第15話 このクラス、仕組まれてやがる!

 教室に入ると、そこにはこれから一緒のクラスになる生徒たちがたくさんいた。俺とメイを含め、約40人のクラスとなっている。


 そして教室に入ると同時に待っていたと言わんばかりのスピードで、たくさんの男女が近づいてきた。


「アレン君! これから一緒のクラスだね! よろしく!」

「アレン君! たくさん思い出作ろうね!」


「メイさん! 僕の名前は――」


 俺には女子が。そしてメイには男子が集まっていく。しかし、メイのところに集まった男子たちが名乗ろうとた瞬間、男子たちはメイの異変に気づく。


 そう、メイは現在深紫のオーラをまとっている。加えて彼女は集まってきた男子たちには目もくれず、視線は俺のもとに集まってきた女子たちに注がれているのだ。


「あの……メイさん? どうかしましたか……?」


 集まっていた男子たちの中の1人が心配してメイに声をかけるが、やはり返事はない。


 ――メイは天使のように可愛く、優しい。


 そんな噂がここ最近出回っているが、今の彼女はお世辞にも天使とは言えないほどに怖い。

 悪魔、と言われた方がまだ納得できるだろう。


「ご、ごめん! また後で話そうか!」


 俺は集まってきた女子たちにそう言い残して、悪魔へと化したメイのもとへ向かう。


「メイ! 大丈夫か?」

「私はいつも通りですけど、何か?」


 全くいつも通りじゃない。


「そんなわけないだろ。皆メイを見て怖がってるじゃないか」

「…………だって」


 しばらく沈黙してから紡がれた言葉。それは俺にとって予想外の言葉だった。


「だってアレン君、たくさんの女の子に囲まれて鼻の下伸ばしてるじゃないですか」

「伸ばしてないけど!?」

「伸ばしてるもん! 私のことを守ってくれるって言ってたのに、私以外の女の子ばっかり見てるし!」

「確かに言ったけど……なんで知ってるんだよ!?」


 俺が『絶対にメイを守ってみせる!』と誓ったのは、心の中でだ。だから誰にも聞かれてないはず。それなのにどうして……。


「前にアレン君が寝言で言ってました」

「まさかの無意識で言ってたぁぁぁあああ!!」


 恥ずかしいの一言に尽きる。

 メイがいない場所で言ったのならまだいい。本人がいる前で言ったのだ。今すぐにでも愧死しそう。


「……アレン君、私以外の女の子ばっかり見てるというのは否定しないんですね」

「その前に言われたことが衝撃すぎたんだよ!」


 細かいところまで見逃さないメイさん、怖すぎる!!


「とにかく! そんな怖い顔してたら友達できないぞ!」

「……私、怖い顔してませんけど?」

「自覚ないのかよッ!!」


 無自覚系天使、可愛い。


「とりあえず紫色のオーラをまとうのやめて!」

「紫色のオーラ……? なんですかそれ」


 可愛い……可愛いけど! もうそのくだりはいいから! 無自覚系天使なのは十分わかったから!


「……なんでもない。早く席に着こうか。俺たち以外の大体はもう席に着いてるみたいだし」

「? ……そうですね」


 やはり無自覚系天使には何を言われていたのか分からなかったようで、メイは首を傾げて頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。

 俺はそれに気づきつつも、黒板に貼られている座席表を見に行く。するとその座席表には、まるで仕組まれているかのような席順が記されてあった。


「おいおい、この席順――」

「やっほ〜! アレン君とメイちゃん!」

「いやー、まさか皆同じクラスになるとは思わなかったよ」


 俺の言葉を遮るかのように、元気な声で話しかけてくるエリカと、爽やかな顔のユウキ。

 ちょうどいいタイミングでやってきた2人に視線を向け、遮られた言葉を再び放つ。


「この席順、おかしくないか?」

「「「……え?」」」


 今来たばかりの2人とメイは同時に席順に目を向ける。そして全員が違和感に気づいた。


「私たち席近い!」


 そう、俺たち4人の席は仕組まれているかのように近いのだ。

 この教室の席は1人席が約40個あり、全ての席は等間隔で離れている。そんな中で俺たちは窓側で後ろの席に固まっていた。


「俺とメイが1番後ろで、その前にエリカとユウキか。絶対何者かによって仕組まれてるよなぁ」


 なんとなく心当たりはある。いや、ほぼ確定に近いけど心当たりがある。それは――――。


「皆さ〜ん! 席に着いてくださ〜い!」


 聞いたことのある女性の声が教室に響き渡った。そして同時に2つのスイカを揺らした1人の美女が教室に入ってくる。


「「ハルカさん!!」」

「お! 2人とも久しぶりだね〜。そして相変わらず仲良いね〜」


 何者かによって仕組まれている。その犯人はきっとハルカさんだろう。この人以外有り得ない。


「「……お久しぶりです」」

「ん。これからはハルカさんじゃなくて先生って呼んでね」

「「はい!」」


 俺とメイの元気な返事を聞いて、ハルカさんはニコリと笑った。……たゆん。


「……よし、皆席に着いたね。では早速、初めてのホームルームを始めようか」


 それからは先生によって、今後のことや学園の生徒としての心構えを説明された。今後の予定と言っても、勉学9割、行事1割という感じだが。

 ……勉強やりたくない。


 兎にも角にも、学園生活は最高な形でスタートした。これからの学園生活、全力で楽しむぞ!!

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幼い頃にお前は無能だと言われて10年間監禁されていた俺、久しぶりに外に出たらモテすぎてやばい 橘奏多 @kanata151015

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