にしましょう。それがいいですね」
私は、すぐにスマホを手に取ると通話ボタンを押しました。
ーーーーーーーーーー
私の名前は倉木鈴。
生徒会副会長をしています。
不知火先輩との一騎打ちに敗れた私は、生徒会長になることは出来ませんでした。しかし、不知火先輩からご指名を頂き、副会長に推薦して頂いた時は嬉しかったです。
しかし、この生徒会には問題がありました。唯一の男子が西園寺先輩だと言うことです。
西園寺先輩は、昔から不知火先輩が好きでいつもアピールをしています。しかし、不知火先輩にはそれが余計に株を下げているようでした。
とにかく、この2人が揃うことのないように願っていました。ですが、なぜか先生に頼まれたと言って、西園寺先輩が来てしまいました。
普段の不知火先輩はとても優しくて面倒見のいい先輩だけど、男子が関わってくると、機嫌が悪くなり、まるで室温が10℃以上下がったような感覚に陥る。
絶対に怒らせてはいけない先輩なんです。
ふと、私は皆の視線に気づきました。
『副会長、なんとかしてください!』
『お願い、鈴〜!』
『か、勝手なこと言わないでよー!?』
みんなの目が物語っている。なんとかしろと。でも、私には無理!!
そんな時、私は不知火先輩の挙動がおかしいことに気づいた。
電話かな?
いつもの先輩では見られない、あたふたと落ち着きのない様子。スマホの画面を見ては、可愛らしい笑顔をみせ、そうかと思えば思い詰めたようにスマホを置く。その繰り返し。
何あれ、可愛い!!
はっ!?
そういえば、先輩が気にする電話はひとつだけ。齋藤さんですね!?
「会長、もし良かったら休憩にしましょう」
私の提案が意外だったのか、不知火先輩は一瞬戸惑ったものの、すぐに了承した。
「そ、そうですね。会議も順調ですし、一度休憩にしましょう。それがいいですね」
不知火先輩は、それとなく言葉を添えるが、嬉しい感情がだだ漏れだった。
「はい、晴翔様どうしました?」
晴翔『様』!?
最近の先輩は齋藤さんの彼女であることを公言してイチャイチャしているため、驚きはなかったが、まさか『様』づけとは。
「いえ、旦那様のお役に立ててよかったです」
今度は旦那様!?
呼び方に驚いていると、次の瞬間先輩の顔がボンッと赤くなりました。
「!?・・・ええええっと、あ、あああの、し仕事があるので!この辺で失礼致します!」
急いで電話を切る先輩。でも、凄く幸せそう。頬を赤くしながら、スマホの画面をしばらく覗いていた。
「さて、では会議に戻りましょうか」
さっきまでの不機嫌さは、どこかへ行ってしまい、代わりに顔を引き攣らせるのは西園寺先輩だった。
とりあえず、先輩の機嫌が直ってよかった。ありがとうございます、齋藤さん!
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