太陽神がまた輝くとき

 須佐が作ったのは『キノコざるパスタ』だった。

 私は須佐の作るこのパスタが大好きだった。

 蕎麦の麺がない時に代わりにパスタ麺を使ったのだが、意外なほどおいしい。

 しめじや椎茸、エノキなどを醤油や酒などでソテーすることで和の香りがする一方で、蕎麦猪口に入れた麵つゆにはパルミジャーノチーズとオリーブオイルが入っており、倭と伊太利亜の見事な調和が感じられるのだ。

「姉さん」

 食べ終えると、須佐が真剣な面持ちで私に話しかける。

「どうしても部屋から出る気はないの?」

「働きたくない」

 神に二言はない。

「そっか。この手は使いたくなかったけど仕方ない」

 須佐は懐から一枚の札を取り出して私に見せつけた。

「そ、それは!」

 短冊ほどのその札に、私は絶句してしまった。

「姉さんが今やっている、そのゲームのキャストトークショーのチケット。日ノ本で手に入れてきたんだ。部屋から出ないなら、こんなものいらないよね」

 須佐が私の目の前でチケットを破ろうとする。

「ちょっと待って!」

 それを すてるなんて とんでもない!

「誰が部屋から出ないなんて言ったのよ! いいわよ。今すぐにでも出ていくから!」

 私は飛び跳ねるように部屋から転がり出て下界を目指すことにした。

 須佐が憎たらしくほくそ笑んでいるけどそんなの関係ない!

 待ってなさいよ、神谷●史! 杉田●和! 中村●一! 安元●貴! 小野●輔!

 あなたたちに会いに行けるのなら、私の目の前はいつだって明るく輝くわ!



 数年後、日ノ本に戦後最大級の大好況が訪れ、それが『アマテラス景気』と呼ばれることになるのだけれど、それはまた、別の話。


〈了〉

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天の岩戸の引きこもり 立野 沙矢 @turtleheart007

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