第116話 学園祭準備

「ハルくん、今日は綾乃ちゃんと出掛けてくるから、先に帰ってて」


「うん、わかったよ。気をつけてね」


私は、ハルくんに見送られ、教室を後にした。私は綾乃ちゃんと合流するため、学校近くのカフェに向かった。


このカフェは学校の近くにあるが、人気なお店が並ぶ大通りとは少し離れているため、学生が来ることは少ない。


私がカフェに着く頃には、もうすでに綾乃ちゃんの姿があった。


「綾乃ちゃん、待った?」


「大丈夫、さっき来たところ」


「そっか、よかった。それじゃ飲み物注文してこよう」


私はアイスコーヒー、綾乃ちゃんはカフェオレをそれぞれ注文し、再び席に戻る。


「さて、さっそくだけど、今後のことを話し合おっか」


「そうだね」


私達が今日集まったのは他でもない、八乙女雪花についてだ。


西園寺先輩のことがあってから、先輩の彼女達がちょっかいを出してくるようになった。


「でも、実際どうする?なかなか証拠も集まらないけど」


「そうだねぇ、実際周りに人は居たけど、みんな八乙女グループの関係者だったみたい。みんな八乙女先輩から、なにか言われたんじゃないかな?」


「うげ、最悪じゃん。でも、それだとどうする?」


「まぁ、その辺は澪先輩が、なんとかしてくれるらしいから、証人に関しては大丈夫だと思う。あと、西園寺先輩と八乙女先輩だけどうにか出来ればいいんだけど」


「そうなんだ。じゃあその辺は安心して待とう。それで、あの二人はどうする?」


「八乙女先輩に関しては、多分どうにかできると思う。でも、西園寺先輩は・・・」


「やっぱり晴翔に協力してもらう?」


出来れば、ハルくんが戻って来る前になんとかしたかったけど、それは無理だった。


それに、今日の様子を見るに、たぶん誰かに聞いたんだろうなぁ。声には出さなかったけど、心配そうな目してたもんなぁ。


ここまで来たら腹を括るしかない。


「そうだね。ハルくんに頼もう。誰を敵にまわしたか、思い知らしてやるんだから」


「よし、そうと決まれば晴翔にも連絡しよう」


私達は、問題を解決するために、みんなの力を借りることにした。


ーーーーーーーーーー


「お嬢様、晴翔くんどうぞ乗ってください」


「ご苦労様、葛西」


「ありがとうございます、美涼さん」


俺達は、美涼さんに乗せてもらい、澪の家に向かった。


「お爺さま、晴翔様を連れて来ました」


「おぉ、入っていいぞ」


俺達は部屋に入ると、座るよう促され、ソファへ腰掛ける。そして、俺達はお爺さんに、ことのあらましを説明した。


「なるほどのう。やっぱりちょっかい出して来たか。それで、晴翔。お前さんはどうしたいんじゃ?」


「別に罰を受けてもらいたいとか、そんなことは考えていません。ただ、俺の大切な人達に手を出さないようにしたいだけです」


「ふむ、なかなか難儀な話じゃの」


「でも、西園寺に関してはどうにかなるのではないですか?西園寺とはいくつか大きな案件を抱えていますし」


「そうじゃの。しかし、八乙女の方はどうするんじゃ?あそこは、少々面倒くさいぞ?儂らが関係を切ったところで、困らんだろ?」


八乙女グループは、国内での繋がりは西園寺が一番強く、あとは海外の企業との繋がりが主である。


しかし、何事にも例外がある。


「それに関しては、大丈夫だと思います。香織がなんとかするでしょう。俺達は、西園寺だけどうにか出来れば問題ありません」


2人はピンと来てないようだが、俺には確信があった。香織なら八乙女の名前を聞いたときに、すぐに気づいたはずだ。


そんな時、俺の携帯が鳴った。


「もしもし?」


「もしもし、ハルくん?ちょっと相談があるんだけど」


案の定、香織からの相談は西園寺の件だった。その後、香織と話を詰めたあと、早々に通話を終えた。


「やっぱり、香織に任せて大丈夫のようです」


「そうか、お前さんの連れは、特殊な子ばかりじゃの」


「本当に、晴翔様といると飽きませんわ」


俺達は、西園寺達に報いを受けさせるために、話を進めた。そして、そのための準備を各々が始めることとなった。


