第26話 玲奈と亜里沙
誘拐未遂事件のその後は特に進展が無しだった。
亜里沙ちゃんが狙う人たちが来ることも無くなった。
(諦めたのかな?理由は不明なままだけど…。)
今日の放課後も亜里沙ちゃんを連れて帰ろうとしたとき、
「やっほ~!元気~朝日ちゃん。」私は呼び止められた。
ハツラツとした元気の良い挨拶をするのは、
「玲奈ちゃん!どうしたの?」まさかの訪問客だった。
彼女は私の探偵の師匠である恵令奈先生の妹さんだ。
「ここから私の大学はそこそこ近いからね。仕事頑張っているかなって。」
玲奈は大学生、でも私の方が年上のため、不思議なタメ口で話す同士の関係になっている。お互い、ちゃん付けで呼び合う親友みたいな存在だ。
「あれ?その子は…。」彼女は亜里沙ちゃんを見て、少し顔を歪ませていた。
(可愛いもの好きな、玲奈ちゃんならいつもなら食い付いて亜里沙ちゃんにアプローチしそうなのに、どうしたんだろう?)
そして玲奈ちゃんは私だけを呼んで、
「あの美少女だけどさ~。ちょっと変だよ、朝日ちゃん。」
玲奈の意外な反応にびっくりした私は聞いてしまった。
「玲奈ちゃん、何が変なの?あの子を知っているの?」質問してみると、
「見た目の年齢は私たちと変わらないんだけど、中身が生まれて間もない子供みたいな色をしているよ?」(色?なんの話だろう…。)
彼女は続けた、
「人間は何年も生きていたら、その人の体に、魂に、蓄積される色が付くんだけど、たとえばJKの年齢なら淡い宝石みたいな色で輝くんだけど、彼女には色が無いんだ。」
玲奈という子は不思議っ子だったんだ。恵令奈先生の事も幽霊が見えるおじさんって言っていたし、変な子なんだよ。
「じゃあ私は?何色なの?」試しに不思議っ子のノリに付き合うと、
「朝日ちゃんはキラキラ綺麗なオレンジ色かな~。名前の通りの太陽の朝日みたいな色だよ。」
(う~ん、その世界は分からん。ゴメンね、玲奈ちゃん。)
「彼女、亜里沙ちゃんは、記憶喪失みたいなんだ、だから、子供っぽく見えるのかもね。」
答えになるかは分からないが、そう答えた。
「違うよ。」(玲奈ちゃん…まさかの否定!)
「精神の問題じゃないんだ、その人が生きてきた経験は、記憶喪失なんかでは無くならないんだ。脳が忘れても、体は覚えているんだ。」
「だから、その子は生まれてなんの経験も無しに育ったんじゃ無いかな。」
玲奈は姉譲りの鋭さを見せて結論を言ってきた。
(それって…生まれてずっと監禁されていたって事なの?)
「それってまさか。」私が言おうとした時に。
「でも、可愛いね、亜里沙ちゃんって言うんだ。お姉さんとデートする?」
(うわ、いきなり、口説き出したよ~。玲奈ちゃ~ん…。)
恵令奈先生に似てるんだけど、妹の玲奈ちゃんは少し緩いんだよね。
不思議な玲奈ちゃんの様子をしばらく見ていると、
「亜里沙ちゃ~ん。」玲奈が言うと、
「玲奈お姉ちゃん。好き。」亜里沙ちゃんは答える。
もう、仲良くなっている…。ある意味、才能だよね。上本姉妹の姉は大人フェロモンで人をメロメロに魅了するのに対して、妹は懐に入り込み、親友関係になる天才だ。現に慶介くんにも、玲奈は、
「慶介くんも一緒に行く?」玲奈が彼をデートに誘うと、
「玲奈さん、僕には朝日さんがいるんです。」
当然、朝日大好きな彼は断るが、
「もちろん、四人で行くよ?」と会話の天才ぶりを披露してくる。
「それなら、お供します。」
と普段から朝日を独占したい、彼ですら、玲奈のペースに持っていかれる。
でも、さっきの玲奈ちゃんが言っていた事…気になるな~。
六条さんに娘の秘密があるのか、聞いてみよう。
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