第7話 手紙を貰った時の対処方法

私に友達ができた。二年生の若林瑞希ちゃん。


あの子は慶介くんの見た目が好きだったのだが、ストーカー気質の慶介くんに幻滅して、私に同情したと同時にイケメンを口説き落とした手腕を高く評価したらしく、かなり尊敬の眼差しで私を見てくるようになった。


「朝日さん。今日も可愛すぎだよ。好き。」


横で甘えまくってくる慶介くんを見ながら、

(登校中はかなりベタベタしてくるけど、学園の中では正常なんだよね。慶介くん。絶対、催眠術を掛けられてるよね。これ。)


「慶介くん、キスしよっか?」私が仕掛けると、


「えっ。うん。朝日さんがしたいならいいよ。」

(私が甘える感じで近付くと反応が薄かったりするし、傷付くんだよね。)


催眠状態の登校中はハグ以上はしないラブラブカップルと言う設定みたい。


嫌われてはいないんだけど、男女の深い仲になるほど好きではない関係。


優しい慶介くんにこんなことをする社長が嫌いになりそうだ。


学園の中に入ると、

「それじゃ、また、教室で。」慶介くんは普通に教室に行く。

(学園内っていう切り替えのスイッチがあるのかな。)


私はまっすぐに教室に向かわず、校庭の周りを調べていた。

(昨日はうろうろしなかったから学園の地理ぐらい覚えないと。)


「綺麗な校庭みたいね。」私は花壇の花を愛でていると、


「そこの君。」誰かに呼び止められた。

後ろを振り向くと、白衣を着た人がいた。


「養護教諭の方ですね。こんにちは。」


「こんな所で何してるの?」彼女が尋ねてきたので、


「昨日からこの学園に転入してきた。野々宮 朝日と言います。」


「ああ、あなたが。」

「私は保健室で養護教諭をしている北野です。よろしくね。」


「はい。よろしくお願いします。」


「本当に大人びているわね。うわさ通りの子ね。」


「うわさ?私は有名人なんですか?」


「男の子はみんな、あなたの話をしているわ。」

(みんな話し掛けて来るもの。その話をしているのかな?)


「その影響で女子生徒に避けられてますね。たぶん。」


「辛くない?女の子の友達がたくさん欲しいでしょ?」

 北野先生は心配してくれている。


「外の世界の方が辛いことが多いはずですから、気にしないので心配なさらないでください。」とりあえず、安心させておこう。


「本当に大丈夫?なんだか学生らしくない発言だけど…。」

(ヤバい、バレる。この年の女の子ってどんな話をするんだろう。)


話を反らそうかな、

「この学園にはいじめみたいなものは無いんですか?」


北野先生はしばらく考えたあと、

「無いと言えば嘘になると思う。今はSNSで誹謗中傷する人ばかりだから一見、平穏そうに見えるだけでしょうね。」


「実際にメンタル不調を訴えて保健室に生徒は来るわけだし、理由を聞いてもはぐらかすから…。」


(やはり、女子グループのSNSを閲覧できるようにしないとダメみたいね。そのためには仲間になる、そのきっかけを作らないと。)


(保健室にいる孤立している子にも話を聞いてみようかしら。)


「北野先生、貴重なご意見、ありがとうございました。そろそろ授業が始まりますので失礼します。」


少し驚いた表情をしたが、

「ええ、何かあれば、いつでも保健室に来てね。」

 と北野先生が言ってくれたので、軽く会釈して教室に向かった。


すでに何かしらの問題を抱えている生徒に話を聞くために保健室に行く。

よし、一つの目的ができたぞ。



思考していたときに、

「野々宮さん!」男子に声を掛けられた。


見たことない知らない子だけど、

「あれ?あなたは…。」


「俺は二年の白井って言います。」


「その白井くんが私になにか用かしら?」


「これ、読んでください!」手紙を出してきた…。ラブレター?

(今までの人生でこんなの貰ったこと無いよ~。どうしよう?)


「白井くん。」

「はい。」白井くんはかなり緊張している。


「人の雰囲気や見た目で私を好きになってくれるのは嬉しい。でもね。こう言う事はもっと相手を知ってから行う方がいいよ?」


「いつでも話し掛けてくれて構わないから、もう少しお互いの事を分かり合ってそれからにしよ?…ね?」


そう言い、私は彼に優しくそっと手紙を返した。

(若い子は見境が付かないからしっかり教えてあげないと。)


「はい。ありがとうございました。」彼は嬉しそうに去っていった。

(よし、満足している…正解の対応だったはず。)


「神対応だ。」それを見ていた数人の男子が呟いている。

「野々宮さん、カッコいい。」近くにいた女子生徒も感動している。


「なるほど、モテる女子はそう対応するんだね…。野々宮さん。」いつの間にか瑞希ちゃんもいた。


すっかり周囲の的になった私は、

「あはは。」(大人な対応をやり過ぎた…。)と反省していた。

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