第3話 出会い

 私が月城会長へ出会ったのは、今から10年前、彼が22歳、私が24歳の時だった。

 

 私は出会った当時、現在勤務している会社のライバル会社の経営部門で企画・コンサルティングを担当していた。その時は月城会長は会長ではなく、月城会長のお父上が会長をされていた。


 月城会長と初めて会ったのは、同業社合同の企画提案会だった。出資スポンサーや実際にその企画へ参画する企業向けの提案会にたまたま出席していた。

 その場で、月城会長は、まだ会長ではなかったが新建売住居地の開拓と周辺施設計画を披露し、注目と、多くの高評価を受けていた。


 第一印象は、冷たく綺麗な男だと思った。しかし、営業中に時より少し見せる笑顔が魅力的で周囲を虜にしており、自身も気付けば目を引かれていた。

 次期会長候補と聞き、やはり優秀な人材は人々を魅了する魅力があるなと思っていた。自分とは無縁の存在である。


 提案会も終盤になり、自身の営業も一息つき、会場の隅で振舞われていたシャンパンを少し飲みながら、会場を眺めていた。


『お隣、いいですか』


 突然、シャンパングラスを持った男が横に来た。「えぇ、どうぞ」といい頭を上げるとそこに月城会長がいた。


『ありがとうございます。では、失礼します』


 京極は驚いた。月城は人に囲まれていて、この提案会の中心メンバーといっても過言ではない。なのに、なぜこんな人が自分に?と。


『先ほど、京極さんのプレゼン見せていただきました。とてもよい企画でぜひ、お話させていただきたいのですが』


 こんな人が自分の企画に興味を持ってくれて話しかけてくれた驚きと、近くでみた月城があまりにも綺麗で見つめていると、『アイデア立案に至った経緯や要となるアイデアの個性の部分がとても魅力てきで…』と続けて、声をかけてきた。

 

 しばらく、会場のすみで椅子に腰掛け、お互いの提案企画について話をしていた。すると、月城がジャケットの内ポケットから何か出して、差し出してきたと思ったら、月城の名刺だった。


『よろしければ、私のもとで働いてくれませんか。現在の事業をより拡大するには自分には右腕が必要だと感じていて。返事は後日で構いません。名刺の連絡先にご連絡ください』


 『それでは失礼させていただきます』と言い残し、月城が離れていった。

 これが月城会長との出会いである。一度会っただけであったが彼の熱意と魅力に断る理由はなかった。それから、私は月城会長の会社へ転職し、月城会長は晴れて会長となった。


 実際に仕事をしてみると、月城会長は新しい斬新なアイデアや正確な指示を出し、手堅く成果を上げるところは、しっかりとあげて、みるみる会社は成長していった。

 自分自身、成長しながらもスピード感のある職場にやりがいと面白さを感じることができた。


 秘書という立場で誰よりも、近くで月城会長の仕事への情熱と冷静な思考、人としての魅力を感じていた。

 そうしているうちに、気づいたら、月城会長へ惹かれていた。


 しかし、それと同時に苦しみも気づいたら、付きまとっていた。


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