第56話 女子会
俺が、桃華の自宅に向かった次の日の話。
桃華と晴れて恋人同士になった俺は、桃華をスマホの連絡ツールでグループに招待した。
《晴翔さんが、桃華さんをグループに招待しました》
香織:おっ、桃華ちゃんだ
綾乃:ついに3人目
桃華:よろしくお願いします、先輩方!
香織:ようこそ、ハルくん親衛隊へ!
綾乃:でた、ダサいやつ
桃華:一兵卒として頑張ります!( ̄^ ̄)ゞ
綾乃:受け入れた、だと!?
香織:桃華ちゃん、君とは仲良くできそうだ
何だか、俺の入る隙がないほど、盛り上がっている。まぁ、仲良くやれている分には問題ない。このままそっとしておこう。
ーーーーーーーーーー
実は、晴翔が知らない間に、様々なことが起こっている。
その一つが彼女達の女子会である。
彼女達は、何かと報告を兼ねて女子だけで会う時間を設けている。もちろん、晴翔には秘密である。女子会には男子禁制なのである。
集まる場所は、だいたいカラオケ、もしくは澪の家である。
そして、今日もまた女子会は開かれている。
「澪先輩、いつもすみません」
「別に大丈夫ですよ。私も参加させて頂いているわけですから、場所の提供くらいはさせて下さい」
今日の女子会は、澪先輩の家で行う予定だ。今日の参加者は4人で、珍しくフルメンバーである。大体は、澪先輩か桃華ちゃんが参加できずに3人で開かれることが多い。
「さて、では恒例のハルくんの近況報告からいきましょうか」
大体、女子会で話されることは、ハルくん関連の話だけである。その中でも、ハルくんのことがバレているかどうかの確認は最重要事項である。そして、ハルくんに近づいている女性の影を確認することも忘れない。
「まず、結論から言って、ハルくんはバレかかってます。というか、もう隠し通せないかもしれません」
「そうだなぁ。学校の掲示板も盛り上がってるし、普段顔が見えないのって晴翔くらいだしなぁ」
「そうですね。晴翔様の溢れ出す格好良さは、顔を隠す程度では無理でしょう。きっと、気づく生徒が増えることでしょう」
「その件に関しては、申し訳ありませんでした。制服デートなんて、大それたことをしなければ、状況は違ってましたよね」
目に見えて、桃華ちゃんはしゅんと落ち込んでいる。こういうところが放って置けないと、男心をくすぐるのだろうか?
「桃華ちゃん、別に気にしなくて大丈夫だよ。元々、高校卒業までには諦めようと思ってたの。ハルくんは慣れちゃったみたいだけど、可哀想だし」
「じゃあ、そろそろ髪の毛も切っちゃうのか?」
「んー、でも今じゃない気がするんだよねぇ」
なんとなくタイミングがなく、ハルくんの顔をオープンにすることができていない。もう、ハルくんの彼女になる目的は果たしたし、ハルくん親衛隊も拡大しているので、ここらで何かきっかけがあれば。
「そういうことでしたら、新学期に入ると学園祭があるではありませんか。その時がいいのではないですか?」
「あぁ、もうそんな時期なんですね」
「学園祭かぁ。一年の時は町田達が邪魔で楽しめなかったし、今年は楽しみたいな」
「私は初めてなので、先輩方について行きます!」
「私は生徒会で忙しいと思うので、学園祭はあまり参加できないかもしれませんね。」
学園祭かぁ。当校の学園祭は規模がかなり大きく、期間も長い。学校中に屋台やら出し物が立ち並び、人もかなりの人数が押し寄せる。学園祭の期間は4日間。初日は仮装行列を行い、二日目は学内だけで行う。三日目と四日目が外部の方もお呼びして行う予定だ。
「そういえば、生徒会もそろそろ引退の時期ですよね?」
「えぇ、学園祭が最後の仕事になると思います。学園祭が終わったら、生徒会選挙があり、引き継ぎを行なって終わりです」
「でも、澪先輩の跡を継ぐ人は大変だろうな」
「確かに。澪先輩は2年、3年と生徒会長になって、かなり校則とか改善してもらいましたからね。後釜はプレッシャーでしょう」
「澪先輩って、めっちゃ凄いんですね。桃華見直しました!」
「ふふふ、皆さんありがとうございます」
その後、学園祭についてしばらく話をした私たちは、次にハルくんの周辺の女性関係について話をすることにした。
「そういえば、桃華ちゃんおめでとう」
「結構時間かかったな」
「でも、羨ましいですわ」
この中で、婚約者のふりをしてはいるが、正式に付き合っていないのは澪だけになった。
「いえ、ハル先輩は私のこと、かなり考えていてくれたみたいですから。それだけで嬉しかったです」
「ハルくんは、付き合えれば誰でもいいって人じゃないからね。ちゃんと考えた上で返事をくれるし、真摯に向き合ってくれるから」
「確かに」
「そうですわね」
出来ることなら、ここのメンバー全員でハルくんを支えていけたらと思っている。だから、澪先輩の気持ちもハルくんに届くといいんだけど。
「そういえば、アイドルの六花さんいるじゃないですか。六花さん、この前先輩の道場に来てましたよ?」
「えっなんで?」
「なんでも、昔は同じ道場でやってたみたいですよ?」
「六花さんが?同じ道場で?」
伊織さんの道場は、本格的な方が多く、あまり女性の門下生は多くない。でも、六花なんて聞いたことないんだけどなぁ。
「それで、晴翔とはどんな関係なんだ?」
「いや、そこがよくわからなくて。ハル先輩もいまいちピンと来てないみたいで。というか、お互い気づいてないから、ややこしいんですよ」
気づいてないとは??
私達の頭の上には『?』が浮かんでいた。
「えっとですね。ハル先輩は六花さんに心当たりがありませんし、六花さんはHARU様とハル先輩が別人なんですよ。だから話してて、頭がおかしくなりそうです」
「あぁ、そんな感じなのね」
「それは面倒くさい」
「難儀ですね」
そうか、六花さんはそんな感じなのか。だったら、今はまだ気にしなくていいかな。
「六花さんとは、私が一番会う確率が高いので、私が様子を見ておきますよ」
「ありがとう、助かるよぉ」
これから、ハルくんに気づいた時に、周りがどういう反応をするかが問題ね。
「そういえば、あれわかりました?」
私達は最近気になっていることがある。それは、ハルくんと澪先輩のお爺さんが2人で会っていることだ。
「いえ、お爺さまに聞いてみましたが、教えてくださいませんでした。葛西も知らないようです。ですよね?」
ここで、初めて葛西さんが口を開く。
「はい、他の使用人にも確認しましたが、誰も理由を知りません。ですが、だいぶ2人の仲は良くなったようです」
「中々接点のない2人が話すことってなんだろ?」
「やっぱり、澪先輩のことじゃないか?」
「私もそう思います」
「まぁ、この件は引き続き葛西にお願いしておきますね」
「かしこまりました」
話がある程度まとまったところで、今日はみんな用があるようで、女子会は早めのお開きとなった。
次回の開催は学校が始まる直前かな?
「さて、ハルくん暇かな?」
私は、解散したあとハルくんに連絡を入れるため、スマホを取り出した。
一方その頃。
解散したあと、考えることは同じようで、皆スマホを手に持っていた。
「晴翔は明日暇かな?」
「晴翔様に連絡してみましょう。少しアピールしなくては」
「お嬢様、頑張って下さい!」
「ハル先輩は明日何するのかなぁ?」
その後、4人から同時に明日の連絡が来た晴翔は、どうしたらいいのか悩みに悩んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます