第6話 同居
「会長、何が目的なのですか」
『お前は私と暮らすのはいやか』
「そういった話ではありません。なぜ同居なんて突然・・。目的は一体なにですか。どうしてこんなことを‥」
京極は月城へと視線をやり、月城の回答を待つ。少し、考える様子を見せると月城が答えた。
『・・・・。別々に暮らしていると、ちょっとしたことでも、いちいち連絡をする必要がある。ほとんどの時間、仕事しているのだから、一緒にいる方が効率いいだろう。それに、休暇中の急な仕事にも対応しやすくなる。基本的にお前が休みの時は、しっかり休息をとる義務があることは前提であるが、緊急時の時の話だ。』
「理由はそれだけですか?」
『それだけではない。十分な理由だろ。今は今までない大規模場プロジェクトが進んでいる。今までより、これから忙しくなるだろ』
京極は言葉がでない。
本当にここで同居に同意しても大丈夫なのだろうか。会長と同居なんて、自我を保てるだろうか。今までと同じ距離感で過ごせるだろうか。それにそもそも、部下と上司が同居するなんて変じゃないだろうか。
しかし、ここで同居に反対しても会長は折れないだろう・・。どうするべきか・・。
「会長の部屋で一緒に暮らすことについては承知しました。ですが、一つ条件を出してもよろしいでしょうか」
『なんだ。いってみろ』
「大規模プロジェクトに向けて忙しくなっていく中で、仕事に集中するために同居されるなら、プロジェクトが落ち着く2か月後までの期間限定の同居としませんか」
月城は少し曇った表情を浮かべると目線を反らし、「そうだな。わかった」と言い残すとリビングへと姿を消した。
◆
京極は自身の荷物が片付けられた部屋へと入る。近くにある椅子に座り考える。
とりあえず2か月の間、我慢すればこの場を逃れることができる。会長へのこの気持ちを抑え、隠し通す。
「よし・・」と小さな声で気合を入れると、部屋の使い方を聞くため、会長のいるリビングへと向かう。扉を開けると会長がソファーに座り、机に置いたパソコンをチェックしていた。
『どうした』
「いえ・・お邪魔でしたか」
『いや、大丈夫だ。それに今日からお前の家でもあるんだから、好きに出入りしてくれ』
「わかりました。早速恐縮ですが、シャワーはどうされますか。先に浴びられますか」
『あぁ、そうだな。また使い終わったら部屋に呼びにいく。同居を想定していなかったから、シャワールームは1つしかない。お前の部屋へもシャワールームを増設する手配をしておいてくれ。2ヶ月という期限付きでも、その方が便利だろう。
しばらくは不便をかけるが共用で使ってくれ』
「‥かしこまりました」
月城が先にシャワーを浴びるとのことで、京極は一度、自分に割り当てられた部屋へと戻り、まだ荷解きされていない荷物を片付ける。
ほんとに共同生活が始まってしまったのだと実感しながら、黙々と片付けをする。
集中して片付けていると「コンコン」という扉をノックする音したため、扉の方を振り向いた。
『京極いるか。シャワー空いたから、いつでもつかっていい』
「わかりました。ありがとうございます」
扉越しに返事をする。シャワー室が空いたようなので、着替え等まとめて、シャワーを浴びるため、廊下にでる。
浴室の場所を聞いていなかったと思い、リビングにいる月城へ場所を確認しに行く。リビングを開けると、バスローブ姿の月城がいた。
『どうした』
京極は今の状況に固まる。濡れて下ろされた髪に白い胸元から見える肌。筋肉はあるが細く引き締まった足。バスローブ姿の月城から目が離せないでいる。
普段のスーツ姿でも色気があるが、より一層色気が漂っている。濡れて垂れた髪の間からこちらをみる目にドキッとする。
「いえ、浴室の場所をお聞きしようと思って」
『そうだったな。部屋を案内していなかった。ついてきてくれ』
そういいリビングを出ると、各部屋を紹介してくれた。
『ここが浴室だ。好きに使ってくれ。バスタオルやローブはここにある。好きに使ってくれて構わない』
「ありがとうございます」
◆
少し間があり、月城が口を開いた。
『明日から一緒に風呂に入るか』
「・・・!!」
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