第11話 メンタルケアは保健室で

授業が始まるまでの間、保健室に寄ってみる事にした。

保健室の扉を開けると、アロマ?リラックス効果のあるアロマの香りがした。


「すみません。北野先生はおられますか?」声を掛けた。

(無音…う~ん。留守だな~。)


朝一から保健室に来る人なんていないか…。カーテンの色も場の雰囲気もリラックス効果の高い感じの薄めと濃い目の緑色を使われている。


この学園はストレスを抱える子が多いのかな?


奥の方に行くと、

「ひゃ!」誰かいる。(びっくりしたよ。も~。)

ベットの上に女子生徒が一人座っていたのだ。


「君は?誰なの。」私は尋ねてみた。

「………。」まあ、答えないよね。普通は。


「私は普通科二年の野々宮 朝日って言うの。よろしくね。」


しばらくの沈黙が続いた。

「まあ、最近転入してきたばかりだから。何かあれば訪ねてきてね。何かの役に立てると思うから。」


「じゃあね。授業があるし、私、行くね。バイバイ。」


私は何もせず声を掛けただけで立ち去った。


(だいぶ、心を閉ざしちゃってるし、心配だな~。)

 時間があったらまた来るとしますか。



その後は教室に行き、昼まで授業を受けて昼ごはんの誘いも断り、昼休みにもう一度保健室に行ってみた。


「北野先生、おられますか?」私は朝と同じようにドアを開けながら尋ねた。


「あっ、野々宮さんね。いらっしゃい、どうしたの?」


「朝一番にも来たのですが、先生がいなかったので。」


「ああ、ごめんなさいね。少し席を外していたの。」


「あの~。朝に一人、女子生徒がいませんでしたか?」


「二年の西山さんね。それがどうしたの?」


「いや、話し掛けても反応が無くて心配だな~って思ってもう一回、訪ねて来たんです。彼女は何かあったのですか?」


「あなたはお節介な子ね。一年の時は心を閉ざすような、そんな子じゃなかったんだけど。クラスで何かあったのかもしれないわね。」


そのあと、色々と北野先生に聞いていた。西山 真菜まな芸術科の二年生で瑞希ちゃんと同じクラスみたい。たまに保健室にやって来るらしいのだが、北野先生にも何も語らないらしい。授業の単位の問題で授業には参加しているようだが、それ以外は保健室のベットでぼ~っとしているとの事。


親にも先生にも理由を話さないらしくて学園も対応に困っているそうだ。


「う~ん。気になるな~。なんとか力になれないかな?」


「あんまり突っ込まないようにね。」北野先生に少し忠告された。


「ありがとうございました。では、失礼しますね。」

 私はグイグイ行く事をバレるのが怖いのでそそくさと出ていった。


たぶん、昼休みだけど、教室にはいないよね~。探してみようかな。


校庭に出るとたくさんの生徒たちがお昼を食べている。

(意外と外で食べる人が多いんだ…。)


ここじゃ無さそうだな。美術系の部屋なんかはどうだろう。

工芸、彫刻、絵画、ウェブデザイン…本当に色々ある。平凡な高校生じゃ立ち入らない領域だなぁ~。


屋上か、確か進入禁止エリアだったよね。行ってみようかな。


屋上から3階に降りてきた先に部屋がある。ここは…何部屋?使われて無いみたいだけど、誰かいるかな。


「お邪魔しま~す。」あれ?使われてないのに部屋は綺麗だ。


美術の道具の置き場なのかな…。たくさんの物が置いている。

奥にも行けそうだけど…。


「ひゃ!」暗がりの所に人が座っている。動かないから彫刻かと思ったよ~。


確か、名前は西山さん。

「あの~。こんな所で何しているの?美術科の西山さんだよね?」

 空気のようにたたずんで、こっちを見ない。


「うう~。」私、無視されてる。


「あの~。」私は再度挑戦してみる。


「朝の人ね。私は一人が好きなの。そっとしてもらえる?」(しゃべった!)


「う~ん。それは出来ない相談だなぁ~。」

「なんで?」


「なんでって言われてもな~。」

 任務中で学園の平和を守っています。とは言えないもんな~。


「私に用なの?」(えっ、話を聞いてくれるの?)


「友達になってくれる人を探しているの。」ダメ元で聞いちゃうよ私は。


「あなた、変わり者ね。」

「え~。そんなことないよ。」


「登校中は男子と手を繋いで二人でじゃれてるし。」

(慶介くん。目立ってるのは、ほぼあなたのせいだよ。)


「私はひっそりと過ごしたいの、目立つのは嫌いなの。」


「私も出来れば目立たない方がいいんだけどなぁ。」

(女子高生の制服を着た、24歳のイタイ女性だもん。)


「もう帰ってくれないかな?」


「じゃあ今日一緒に帰ろ。」(諦めないよ、今日の私。)


 話しているとその時、昼休みの終わりのチャイムが鳴った。


「あっ。授業の時間だ!…それじゃ放課後、迎えにいくね。バイバイ。」


 そろそろ戻らないと授業に遅れちゃう。私は返事を聞かず走っていった。


「なんなのよ。あの人。」彼女は台風のように去る私に呆れていた。

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