第9話 いざ、学園へ
「でも、折角南西に向かってたのに、いいんですか?」
俺とメイは王都に向かう道中、南西に向かうハルカさんに出会った。ハルカさんは王都で教師をしていて、今は生徒集めをしているらしい。
「いいのいいの。別に急ぎの用事じゃないし、これから生徒になる2人とも出会えたしね」
先導しているハルカさんは、振り向きざまにそう言ってニコリと笑った。
「王都に行くのは2人とも初めて?」
「「はい」」
「なら案内役が必要ね。残念だけど、私は君たちを王都に連れていった後に、また南西に向かわないといけないから」
「大変ですね……」
案内役か……できれば同じくらいの歳の男子がいいな。未だに男子と話したこと、1度もないし。
あの人里でも、1人くらいは仲良くなれると思ってたんだけどなぁ……。話しかけようとしても、皆から舌打ちされるから怖かったんだよ。
だから、学園では絶対に男友達を作るんだ!!
「その案内役、絶対に男の子がいいです」
俺の心情を察してか、ハルカさんが喋り終わってすぐに言うメイ。
……で、でもなんで? ま、まさか――!
――――メイも俺以外の男友達を作りたいのか?
メイが俺以外の男子と仲良くしているところを想像してみる。
……なんでだろう。ものすごくモヤモヤする。
誰にでも優しい。それはかつて酷いことをされた相手にでも、だ。
そんな
約束したんだ。絶対に彼女を守ると。
メイに悪い虫がつかないように、俺が気をつけないとな。だからとりあえずは、案内役は女子にしてもらおう。
学園に入って早々、メイを奪われるわけにはいかないからな!
「……いや、女の子に案内して欲しいです」
男友達は欲しい。でも。
メイがそいつに取られるとなると、話は別だ。
「な……! 許しません! 絶対に男の子です!」
「女の子! 絶対に女の子にしてください!」
そんな俺たちの争いを聞きながら、ハルカさんは苦笑する。
「これって…………もしかして痴話喧嘩……?」
「「なわけあるかい!!」」
思わず同時に突っ込んでしまう。
今の会話を聞いてて、痴話喧嘩だと思う人なんてハルカさん以外にいるのだろうか。
「まぁ……分かりました。2人の意見はバラバラです。なら、男女1人ずつを案内役に任命しましょう」
なるほど。その案なら多分大丈夫だろう。隣をチラッと見るが、メイも納得した様子だ。
それからしばらく無言で歩き続け、やっとの思いで王都に辿り着いた。高い高い外壁で囲まれ、出入口の場所では荷物検査のようなものを受けている。
何かが引っかかりそうで少し怖かったが、難なく荷物検査を終えて俺たちは王都に入った。
王都は人里よりも遥かに住民がいて栄えているため、俺とメイは入った瞬間から目を輝かせている。
「す、すごいです! 人がたくさんいます!」
「これ全部住民……? まじかよ……いくらなんでも多すぎる」
人里では全体でも40人いたら多い方だ。それなのに王都では、40人などその辺に立っている人を数えても軽々しく超えてしまうくらいだ。
「ふふふっ。学園はここから少し離れた場所にあるから、2人ともはぐれないようにね」
「「は、はい!」」
そうして俺とメイは、ハルカさんの姿を見失わないように後ろを付いて行く。
学園までの道では、食べ物や衣類、雑貨などを売っている商店があったり、居酒屋、子どもが遊べる公園などがあった。
人里のような民家だけではなく、色々な建物があることに驚きを隠せない。メイも同じことを思っていたようで、ずっと口をぽかんと開けている。すごく可愛い。
「着いたわ。ここが学園よ」
王都に入ってから10分ほど歩いたところで、ハルカさんは立ち止まった。周りには同じ服を着ている人がたくさんいる。制服、というやつだろう。
「……それで、俺たちはどうすればいいんですか?」
「荷物を部屋に置いて、あとは案内役の子たちに王都を案内してもらおうかな」
部屋……部屋……部屋……ってことはまさか!!
「もちろん違う部屋だからね」
ハルカさんのその一言により、俺は四つん這いになって泣き叫び、メイは安堵のため息をついた。
もしかしたら同じ部屋だったり……? とか思っていた自分がバカみたいだ。そもそも泊めてもらってた時だって、別々の部屋だったじゃないか!
「ま、まあ当然、ですよね……」
俺は苦し紛れの声でそう言った。
知ってたもん……。一緒の部屋だったら毎日楽しいだろうなぁ、とか妄想してただけだもん。……ぐすん。
「あれ〜? もしかして一緒の部屋だったり? とか思ってたのかなぁ〜?」
ハルカさんはニヤニヤしながら煽ってくる。
全くその通りだよ畜生!
「ふふふっ。元々1人1部屋だからしょうがないよ。学園内でイチャイチャするのは構わないけど、ちゃんと節度は守るのよ」
「「元々イチャイチャしてません!!」」
再び俺とメイの言葉が重なる。
すると、ハルカさんは「本当に仲良いわね〜」と茶化すように言った。そして「でも」と続ける。
「2人は隣の部屋にしてあげるから、安心してね」
あなたは神ですかぁぁぁあああ!!!!
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