第3話 元OLの私、来週から24歳のJKになる
私は事務所に帰ったあと、社長を問い詰めた。
「そうだったかな?ちゃんと伝えたと思うのだが。」すっとぼける社長。
「社長。野々宮さんの手続き、完了しました。」侑香里さんは仕事が早い。
「これで君は来週から10か月間は野々宮 日向の妹で、野々宮 朝日17歳の女子高校生だよ。」
その言葉に、
「社長!私は採用されたんですよね。どうして10か月も学生をしないといけないんですか!」私はとにかく問い詰める。
騙した事を悪ぶるそぶりもなく、
「大丈夫だよ。見合う給料はちゃんと支払うし、朝日ちゃんは10か月間あの学園の事件を未然に防ぎ、見守るのが、うちの仕事だよ。」
さらに話を続けて、
「それに今さら辞められないよ?10か月間は。もし、辞めたら違約金が発生するから…。」
さっと、契約書を見せ付けてくる。悪質過ぎるよ。社長~。
「確かに慌てて読まずにサインしちゃったけど…。ただの悪質な会社だよ。」
就職先が決まった安心感で流れに任せてサインをしてしまった事を、今は後悔している。
私が頭を抱えて悩んでいると、
「朝日さん。デートしようよ~。」慶介くんが甘えてくる。
「慶介くん、今は大人の話し合い中なの。あっちで侑香里さんに相手をしてもらって来て。」それどころじゃない私は軽くあしらう。
「え~。侑香里さん怖いもん。」
(あっ!それは言わない方が…。)
「慶介くん。ちょっとこっちに来なさい。」
侑香里さんが静かに怒っていらっしゃる。
慶介くんは侑香里さんに連れて行かれた。たぶん、叱られると思う。
(あとで助けてあげよう…。)それより、
「社長!もう隠していることは無いですね?」念のため、問い詰める。
「最初から何も隠して無いよ?」さっきからずっとしらばっくれてる。
見た目だけで採用の理由はこれだったのか。完全に騙された。
学園生活…今の若い子達には付いていけないよ~。私は。
今回の一番の疑問点であることを聞く。
「ところで、社長。なんで慶介くんと私が恋人って事になってるんですか?」
「慶介は未成年者だから、大人の行使できる権限を上手く使えない場合がある。それにアイツは優秀だが、何かの設定を与えてやらないと力を出せない。そのための恋人設定だよ。」
慶介くんは本当に子供だもんな。もしかすると精神年齢はそれ以下かもしれない。
「朝日ちゃんは普通に恋人として接して上げて欲しい。二人の間だったら、デートでもキスでもそれ以上でも何をしても構わないよ。」
「慶介なら、同級生の未成年者から君を守る盾にもなってくれるだろう。」
と社長は言い残して、仕事があるからと社長室へ戻っていった。
契約書の件もあるし、給料が出るなら、黙って従おう。不安だけど…。
部屋を出ると叱られたであろう、慶介くんがへこんでいた。
「慶介くん…。本音を言うことは悪いことじゃ無いけど、もう少し相手の立場を考えて言葉を選ばないとダメだよ。」優しく諭す。
「朝日さんは優しいね。」慶介くんは今にも泣きそうだ。
「慶介くん。男の子なんだから一個の失敗で泣いちゃダメだよ。これからいろんな事を知って学んでいけばいいんだから。」頭を撫でてあげる。
「朝日さん。やっぱり大好き。」抱きついてくる。
(自分の子供ができたらこう言う風に色々と一から教えていかないとダメなんだよね。きっと。)
これは恋人と言うより、母親に近いな。
その姿を見ていた社長と侑香里さんは、
「社長。あの二人はとても相性がいいみたいですね。」
「俺は人の見る目はあるんだよ。」
「ふふっ、そうでしたね、見た目だけで選んだって言ってごめんなさいね。」
「分かってくれればいいんだよ、俺は。」
「慶介くん。じゃそろそろ私は帰るね。」私は自分の家に帰ろうとすると、
「朝日さんの家に行きたい。」私の家に泊まるって事?
(……これはどういう対処が正解なのかな?)
「ダメだよ。ちゃん家に帰りなさい。」
「恋人なのに?」(だから、その眼差しは止めて。)
「帰りなさい。明日も会ってあげるから。」
「本当に?」
「本当だから、ちゃんと帰りなさい。」
「分かった。また明日。」慶介くんはちょっと残念そうに帰っていった。
私も帰ろう、
「社長、侑香里さん。今日は失礼しますね。」
「また明日ね。お疲れさま~。」
二人に挨拶して私は自宅に向かった。
来週から大変だな。それに24歳にもなってこの格好はやっぱり恥ずかしいよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます