3章 慣れると大胆に

第10話 おあずけとおさわりの躾

昨日の事で慶介くんは距離を取っていた。


「ん~。朝日さん。朝日さん。」小さな声で私の名前を連呼している。

(引っ付きたいのを必死で我慢しているんだね。)


「慶介くん。」

「はい!」いい返事だね。かなり怖がられてるよ、私。


「おいで。今日は押し倒したりしないから。」


「あっ、朝日さん。大好き~。」慶介くんが飛び付いてきた。


「よしよし、ゴメンね。怖がらせて。」


「やっぱり優しい朝日さんが好き。」ベタベタ引っ付いて離れない。

(我慢してた分、おさわりが激しいな。)


しばらく歩いていると、


「おはよう。野々宮さん。」瑞希ちゃんだ。

「おはよう、瑞希ちゃん。」


「今日も横に変態がいるね。」冷ややかな目で慶介くんを見る。


「慶介くん!」私がアクセントを付けて話すと、

「はい!」


「瑞希ちゃんと話すから、ちょっと大人しくしててね?」

「はい!分かりました。朝日さん。」慶介くんが離れた。


「野々宮さん。なにして、手懐けたの?」慶介くんの反応に驚いている。

「押し倒して、営みを始める。って言ったら大人しくしてくれるの。」


「野々宮さんって過激な所もあるんだね…。」

「好きなくせにキスすら出来ないウブな子なの慶介くんは。」


「モテる女子は彼氏をコントロールするっと。」瑞希ちゃんはメモる。


「何、そのメモ帳。」私が尋ねると


「出来る女、野々宮語録集ですよ。」と答えて見せてきた。

(私、明言残してないよ?)


「まあ、いいや。瑞希ちゃんに聞きたいことがあるの?」

「野々宮さん。な~に?」


「瑞希ちゃんのクラスで保健室に入り浸る子はいるの?」


 瑞希ちゃんはしばらく考えたあと、

「たぶんいるかも?知らない間に居なくなってる子がいるもん。」


「それがどうしたの?」瑞希ちゃんは首をかしげている。

「なんか、そう言う子の役に立ちたくて。」


「野々宮さん!カッコいいよ!それは野々宮さんしか出来ないよ。」

「野々宮語録が増えていくよ。」(瑞希ちゃん、興奮してるな~。)


しばらくすると後ろから小さな声で、

「ん~。朝日さん。朝日さん。」ああ、慶介くんの禁断症状が出ている。


「もういいよ。慶介くん。おいで。」私のおあずけ解除の言葉のあと、

「朝日さん!好き~。」再び、くっついてきた。


その行動にドン引きの瑞希ちゃんが、


「野々宮さん、コイツ、病気なの?」

(コイツ…。慶介くんはもう、名前で呼ばれる事はないね。)


「私へのおさわり無しでは生きられない病気みたい。」と話した。


「野々宮さん。警察に相談した方がいいよ。絶対。」スゴく心配されてる。


「学園内では我慢しているんだから。多めに見てあげて。」

(たぶん、我慢させ過ぎると慶介くんは色んな意味で壊れるよ。)


そのまま三人で学園に着いた。


学園内に入るといつも通り、

「じゃあ、朝日さん。教室で。」慶介くんは普通に戻り、行ってしまった。


慶介くんの変わり身をみて、ぽか~んとしながら瑞希ちゃんは


「野々宮さん。アイツは、精神科行きだな。」と言っていた。

(うん。そうだね。)と私は心で呟いていた。



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