第6話 慶介くんはダメ男

放課後になって、瑞希ちゃんが私の所にやって来た。


「野々宮さん。待った?」

「瑞希ちゃん。大丈夫だよ。さっ、帰ろっか?」


近くに慶介くんがいないのに気付いて瑞希ちゃんは、


「慶介くんを放っておいていいの?」と尋ねてくる。

「そのうち私を探しに来るから、そしたら、慶介くんの本性が分かるよ?」


「あっ、うん。」彼女はまだ慶介くんに未練がありそう。

(慶介くんゴメンね。この子にダメ男っぷり見せてね。)


しばらく恋愛トークを話しながら帰っていると、


「お~い、朝日さ~ん。」

(来たな慶介くん!さあ、瑞希ちゃんを失望させてくれ。)


「なんで僕を放って帰っちゃうの?デートしてくれないの?」


「慶介くん。今、私は瑞希ちゃんと帰っているの。」


「こんにちは。慶介くん。」瑞希ちゃんは恥ずかしそうに挨拶する。


「ああ、こんにちは、瑞希さんだね。よろしく。」

(イケメンは罪だよね。さりげなく女の子を妄想の世界に連れ込むから。)


「それより、朝日さん。デート行かないの?僕は朝日さんが好きなのに。」


「今日は瑞希ちゃんと話したいから。ゴメンね?慶介くん。」

(さあ、慶介くん。ダメ男の発言をよろしく!)


慶介は真剣な顔で、

「嫌だよ。朝日さんは僕のモノだ。」(それストーカーだよ、慶介くん。)


「あの~。野々宮さん。」瑞希ちゃんが、


「慶介くんって本当はキモいんですね。」

(瑞希ちゃん…。ほぼ正解だけど、本人は聞いたら傷付くよ。)


「瑞希さん。僕はキモくない。ただ、朝日さんの恋人で好きなだけだ。」

(慶介くん。そこまでのキモさ…私は頼んでいないよ?)


キモい発言を繰り返す慶介くんを見て、瑞希ちゃんが私に、


「野々宮さんってとてもイイ人だったんですね。しつこいストーカーに付きまとわれているのに優しく接しているなんて。」

(慶介くんのおかげで私の評価が爆上がりしそうだよ。)


「瑞希さん。朝日さんの良さが分かるなんて、君とはなかよくなれそうだ。よろしく。」慶介くん…。君はしゃべる度に評価が下がるよ。


瑞希ちゃんは慶介くんに


「まあ、イケメンと友達ならそれで評価になるからいいっか。」

(男女の変な友情が生まれた…。)


私に対しての瑞希ちゃんの見る目は変わったみたいだ。


「なるほど、野々宮さんみたいに優しくて心を広く持てば、モテる女子になれるんですね。勉強になるな~。」


「だろ~。朝日さんは優しくて可愛いんだよ。」


(私の慶介くんストーカー瑞希ちゃんファンが私の事を話して仲良くなったよ。)


結果オーライ?



事務所に戻った私たちは社長に報告していた。

「ところでどうだったの久しぶりの学校は。」社長に聞かれたので、


「男子にモテ過ぎて女子に嫌われました。」と一言。


「そこそこの見た目の転入生で大人びている。世の男子高校生が一番食いつく女子だからね。朝日ちゃん。」

(そこそこの見た目って、相変わらず失礼な人だ。)


社長はさらに失礼な発言を繰り返す。

「容易に口説き落とせそうな感じもモテる秘訣なのかな?」


イラってした私は、

「いい加減にしないと侑香里さんにセクハラで言い付けますからね。」

 と言うと、


「ごめんごめん。で初日の収穫は?」社長の顔付きが変わった。


「一人の女の子とコンタクトを取って女子生徒のグループに入れてもらおうと思います。今は交流もいじめもスマホのSNSで広がる時代なので。」


「観点は良いと思うよ。君が思うとおりに行動してかまわないから、引き続き学園の調査をよろしく頼むよ。」(ちゃんと真面目にできるんだ社長。)


「はい。分かりました。」


「慶介の方は?」次は慶介くんの調査を聞くみたいだ。


「はい。僕は男子高校生を中心に調査をしていました。どうやら学園生活の中では問題は無いようですが、禁止されているバイトを行う人がいるみたいです。仲間同士と言うよりは個人でそれを行っているみたいなので、見つけ次第学園に報告して対処する予定です。」


(だから聞き込みをしたりして、教室にほとんどいなかったんだ…。)


「慶介。学園への報告は朝日ちゃんと相談してから決めてくれ。お前は朝日ちゃんよりも判断能力が低い。頼りなる恋人パートナーの力を借りるんだ。」

(私の事を買いかぶり過ぎだよ~、社長~。)


「恋人…。朝日さん、かわいいから大好き。」

(あれ?慶介くんにまた、変なスイッチが入ったよ。)


「朝日さん。好きだからデートしよ?」慶介くんがくっついてきた。


今ので分かった。

「社長、慶介くんが豹変するのはあなたのせいですね?」


「慶介くんは社長の言葉で明らかに人格を崩壊させている。慶介くんが私に近づいて来る時、この子に何かしてますね?」核心を突いてみた。


「何の事かな?ははは、分からないよ~。」あっ、誤魔化したよ。

(嘘だ。言葉で催眠みたいな状態にしているとしか思えない。)


「朝日さん。かわいい。好き。大好き。」人目を気にせずイチャついてくる。

(目付きもおかしいし、絶対におかしいもん。今の慶介くん。)

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