第2話 名前が日向から朝日になる
探偵は素性がバレるとダメだ。この会社での君の名は日向ではなく
朝日だ。分かったかい?
(社長にコードネームみたいな名前の変更を余儀なくされた。)
なんでこんなことになっちゃったのかな……。
男性に声を掛けられて、付いていったら探偵事務所だった。それから、若く見えると言う理由、見た目だけで採用されて、年下の男の子にベタ惚れされて、
その男の子と一緒に女子高生の制服を着て学校に行く………。
(頭の中の処理がおいつかないよ~。)私はパニック状態だ。
そんな私に
「朝日さん。可愛い。」彼は手を繋ぎながら、かなり密着してくる。
「高倉くんは高校生なんだよね?」とりあえず聞いてみる。
「うん。でも探偵が本業だよ。」(学業は?)
「……年齢を聞いても良いかな?」
「17歳だよ。僕は。」
(いや、未成年だし!若いよ!)
「さっき、私の年齢を聞いたよね。君よりかなり年上なんだよ?」
彼はそんなのお構い無しに、
「でも、僕の恋人なんでしょ?」確かに社長が言ったけど…。
(うっ。そんな眼差しで私を見ないで…。否定できない。)
もうこうなったら気持ちを切り換えて、
「仕事の確認をしても良いかな?」
仕事の内容はまず、外部の担当責任者に会って依頼を受ける。それで身元を偽って潜入する。そして学校で起こるトラブルを二人で解決する。
「分かった。よろしくね、高倉くん。」
「仕事なのでちゃんと、慶介って呼んで欲しいです。」
(そっか。同い年の恋人って設定なんだよね。)
「じゃあ、行こっか、慶介。」
(はっ、恥ずかしいよ~。)私が照れてモジモジしていると、
「朝日さん。大好き!」思いっきりハグをされてしまった。
(若いからかな?スキンシップがスゴいよ~。)
……体、帰るまで持つかな…心配だ。
学校に入り、まずは今回の担当をする方に会うことにした。
「この学園の二年生の学年主任をしています、長坂と言います。」
「あっ、私は野々宮 朝日と申します。」と自己紹介していると、
(長坂さん。私の事を見てるよね。そりゃ、依頼人だから年齢バレてるし。)
「ずっと見たりして失礼しました。成人女性なんですよね?まったく違和感が無くて……。やっぱり探偵さんはスゴいなって。」
(私は今日、雇われたばっかりだけどね…。)
そのあと、依頼の内容を聞いていく。
どうやら最近、二年生の中で不純な交流関係の生徒がいるらしい。まだ事件には発展していないそうだが、放っておくと大変な事になるかもしれないと考えた結果、学園側は事件を未然に防ぎたいらしい。
二年生から密かに聞き出して、その親元の人間を探して対処するもしくは悪質な場合、学園に報告して警察で対処してもらう。が依頼内容らしい。
「以上が依頼内容になります。野々宮さんは来週の始めからアメリカから来た日本人の交換留学生として編入してもらう形を取りますのでよろしくお願いいたします。」
「あの~。アメリカからの、って無理ありませんか?」私は疑問に思った事を口にした。
「探偵事務所の方からすべて通しているから大丈夫だと聞いていますよ。」
(アメリカ?うちの探偵事務所って一体、何なの?)
少しの間のあと、
「他に質問が無ければよろしいですか?」長坂先生が言ったので。
「あっ、大丈夫です。あとは事務所に戻って詳しく聞きますので。」
「じゃあ、これから10か月間、この学園をよろしくお願いしますね。」
といい、長坂先生は部屋を出ていった。
(はぁ~。なんか大変な事を引き受けちゃったな~。)
(ん?10か月って今、言ってたなかった?)
「慶介くん。聞きたいんだけど…。」嫌な予感がしたので聞いてみる。
「どうしたの朝日さん。」彼は先生の前だと普通の態度だ。
「私ってこの依頼が解決したら学生のふりしなくてもいいんだよね?」
「違うよ。これから10か月間は一緒だよ、よろしくね。」
(嘘だー!私に10か月も、10代の若者達に囲まれて暮らせと言うの?)
どうしてこんなことに……。
「説明が終わったから、今日は帰ろうよ。朝日さん。」
(最早、今の私には何も聞こえないし、何も感じない。)
「どうしたの?朝日さん、元気ないよ。ねぇ朝日さ~ん。」
身振り手振りをして彼は私の前で確認をしている。
でも、しばらく私はその場を動くことができなかった…。
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