ーーーーーーーーーー


「はい、皆さーん。今年も学園祭がやって来ました。各クラスで出し物を決めて、それの準備をしていきます」


学園祭を2か月後に控えて、学園祭の準備期間が始まった。


うちのクラスの学園祭実行委員は勅使河原と南さんに決まった。


「じゃあ、あとは2人に進行を任せるとして、何かあったら声かけてね」


それだけ言い残すと、田沢先生は一度職員室へと戻った。


「さて、それじゃあさっさと決めちゃおうぜ」


「何かやりたいことある人、手あげて」


2人が前に出て、話し合いを進める。


「はい!メイド喫茶!」


1人の男子が手を挙げて、発言したのをキッカケに、男子の票はメイド喫茶へと吸い込まれていった。


まぁ、学園祭といえばメイド喫茶だけど。女子達の視線が痛い。


「男子達は何もしないつもり!?」


「そうよそうよ!!」


「今年は齋藤くんが居るのよ!?」


「男子達もコスプレしなさいよ!?」


「「「「えぇ〜〜〜」」」」


思わぬ女子達からの反論に、男子達は気圧されているが、男子達もここで引くわけにはいかなかった。


「わ、わかったよ」


「やればいいんだろ!?」


「そのかわり、女子のメイドは確定だからな!?」


その後も、一悶着あったがなんとかメイド喫茶に確定した。


そして、男子達のコスプレはそれぞれ女子達が決めることが確定し、そのかわり女子達はメイド服を着ることになった。


「じゃあ、俺達のクラスはメイド喫茶でいいな?じゃあ、次に食べ物についてとコスプレについて考えよう」


「じゃあ、料理が得意な人はこっち。コスプレとか興味ある人、裁縫が得意な人はこっちに集まって」


意外にも、あの2人はテキパキと司会を進行していく。それに、勅使河原はチラチラと南さんの方を気にしている。もしかして。


「ねぇねぇ、齋藤くん!!」


「うおっ!?ど、どうしたの?」


突然声をかけられ驚いてしまったが、最近はよくあることである。今まで関わらなかった人達からよく声をかけられる。


「齋藤くんはなんのコスプレしたい!?」


「やっぱり、私達メイドのご主人様!?」


「いや、執事もいいかも!」


なんだか、俺の預かり知らぬところで話が進んでいく。


香織、助けてくれ!


俺の願いが叶ったのか、香織が一歩前に出た。流石は幼馴染。やっぱり持つべきものは幼馴染だな。


「みんな、何言ってるの」


香織が珍しくドスの効いた声を出す。すると、盛り上がっていた女子はごくりと息を呑む。


「ハルくんの女装は凄い可愛んだからね!?」


「えっ、香織?」


何を言い出すんだお前はぁぁぁ!!


「ハルくんに一回だけ、女装させてデートしたことあるけど、みんなハルくんの虜なんだから!芸能事務所から名刺まで貰っちゃって」


「か、香織さん、もうその辺でやめないかい」


俺の黒歴史を思い出させないでくれぇ。あれは罰ゲームで仕方なくやっただけだ。もう、すっかり忘れてたのに。


「さ、齋藤くんの女装・・・!?」


「やばい、見てみたい!!」


「西城さん、天才!!」


「でしょ!?ハルくんのことなら、私が一番知ってるんだから!」


「「「「おぉ〜〜!!」」」」


何故か、みんな香織を尊敬の眼差しで見つめている。何かの宗教団体がこいつらは。


「さて、ハルくん、早速一回だけ着てみようか??」


「えっ、やだよ!?」


俺は危険察して、急いで教室から出ようと出口へと向かう。勢いよくドアを開けるが、そこには田沢先生の姿があった。


「ふふふ、晴翔くん?」


「な、なんですか?」


田沢先生は、俺の手をガッチリ掴むと、ニコッと笑う。


な、なんだか、嫌な予感がする。


「話は聞かせてもらったわ。さっそく着替えましょ!」


「ナイスです、先生!」


先輩と香織に捕まった俺は、家庭科室へと連行されていった。そして女子達は、静かにあとをついて来る。


くそぉ、誰か助けてくれぇぇぇ!!


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