終章 恵令奈先生との約束
一連の出来事を学園に報告した。
その後、瑞希ちゃんも加藤さんも学園を去ることになり、
探偵業で最初の事件を解決することができた。
真実を暴くことが本当に正しかったのかは、分からない。
自分は探偵に向いてないのかもしれないな。と考え、
なにも出来なかった悔しさで胸がいっぱいになって毎日を過ごしていた。
すると何かを察した恵令奈先生が、
「朝日ちゃん。最後に先生としてのアドバイスをしてもいい?」
あからさまにマジへこみしている私を見て、
「朝日ちゃんに取っては最初の事件だったんでしょ?最初から上手くいくわけ無い。朝日ちゃんがOL時代の時も最初から上手くいってたら、仕事を辞めていないと思うよ?」
「だからと言って、現実を見ないで逃げていたら、もっと不幸で悲しい事態に陥るよ?それに感情は人に伝染するんだ。」
「朝日ちゃんが不平不満を言うと、周りの人間も不平不満を言い出す。」
「今回みたいに、相手の気持ちを考えずに喜怒哀楽の感情をぶつけたら周りを不幸にしちゃうんだ。」
「加藤さんは何もしていないから悪くないは正解じゃないんだ。正確には瑞希ちゃんの気持ちも考えずに、先生の気持ちも考えずに、行動したから全員が不幸な結果になったんだよ。」
私は反論した。
「そんなの無理ですよ!相手の気持ちなんて全部、分からないですよ!きれい事ばかり言わないでください!」
私は初めて恵令奈先生の言葉に腹を立てた。
すると恵令奈先生が
「世の中にはね、朝日ちゃんよりずっと苦しい環境で頑張っている人がいるんだ!そんなことも分からないの?」
と私を叱りつけた。
そのあとずっと黙ってしまった私に、
「ゴメンね。キツいことを言って…。でも、これだけは約束して欲しい。
この学園ではまだまだ、あなたを必要としている人がいる。」
「朝日は一日の始まりをみんなのために照らす太陽なんだよ。」
「朝日がいるからみんなは一日を精一杯、頑張れるんだよ。」
「だから、朝日ちゃんは学園のみんなを照らして導いてあげてね。」
「先生との約束よ?守ってくれる?」
(ごめんなさい、先生。私が間違っていたよ。先生がいなくても頑張る!)
「はい!先生。まかせてください!」
その言葉を聞いた、恵令奈先生は私の頭を撫でながら、
最高の微笑みを見せて笑ってくれた。
恵令奈先生は私の事を信じてくれている。期待に答えるんだ!
その日、以来、
野々宮 朝日は精神的に強くなり、学園の中で積極的に動くようになった。
笑顔を絶やさず、十代の若者には無い、少し大人だからできる行動力と母性で子供たちを見守る立派な探偵になっていた。
恵令奈の教育実習が終わる頃には、彼女は一人前の人間になっていた。
「約束、守ってくれてるみたいね。がんばって、朝日ちゃん。」
彼女を見ながらそう呟き、恵令奈は京都へ帰って行った。
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