第8話 順調な学園生活
今朝の告白返しが評判を呼んでいた。
(確かに私が17歳の頃だったらあんな返し方をせず、相手を傷付けたかも。)
教室に入るとあっという間にクラスの女子生徒に囲まれてしまった。
「野々宮さん。聞いたよ。男子に告白されて、断ったのに相手を喜ばせたって。」クラスの話したこと無い女の子話しかけられた。
「スゴいな~、美人で大人びているし、優しいなんて完璧じゃん。」
また違う女の子が話しかけてくる。
「でも、断ったし、相手に悪いことしちゃったかなって…。」
「振った相手の心配するなんて、いい人なんだね、野々宮さんは。」
今の私に彼女たちは何を言っても肯定してくる。
複数の女子生徒からお昼ごはんのお誘いを受けたのでいいよと答えた。
(よし、この機会に仲良くなって調査を進めよう。)
授業の間の時間に慶介くんが、
「朝日さん、大丈夫?少し目立ち過ぎかも。」慶介くんが話しかけてきた。
「やっぱりやり過ぎかな?慶介くん。」少し上手く行き過ぎだもんね。
「順調なのはいい事なんだけど、そのうちアンチ朝日さんの人が出てくるから、その時は素性がバレないように気を付けてね。」
(やっぱりちゃんとしてるこの子は、言われた通りに気を付けよう。)
お昼の時間になり、
一つの女子グループと一緒にご飯を食べる事になった。
「朝日ちゃんはどこから今は通っているの?」やはり色々と聞いてくるよね。
「お姉ちゃんの家にいるんだ。好きに使っていいよって言われているの。」
「そのお姉ちゃんはどこにいるの?」ん?私は~。どうしよう。
「仕事を辞めて逆にアメリカの私の家に行ったの。だから今はいないよ。」
(これなら会いたいとか言われても大丈夫だよね。)
「ふ~ん。アメリカで仕事するのかな?」段々、嘘が増えていくよ~。
「分かんないな~長いこと会っていなかったし…。」
(家族の事はごまかそう。やり過ごそう。)
一人の女の子から、
「複雑な家庭なんだ~。」と少し嘘っぽい話をした私に言った。
(確かに設定が強引だったから、変だよね。)
「でも、この学園の人たち変わった子ばかりだから。」
(おっ。これは有力情報かな?)
「例えばどんな?」(調査のチャンスだよ。私。)
「うちの学園は自由な校風で留学は勿論、芸術や音楽の分野に強くて幅が広いから、親はお金持ちが多いの。普通科クラスの私たちはそんなこと無いんだけどね。」
それから、色々な事をそれとなく聞いていった。
このクラスは普通科で一般家庭の人が多い。それとは別に音楽科や美術科が存在する。そこの生徒たちは少し特殊な家庭が多くてその分野の企業のご子息、ご息女や芸術家や音楽家の子供などがいるらしい。派手な生活をしている人もいると言っていた。
う~ん。社長。事前に教えてくれる情報が足りないよ。初耳案件ばかりだよ?
わざと教えずに能力があるか、採用して使い物になるかを試しているのかな?
「あれ?若林 瑞希ちゃんって何科なんだろう?」私が呟いていると、
「若林さんなら有名な美術家の娘さんだよ?」私の呟きを拾ってくれた。
それは初耳だ。そう言えば慶介くんに邪魔されて彼女の事をあまり聞いていなかったよ。彼女もモテる秘訣とか、恋愛がらみの事ばっかりだったし。
連絡先を聞いたから詳しく聞いてみようかな…。
科が違うから授業スケジュールが違うし、会うとなると放課後になるよな~。
(イチャイチャモードの慶介くん…。調査の邪魔だな。)
慶介くんの方を見ると楽しそうに他の男子たちとご飯を食べていた。
学園にいる慶介くんは必要が無いとき以外は、私の事を見ても来ない…。
まるで甘えたり焦らしたりする恋愛テクを駆使する男の子のようだ。
(私はあの慶介くんでいいのに、なんで社長はあんなことをするんだろう。)
私の近くには、身内にも、周りにも、隠し事があるというわけか…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます