第8話 同居1日目
「おはようございます。会長」
『おはよう。早いな』
京極はやはり昨晩の月城の発言が気になり
熟睡できず、朝を迎えていた。
早朝に起きた後、身支度を完了させ、キッチンにて朝食作りを行なっていた。
「朝食のお飲み物はカフェラテでよろしかったでしょうか」
『あぁ、ありがとう』
月城はリビングに入るとダイニングテーブルに腰掛け、京極から、カフェラテを受け取る。
その後、京極は食事をダイニングテーブルへと並べた。
『京極、あまり私に世話を焼くな。これから生活を共にするのだから、気楽にしろ』
「かしこまりました。私は朝食を食べて、外出するため、会長の食事も自分の朝食を作るついでなので心配いりません。お気遣いありがとうございます」
『この食事がついでか?』
月城はダイニングテーブルに並んだ食事は目をやる。そこにはフレンチトースト、甘いイチゴソースのかかったヨーグルト、生クリームが添えられたスコーンなど、月城の好みの食事が並べられている。
京極は甘いものは普段口にしない。
どうみても俺専用の朝食ではないか?といいたげな月城が京極をじっとみる。
「この後のご予定の準備がありますので、支度してまいります」
京極はそう言い残し、リビングを後にした。自分の部屋に戻るとため息をつく。
本当に同居生活が始まったのだ。朝起きたらリビングに会長がいる。寝不足な頭でこれは現実か?と自問自答している。
2ヵ月の間、同居を普通に過ごすことができれば、大丈夫だと自分に言い聞かせながら、京極は外出の準備を行い、月城がいるリビングへと戻った。
『今日の取材のあと、食事の予定が入った』
食事が一息ついた月城が口を開く。
「かしこまりました。利用される店の選定と予約はいかがいたしましょうか」
『個人的な予定だから、不要だ』
そう返すとすると、月城もジャケットを羽織り、外出の準備を行うと、玄関へと向かう。
その後を追うように荷物を持ち、京極も玄関へと向った。
『送迎も不要だ。予定だけ開けておいてくれ。今日取材のスケジュールが終わったら、お前はもう休んで構わない。』
「かしこまりました。」
そう返すと2人は玄関を出て車に乗り込み、午前中のスケジュール場所へと向かった。
◆
「お疲れ様でした。本日の業務日程は全て終了となります。本日行った下見結果と、報告会の内容はまとめたものを後日共有させていただきます。」
予定を終えて、自社と帰社した月城へ京極が報告を行う。
「明日の日程ですが、先日提案会で議論に上がっていた地方への進出プロジェクトの件について、午前中に提案メンバーと打ち合わせがあり、午後からは鳳製薬が主催するパーティがございます。おそらく現在着手されている新規プロジェクトを公表されるといった内容かと思われます。10時前にはお迎えにあがります。」
明日の予定についても報告を一通り終えると月城の顔を伺う。
『わかった。お前はもう今日は休んでくれ。あと明日朝の迎えは不要だ。一緒に住み始めたこと忘れているのか。あと、今日は帰りが遅くなる。気にするな。先に休んでおけ』
そう返され、京極はハッとそうだった!といった表情を少しするとすぐいつものポーカーフェイスに戻る。
「かしこまりました。お言葉の甘えて本日は退勤させていただきます。失礼いたします。」
そう言い残し、会長の席を後にし、荷物をまとめると車に乗り込み、自宅へ移動する。
マンションへと到着し、部屋へと向かう。
今まだ何度も来たマンションのエレベーターを使い、帰宅する立場になるなんて、考えたことなかった。と思いながらも部屋へと近づいていく。
部屋の前まで着くと、月城のいない部屋の玄関扉を開き、中へ入り、自身へ割り当てられた部屋へと到着した。
ほんとうに月城会長との同居が始まってしまった…。今日は帰宅が遅くなると言っていたが、どのような予定なのだろう。月城会長にも付き合いや、友人もいる。それに恋人の可能性もある…。
こんな考えをしたくないから、仕事以外では距離をおこうと思っていたのに、こんなことに…。
京極はため息をつきながら、簡単に夕食を済ませ、風呂へと入り、自身で荷解きの続きと、部屋の片付けを行っていた。
ピッピッピッ
日付が変わる頃、玄関の暗証番号を入力する音がする。月城が帰宅したのだ。
京極に緊張が走る。
月城を出迎えるか?それも不自然だろう。
片付けを大体終えるとベッドに腰掛けて、読書をしていた京極は、とりあえず、あまり月城を意識せず、もう日付も変わる時間だということもあり、灯を落とし、寝具へと入った。
コンコン…
京極の部屋の扉をノックする音が聞こえた。
京極は突然のことで驚いて固まってしまっていた。ベットを抜けて、扉を開くか迷っているうちに、ガチャと扉が開く音がした。
京極は突然の展開に驚き、目を瞑る。
「もう寝てしまっているか‥」
と月城が呟く声が聞こえる。するとベッドへ近づき、月城は京極の顔を眺めてくる。
「お前はいつまで私のそばにいてくれる…?」
赤のラナンキュラス Anemone @anemone--
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。赤のラナンキュラスの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます