第64話 怪しい

怪しいです。


最近葛西の様子がおかしいのです。


いや、晴翔様に対するあの感じは、もうおかしいを通り越してやばいです。


しかし、最近私に隠れてこそこそと、何かをしているようなのです。お爺様も晴翔様も教えてくださらないため、葛西を問い詰めるしかありません。


「ねぇ、葛西。私に隠してることあるでしょ」


「お嬢様、そんなことありませんよ」


「じゃあ、今日はどこに行くのよ?」


「顕彰様に頼まれて買い物に行くのです」


「怪しいわね」


明らかに、そわそわしていますし、こういうときは晴翔様が関わっていることが多いですからね。逃がしませんよ?


しかし、ここで思わぬ伏兵が現れました。


「おい、澪。ちょっといいかい?」


「お爺さま、なんですか?」


お爺さまが、この時間に家にいらっしゃるなんて珍しいですね。この時間は大体会社にいらっしゃるはずなのに。


「ちょっと、聞きたいことがあってのぅ」


「なんでしょうか?」


「今年のパーティの件じゃが」


「パーティですか」


また、この憂鬱な時期がやってきたのですね。毎年開かれる、我が不知火グループのパーティには、毎年のように私に近づいてくる男性がいるため、面倒くさいのです。


考えただけで、ため息が出てきますね。あぁ、そうだ葛西を問い詰めないと。私が振り返ると、そこにはもう葛西はいませんでした。


「あ、やられましたね。お爺さま?」


「そんなに睨まんでくれよ。お前にとっても悪い話ではないのだ」


「どうだか」


「今年のパーティには、晴翔も呼ぶつもりじゃ」


「えっ、晴翔様をですか?」


私は一気にテンションが上がりました。憂鬱に感じていたパーティがとても楽しみになってきました。


「まぁ、婚約者であるなら呼ばなくてならんじゃろ?それに、男避けに使えばよかろう」


「ありがとうございます、お爺さま。それにしても、名前で呼ぶほど仲良くなったのですね?」


「あ、あぁ、まぁ色々あっての」


お爺さまが、晴翔様から真奈さんグッズを頂いているのは知っています。部屋にやたらと物が増えてましたしね。


しかし、それだけで晴翔様と会っているというのも、おかしな話です。お爺さまは決して暇な人ではありません。きっと、もっと大事な話があるはずです。


「そうじゃ、晴翔にはお前以外にも彼女がいるのだろう?」


「えぇ、先日お泊まりに来た子達ですわ」


「そうか、そうか。その子達も、パーティに呼んだらどうじゃ?今後もお前と関わるならば、こういう場にも慣れていかなくてはならんじゃろうて」


なるほど、確かに一理あるかもしれませんね。もし、私達の付き合いが今後も続くのであれば、必ず通る道ですね。


しかし、私と晴翔様の関係が続くかどうかはわかりませんが・・・。


「澪、大丈夫じゃよ。晴翔を信じておればいいんじゃ。心配はいらん」


「そうですわね。ありがとうございます。では、彼女達にも話してみます」


私は、みんなに連絡を取るために、一度部屋へと戻りました。


ーーーーーーーーーー


『突然で申し訳ないですけど、今から会えたりしませんか?』


私達、女子だけで作られた連絡グループにて、メッセージを発信します。


いつもなら、そろそろ返事が返って来るはずです。


『澪先輩、大丈夫ですよ』


『私も大丈夫』


『桃華もOKです!』


『今日は桃華さんも大丈夫なのですね』


『はい、撮影がほぼ終わりましたので』


『それはよかったです。では、今日はどこかでお昼を食べながらでどうでしょか?』


『『『意義なし』』』


私達は、近くのファミレスで集合することにしました。


葛西が居ないため、今日は歩いて行くことにしました。家からは10分ほどの距離なので、助かりましたね。


それにしても、一人でこうしてゆっくり歩くのも久しぶりですね。なんだか、気持ちがスッキリします。


私が、ファミレスに着くと、すでに3人とも揃っていました。ちょっとゆっくり歩きすぎたかもしれませんね。


「お待たせしてすみません」


「私達も来たばっかりですよ」


「問題ない」


「大丈夫です!」


私達がこうして集まるのも何日ぶりでしょうか?中々全員集まることは出来ないから嬉しいものですね。


