第5話 イケメンの彼女は辛い立場
それからの私はたくさんの男子生徒たちには声を掛けられたが、
イマイチ女子生徒たちとはコミュニケーションが取れないでいた。
その理由を知りたくて近くの男の子に聞いてみた。
「それはあれだよ。野々宮さんが慶介の彼女だからだよ。」
と慶介くんの友人は答えてくれた。
慶介くんは女子生徒から絶大な人気があった。
それで突然、彼の恋人が転入してきた。
(イケメンの彼女は女子生徒にとって敵だと言うことなのかな?)
(もしかして、私って学園生活初日からピンチ…。)
あと、気づいたのは、慶介くんは学校の中では私にベタベタしてこないのだ。
周りに気を使っているのか、探偵業を優先しているのか、授業の時以外は教室にいなかったりする。
(女の子達からの情報が欲しいな。話し掛けても少し距離を置かれるし、どうしようかな…。う~ん困ったな。)
少し歩きながら考えようかな。私は教室を出て、近くの周辺を見ていた。
この学園はあまり荒れた感じはしないな。なんか不良高校生みたいな人もいないし、髪の色もあまり派手な女子はいない。
生徒の不満が目に見えない所が、逆に心配かも…。
いじめとか、あるのかな?
今の私、いじめられる側になりそうな立場だからな~。
窓から外を見ていたら、後ろから声を掛けられた。
「野々宮さんってあなた?」おや?クラスの女子では無いなこの子は。
「はい。私です。それがどうかなさいましたか?」
その女子生徒は、
「男子から美女って聞いたけど普通の平凡な子じゃない。」って言ってきた。
(おやっ?これは喧嘩を売られている…。)
やった~話し掛けてくれたよ~。
「あなたの名前は何て言うの?」初めて絡まれて興奮する私。
「はぁ?なんであなたなんかに言わないといけないの?」
(そんなこと言わずに仲良くしようよ~。)
「その怖いもの知らずの無鉄砲な感じ、カワイイね、あなた。」
とにかく話し掛けてくれたのが嬉しい、朝日ちゃん。
「カワイイってバカにしてんの?その反応、何?キモいよ?」
(それだよ。もっとグイグイ来てください。)
「友達になろうよ?私は好きだよあなたみたいな人。」私はとにかく押す。
「その余裕マジでムカつくわ~。ホントなんなのあんた。」
若い子相手にこんなに言い負かせるなんて、年齢の経験値ってスゴいな。
「好きな人いるの?相談乗るよ?」興奮中のため、グイグイ行くよ。私は。
「慶介くんもなんでこんな女が好きなのよ。」
(こんな若い子に嫉妬されてる。カワイイよ~。この子。)
「慶介くんが好きなの?慶介くんと仲良くなる方法、教えるよ?」
「本当に?…でもあなたは彼女じゃないの?」
(よし!食いついたよ。)
「あれは彼が勝手に言っているだけ、だって私と慶介くんはこの前、出会ったばかりだから…。」(これは本当の話だよ?)
「へぇ~。あんなカッコいい人を一瞬で好きにさせたんだ~。」
「ねっ?コツを知りたくない?」まだまだ攻める私。
「うん。知りたい。」(段々と従順になってきたよ。この子。)
「じゃあ、友達になろ?」
「あっ。うん。私、若林 瑞希って言うの。」(瑞希ちゃん。カワイイ。)
「瑞希ちゃんね。友達になってくれて嬉しいよ。」
「うん。嫌なこと言ってゴメンね。野々宮さん。」
「今日、一緒に帰ろ?男の子を振り向かせる方法。色々教えてあげるから。」
「ホント?でも私、野々宮さんみたいに美人じゃないし…。」
(こんな可愛い容姿でも悩みがあるんだ…。)
「私はモテるメイクをしているだけ。瑞希ちゃんの顔を大人な雰囲気にしたら、私なんか敵わないよ。」
「本当に?男の子と話せるようになる?」(可愛い過ぎだよ、瑞希ちゃん。)
「本当。だから、慶介くんみたいな見た目だけの子を好きになっちゃダメよ。ダメ女になって一生暮らして行くことになるよ?」
(うっ。ダメ女だったから、少し自虐になってしまう。)
でも、
(慶介くんが好きって言うのは瑞希ちゃんの中で消しとかないと…。)
「そうなんだ…。慶介くんってダメ男なんだ…。」
(あっ、かなり、ガッカリしてる。)
「そうだよ。慶介くんは初対面の私に好きっていきなりベタベタしてくる男の子なんだから。もしかしたら、体目的だったりするかもよ。」
「男の子って裏の顔があるんだ…。」
(瑞希ちゃん。ゴメンね。あなたの中での慶介くんを崩してしまって。)
「じゃあ、瑞希ちゃん。放課後一緒に帰る、約束だよ。」
「うん。野々宮さん、またね。」私は手を振って瑞希ちゃんとお別れした。
(よし。友達を一人、ゲットしたよ私。)
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