第15話 美術科のある事件
恵令奈先生と別れた私は校庭で真菜ちゃんを発見して声を掛けた。
「真菜ちゃん、おはよう。」
「おはよう、朝日。あなたの変な彼氏、朝からおかしかったわよ。俺は猛烈に燃えている。って叫んでた。」(…はぁ?)
(ちょっと~!慶介くん!学園に入ったら普通にしてよ!私まで変な彼氏がいるあぶない奴って思われるじゃん!)
「どうしたんだろね~。教育実習の先生に挨拶したら、テンション上がっちゃったみたいなんだ~。」
(ごめん、恵令奈先生。先生のせいにしちゃった…。)
「ふ~ん。男はそんなもんでしょ。年上の魅力にやられたんだね。」
真菜ちゃんは慶介くんの事にあんまり興味なさそう。
「あははは、そうみたいだね~。」
(全部!社長のせいだよ!慶介くんが壊れたじゃん!)
リミッターが外れた慶介くん。学園の中でも奇行に走っているらしい。
いったい社長は彼に何したんだろう。これはさすがに抗議しないと。
教室に入ると慶介くんが恵令奈先生の事を熱く語っていた。
(慶介くん。悪目立ちしてるよ。クラスの女子は引いてるよ?見て。)
「恵令奈先生を見た時に俺はこんな素敵な人がいるのかって思ったんだ!」
(慶介くん。一人称が俺になっているよ。)
「マジかよ!慶介!俺も早く会いてよ~。」
クラスの男子が恵令奈先生をネタに死ぬほど盛り上がっている。
「野々宮さん。慶介くん、堂々と浮気宣言してるよ?いいの?」
クラスの女の子にそう声を掛けられたが、
「アハハハ~。はぁ~。」私はため息しか出なかった。
その後、世界史の授業の時にうちのクラスにも恵令奈先生が来ていた。
少しざわついたのだが、長坂先生が、
「お前ら~教育実習の若い女性の先生が来たからって騒ぐなよ。ちゃんと授業を聞けよ~。」軽く注意していた。
恐らく、恵令奈先生は人を魅了する素敵な人なんだろうな。
(同じ年齢で同じような職業なのにこの経験値の差はなんでだろう。)
恵令奈先生を見るたびにへこんでいる。
恵令奈先生は、
「前を見て勉強しないとダメだよ?」って叱っていた。
注意された男子は恵令奈先生を見てメロメロになっていた。
(恵令奈先生。大人のモテるフェロモン出しすぎだよ。)
お昼の時間が来たので、校庭で恵令奈先生と待ち合わせていたので向かった。
校庭に着いたときに恵令奈先生はもう到着していたので、
「恵令奈先生。お待たせしました。」と言うと、
「大丈夫だよ、今、来たところだから。」
(お~大人の振る舞いだ。)
そして恵令奈先生がなぜ来たのかを話してくれた。
「実はこの学園の美術の須藤先生が課外実習の時に事故死したらしいの。その事故にね、不審な点があったらしい。それで依頼を受けた私は京都からここに来たと言うわけ。」(大きい事件だったんだ。私の転入前の事件かな?)
「それは初耳です。私は普通科の生徒でこの前、転入したばかりだったからまったく知りませんでした。」そう私は答えた。
「誰か、詳しい人を知らない?」恵令奈先生が聞いてきたので、
私は、「友達が美術科で情報通だから、聞いてみますね。」と答えた
あとで真菜ちゃんに聞こう。
そのあと、
「結果は、会社の事務所で話し合うことにしましょうか。」
と恵令奈先生が言うので、一旦解散してそれぞれ、探りを入れる事にした。
真菜ちゃん、昼って事はあそこかな?
私は美術倉庫の部屋に向かった。
暗くてジメジメしてるのに彼女はなんでこの部屋が好きなんだろ。
「真菜ちゃん、いる~。」私が言うと、
「あら、朝日。何か用なの?」やっぱりいた。
「課外実習で前の美術の先生が亡くなったって本当?」
(どことなく怪しまれないように聞かないと。)
「ああ、その事…。泊まっていた施設の近くで転落事故が起きたの。京都は伝統と文化の町だからクラス全員で行ってたけど、大騒ぎだったわ。」
「自殺はあり得ないし、足を踏み外した転落事故で話は済んだはずだけど、それがどうしたの?」彼女はそう話してくれた。
「あはは。この間、言ってたじゃん。クラスの子がうわさが好きって。例えばその先生が誰かと付き合っていたとか、話してたらうわさになるよね。」
私は女子が言っていそうな事を何となく話してみる。
「そう言えば、あの時も加藤さんが須藤先生と付き合っているという、うわさがあったわね。でも、加藤さんは他の男子とうわさがあったから、みんな気にもしてなかったわ。」
(また、加藤さんが出てきたね。実際はどんな子なんだろう。)
「真菜ちゃん、いつもありがとう。」
「いいのよ。私は興味ないから。」彼女は私を疑う素振りも無い。
「授業、ちゃんと出なよ。」私はサボり魔の彼女を注意する。
「分かってるわ、サボったら朝日がしつこくしてくるから…。」
(私は委員長みたいな事をしないよ。)
そんな事を言いながら、真菜ちゃんに挨拶したあと、教室に戻った。
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