第38話 告白された私の答え

 朝になり、ごはんを作り、妹を呼んだのだけど、

「お姉ちゃん、私はやっぱり、昨日の事が納得できない。お互いのために私たちは距離を取るべきだと思う。」

 妹は私と距離を置きたいと言ってきたので、


「分かった…ゴメンね。夕陽。」

 私は妹に謝罪して、これからの生活の仕方を考える事になった。


「私は少し早いが、亜里沙ちゃんの家に一人で向かうことにした。」

 たぶん、今までの中で最高に落ち込んだ日だったかもしれない。そんな状態で依頼をこなすのは良くないと思い、無理にでも笑顔を作っていた。


 亜里沙ちゃんの家に着いた時、珍しく彼女の母親の美帆さんが応対してくれた。

「野々宮さん、その顔で亜里沙に会わないでください。あなたは仕事中の社会人として失格です。」彼女はかなりキツイ対応をしてきた。


「その状態だと、亜里沙は困るし、何があったか?話を聞きましょう。」

 この人は影はあるが、人生経験(修羅場)を体験した人だった。私は昨日の事を話して見ることにした。


亜里沙の父、六条 浅斗さんに聞いた話では、彼女は亜里沙の雇われた母として最初はこの家に来たと聞いていた。

「私がなぜ?恋愛もしていない主人と結婚したか?あなたに分かりますか?」


「ごめんなさい。分かりません。」

 私にはほぼ、知らない人と結婚するなんて、見当も付かない話だった。


「これからの話はあなたしか話さない、今のあなたに必要があると思うからよく聞いてね。」


「私はある男性と結婚していて、ひどい暴力(DV)を受けていました。そして、SNSで助けを求めて、浅斗さんと知り合いました。彼は私を匿う代わりに、記憶の無い亜里沙の母親役をお願いしてきました。当時の私はお金も住む場所も無く、了承して彼女の母親になりました。当時の亜里沙は私を見て怯えていました。幸い私と亜里沙の体型が似ていたため、お風呂で裸を見せたりして同じだと偽り母親と視覚から認識させました。」


「それからは母親として亜里沙を育てたのです。そして浅斗さんはすべて偽りの戸籍を用意してくれて籍を入れ、夫婦になった。他人から見たら変かもしれない。でも、浅斗さんは私を妻にしたのに私には一切、手を触れなかった。ある日、理由聞いたの…。そしたら…。」


「君は男性から暴力を受けていた。そんな相手にむやみに触れて、怖い思いをさせたくない。」


「そう言ってくれたんです。その言葉を聞いて、私は彼に尽くすことに決めました。この人を手放したら、亜里沙とも、浅斗さんとも、お別れしないといけない。これが、私の求めていた、幸せなんだって…。」


美帆さんは私にすべてを話したあと、

「あなたにとって慶介くんは何?あなたの人生を変えてくれた、一人の人間なんじゃないの?成人なのに特殊な女子高生をやっている、不安な気持ちでいた、あなたの傍に居てくれたのは、彼なんじゃないの?彼はあなたを一途に想ってる。なのに手放すの?」


「答えは一つしかないじゃないの。彼は自分を偽ってまで、あなたと居たかった。何だか今の私に似ているわね。たまにはあなたから飛び込んであげなさい…」

 美帆さんは微笑んで私を見ていた。


私は決めた、

「美帆さん、ありがとうございます。決めました、彼の胸に飛び込みます。」

 彼女に頭を下げたあと、登校準備を終えた亜里沙ちゃんに、


「亜里沙ちゃん、おはよう。学校に行こっか!」笑顔で挨拶した。


「朝日ちゃん、おはよう。笑顔が今日も可愛いね。」

 二人で亜里沙ちゃんの家を出た。


門を出たときに、夕陽と慶介くんが待ってくれていた。私は、

「亜里沙ちゃん、ちょっとゴメンね。」彼女の手を離した後、


私は慶介くんに勢いよく抱き付いた。

「慶介くん!私はあなたが好き!だから、私と結婚しよ!」

 今日は私がいっぱい甘えるんだ。


「あっ、朝日さん?どうしたの?」慶介くんは動揺していた。


「お姉ちゃん…朝から何してるの?わきまえなよ。」

 ゆうちゃんに注意されたが、


「夕陽。今度、私の夫になる高倉 慶介くんよ。仲良くしてね?」

 妹に紹介すると、


「強引だね、でも嬉しいよ。これからもよろしくね!ひなちゃん。」

 慶介くんはそう言ってくれたあと、私にやさしくキスをしてくれた。


「亜里沙ちゃん、今日は私と学校に行こうね。」夕陽が言うと、

「ゆうちゃん、そうしようか私たち、邪魔だね。」と亜里沙ちゃんが答えた。


二人が立ち去ったあと、

「亜里沙ちゃんの護衛依頼…忘れていたね。」私が言うと、

「二人で謝ればいいよ。でも、今は追いかけようか?」

 慶介くんが答えたので、


 私と慶介くんは手を繋ぎながら、亜里沙ちゃんと妹を追いかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る