私は、さっそく今日の本題を話しました。


「というわけなんですが、どうでしょうか?」


「ハルくんが行くなら、私も行きます」


「そうだね、私もかな」


「私も行きます!」


よかった。どうやら、皆さん参加してくれるようですね。あとは晴翔様だけですね。


「晴翔も呼べばよかったのに」


「今から呼びますか、ハル先輩」


「いや、今日は朝から出かけてるみたいですよ。朝出かけるところ見ましたし」


「なんだ、つまらない」


「残念です」


「たぶんですが、葛西と一緒だと思いますよ?」


私は、思ったことを伝えました。最近、晴翔様と葛西が何かしている気がすると。おそらくお爺さまも絡んでいるようだと。


「そういえば、今日は珍しく髪を整えてなかったんですよね。学校に行くときのハルくんでした」


「そうなんだ。珍しいね」


「陰と陽を使い分けるハル先輩。それだけで格好いいですね」


それにしても、どこに行ったんでしょうか?


そんな時、誰かの携帯が鳴りました。様子を見るに、どうやら綾乃さんのようですね。


「あっ、私だ。珍しい、町田ガールズか」


町田ガールズというと、あの男の彼女達のことですね。ちょっと前に話しかけてきましたが、見るからに体目的で不愉快なのを思い出します。


なんで、あんなのがモテるのでしょうか?皆さん見る目がないのですね。


「あれ、これ葛西さんじゃないか?」


そういって、綾乃さんが見せてくれた写真には、葛西と腕を組んで歩く晴翔様の姿が写っていた。


「ハル先輩、どこに向かってるんでしょうか?」


「さぁ?あっ電話だ」


綾乃さんは、スピーカーにして電話に出ます。


「もしもし?」


『綾乃、あれどういうこと!?なんで齋藤くんがあんな美人さんと一緒なの!?』


「さぁ、私も知りたいよ。どこで見たの?」


『大通りだよ。ブランドショップがいっぱいあるところ。すんごい仲良さそうだったからびっくりして撮っちゃった』


「そっか、教えてくれてありがとう」


『ううん、齋藤くんは最近面白い噂もあるし、ちょっと気になってたんだよね。何かわかったら教えてねー』


用件だけ話すと、電話は切れてしまいました。


「ふむ、そういうことらしいよ」


「最近、ハルくんのことみんな疑ってるから、変わったことがあるとすぐ拡散しちゃいそうだね」


「そうですね。ハル先輩はどっちの姿でも目立ちますからね」


「もう、いっそのこと髪切っちゃえば?」


最近は、髪を切ってオープンにすればいいのでは?という話が増えてきましたね。


確かに、もうそろそろ隠していても意味がない気がしてきました。でも、出来ればもう少しだけ待ってもらいたいです。


「髪を切るのは、私もいいと思いますが、もう少しだけ待ってくれませんか?」


「先輩」


綾乃さんと桃華さんは、よくわかってないようですが、香織さんはなんとなくわかってくれたようですね。


「もちろんですよ。先輩、頑張って下さい。応援してますから」


「ありがとうございます、香織さん」


香織さんも、昔と印象がだいぶ変わりましたね。少し前までは、明らかに私のことも敵視していましたが、最近ではそんな様子は見られませんね。


「さて、じゃあ日取りが決まり次第、皆さんにご連絡致しますね。私は家に行って葛西と話がありますので」


「わかりました」


この日はここで解散することになり、私は急いで家へと戻りました。


ーーーーーーーーーー


「晴翔くん、着きましたよ。顕彰様にお会いになるのですよね?」


「はい、戻ったら来るように言われてるので」


「では、私がお供します」


俺は、車から降りると美涼さんとお爺さんのところへ向かう。しかし、ここである人物に遭遇する。


「あら、晴翔様、ご機嫌よう。葛西、説明してもらいましょうか?」


「お、お嬢様、こ、これには、海よりも深ーい訳がですね」


「言い訳は聞きませんよ。晴翔様も、どうぞ私の部屋に」


あ、これは逃げられないな。この時、俺と美涼さんは同じことを思った。諦めて、澪の後に続くことにした。

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