第36話 探偵の私より優秀な探偵は妹の夕陽
私は妹の夕陽を連れて浅野探偵事務所に来ていた。
社長に妹を紹介する感じで悪事の証拠を突きつけるためだ。
「どうしたんだい?朝日ちゃん、お父さんに会いたくて来てくれたのかい?」
相変わらず、社長はキモかった。
「社長、この子は妹の夕陽です。今日は私の仕事見学のために挨拶に来ました。」さりげなく来たみたいに装ってみる。
「野々宮 夕陽です、姉がお世話になっております。」
ゆうちゃんが頭を下げると、
「これは、ご丁寧な挨拶をありがとう。私は浅野探偵事務所の社長、浅野と言います。夕陽さんだったね、よろしく。」
何を紳士ぶっているんだよ!変態な所を隠しやがって…。
「慶介くん、私とあの子、あなたの恋人、朝日さんはどっち?」
あらかじめ時計を交換していたので、慶介くんに聞いてみる。
「朝日さん?何を言っているの?朝日ちゃんは君じゃない。」
慶介くんは私を指して言ってくる。
(あれ?時計じゃないの?どういう事?)
もしかして、慶介くんは最初からゆうちゃんと私の判別がついていたの?なら、なんで…もしかして、姉妹の仲を修復するためにわざと演技していたの?
「慶介くん。最初から気付いていたの?私とゆうちゃんが立場を交換していた事…。」
そう私が尋ねると、
「朝日ちゃんは何を言っているの?疲れているの?休んだ方がいいから、もう家に帰ろうよ。」慶介くんは何も知らないと言う。
(この子は私に嘘つくわけないし、どういう事なんだろう…。)
私が混乱していると夕陽が突然、話し出した。
「お姉ちゃんは大変な所に転職しちゃったね。そこの社長さんは常にお姉ちゃんを煽って冷静さを欠くように仕向けているみたいだよ。それにそこの慶介とかいう奴も一緒だよ。」
ゆうちゃんは社長と慶介くんに聞こえる声で話した。
「ゆうちゃん、どういう事なの?」私は知りたくなり、妹に聞き返した。
「まずはそこの社長さん。あなたはいつもお姉ちゃんを動揺させて煽っていた。常に怒らせるような発言を繰り返し、嫌いな事ばかりする社長を演じていた。そして、そこの慶介とより仲良くするように持っていった。」
そうなんだ…。真実を聞いて、私はますますこの社長が理解できなかった。
「あと、そこの慶介とかいう奴もそうだよ?本当はかなり賢いのに、お姉ちゃんの前ではバカで変態のふりをしているんだ。そして、お姉ちゃんの信頼を徐々に積み上げて、自分を好きになるように仕向けていた。最初は嫌々やっていた恋人のふりも一途に思う彼に心引かれて、好意を持つように流れを持っていったんだよ。」
まさか…慶介くんまで、私を騙していたの?そんな~。
そこまで話した妹に社長は、
「夕陽ちゃん。頭の良すぎる女の子はモテないよ?おかげで朝日ちゃんのお父さんになり損なったじゃないか~。」
(あれ?この人…緩いよ?)
「俺は朝日ちゃんのキモいお父さんでいたいのに台無しじゃないか~。このままじゃ頭が良くて、カッコいい、素敵過ぎるお父さんになっちゃうじゃないか~。」
(いや?ならないよ、社長。このままじゃ頭が良いから、逆にキモ過ぎるお父さんになっちゃうよ?)
なに言ってんだ、この社長は?と呆れていたら…。
「夕陽!いくら義理の妹だからって、僕から朝日さんを奪わないでよ!朝日さんに頭が良いってバレたら膝枕してくれなくなるじゃん!せっかく引っ付いても嫌がらなくなったのに…、朝日さんが自ら僕に膝枕してくれるようになったのに!台無しじゃん!」
(慶介くん……。膝枕をする、しないに、頭の良さは関係ないよ?)
………彼は彼で何を言っているんだ?
頭脳明晰で残念な男二人のダメ発言を聞いた私は、
「私…疲れたし…帰る。ゆうちゃん、帰ろう?キモすぎる社長の顔を見たくないから…。」と呟いたら…。
「朝日ちゃん!俺はキモすぎるのかい?頭が良くてカッコいい社長じゃなくて?俺はキモいままなのかい?」
自らキモいお父さんになりたがっている彼に対して、私は、
「はい。頭が良くて逆にキモすぎる社長ですよ。」と言うと、
社長はとても喜んでいるみたいだった。
「慶介くん。帰ろう?」慶介くんの手を繋ごうとすると、
「朝日さん!僕は頭が良いのに、ベタベタ、イチャイチャしてもいいの?頭が良いけど、家に行って膝枕をまたしてくれる?」
(慶介くんが、バカだったからしてたんじゃないんだけど…。)
「いつも通りにしてていいよ?変態なのは変わらないんだから…。」
そう言うと、ガッツポーズをして私に引っ付いてイチャついてきた。
「お姉ちゃん…、私は慶介の事、優しいし嫌いじゃ無いけど、オススメはしないよ?だって…残念すぎるイケメンだもん…。」
妹は慶介くんの事はお断りだそうだ。
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