第20話 友達だからこそ

まさかあの子が、私は信じたく無いが、真実を知る必要があるために彼女を呼び出していた。


「野々宮さん、なにか私に用なの?」瑞希ちゃんが話すので、


「どうして加藤さんにあんな事をしたの?」これが聞きたかった。


すると彼女は見たこと無い表情で

「なんだ、バレたのか…。やっぱりあなたは危険な女、だったね。」

(私に近付いたのは、最初から監視するため?)


「加藤さんがあなたに何をしたの?彼女はただ…。」

 加藤さんの苦しみを分かって欲しくて話そうとすると、


瑞希ちゃんは本音を話してきた。

「私はなにもかも持っているあの女が憎かった。絵の才能も優秀な成績でみんなから慕われている所も、全部!」

「私は親になんて言われてると思う?お前は芸術の才能の無い、姉とは大違いだな、って。」


 私はそれを聞き、(彼女なりに苦しんでいたのは分かるでも!)


「だとしても、加藤さんには何の罪も無いはずよ?自分が苦しいからって人に嫉妬や妬みをぶつけていいわけない!」


「あなたには分からない!だってあなたは転入して早々、みんなの信頼を勝ち取って、いい思いばかりしているじゃない!」

 彼女はまったく自分の非を認めない。


「でも、あの女も嘘をついて罪から逃れたわ。あの女と私は一緒だよ。」

 瑞希ちゃんは加藤さんと同じだと言い張る。


それに私は、

「違うよ!だって、加藤さんは今ごろ、京都の警察に事情をすべて話して罪を償うつもりだよ?そして、亡くなった先生に謝りに行ったはずだよ。」


「次は瑞希ちゃんが悪いこと全部、話して認める番だよ?」


彼女の表情が曇った。


私は続けた。

「失われた命は戻って来ない。故意であっても、事故であっても…。」

「嘘をつきっぱなしは苦しいよ?残るのは虚しさだけだよ?それでもこのままで過ごすつもりなの?」


「私は、私は、」ここからは彼女の善意を信じるしかない。


「私は瑞希ちゃんが嘘つきやどんな悪人だったとしても、大切な友達だと思っているよ。だからこそ、信じているよ?」


 彼女からは何の言葉も返ってこなかった。


「私から言えるのは、ここまでだから、あとは責任の取り方を自分で決めるといいよ。じゃあね、瑞希ちゃん。」

 (上手く言えなくてゴメンね、瑞希ちゃん…。)



私は、今までの会話をすべて黙って聞いていた慶介くんに、

「ごめん、慶介くん。肩を借りるね。」


「辛かったね、朝日さん。泣きたいときは泣いた方がいい。」


 慶介くんの肩で涙が止まらなくなり、いつまでも泣き続けた。

(ごめんね、慶介くん…誰も助けられない、情けない大人で。)

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