1章 探偵は経歴詐称ばかり

第1話 彼氏付きの就職先

少し歩いたあと、ビルの中に彼の事務所があった。

「浅野探偵事務所?」探偵?…ってどんな仕事だったっけ?


中に入ると事務所にはとても綺麗な女性が一人。どうやら、パソコンで事務仕事をしているようだった。


入ってきた彼を見るなり、

「社長、どこに行っていたんですか?……その子は?」


彼は、

「ああ、面接の子だよ。今から面接するからお茶、お願い。」と言っていた。


彼女は私の事を一通りみたあと、

「あからさまに若いだけで仕事が出来なさそうな子を拾って来ないでください。見た目からダメダメな感じ出てるじゃないですか?」


いかにも仕事が出来そうなタイプの女性が言ってくる。


うっ。酷い。初対面の女性にダメな感じが出てるって…言われた。

仕事は出来ないから、ほぼ当たってるけど…。


「アイツにはこんな子がちょうど良いんだよ。この子、見た目そこそこの癖にモテなさそうだし。」社長らしき人が言ってくる。


うっ。こっちも酷い。そこそこの癖にモテないって言われた。事務所に入ってすぐだけど、私のメンタルはもう、ボロボロだよ。


「じゃ、そこに座って。」応接室の椅子に座った私へ社長?っぽい人は、

「私は浅野 大和(あさの やまと)って言います。この探偵事務所の社長をやっています。よろしくね。」


「えっと、野々宮 日向です。よろしくお願いいたします。」あっ、条件反射で挨拶してしまった。


ガチャ。扉が開くと、さっきの綺麗な女性が入って来て、

「どうぞ。」お茶を出してくれた。


「彼女は私の妻で。」(へっ?妻…。)


「浅野 侑香里(あさの ゆかり)です。よろしくね。」

 奥さん!こんな綺麗な女性が?年の差はいくつだ?


「まあ、詳しい事は後々にしようか?侑香里。あの子を呼んでおいて。」


「すでに呼んであります。間もなく到着すると思います。社長。」


「素早い対応、いつもありがとう。」できる妻だ、侑香里さんは。


「さあ、話を始めようか。野々宮さんは仕事を探しているでしょう?なのでここで働かないかな?」

(突然のスカウト?私、たぶん役に立たないよ?)


「私。探偵ってよく分からないんですけど…。そんな人を雇っても大丈夫なんですか?」心配なので聞いてみる。


「探偵助手を探していて。成人女性で実年齢より若く見える…。」


私は確かに若く見えるって言われるけど、制服を着ていたら、高校生だねっとかよく言われるし。自慢みたいに聞こえるから人に言わないけど…。


「要するに見た目で面接の対象に選ばれたのですか?」私は少しショックだった。見た目が重視のこの話を聞くと。


「見た目もそうなのだが、個性を出さない感じとか、従順な感じとか、色々と条件に合っていたので、声をかけたんだ。」

内容を聞くと褒められてなくて、都合が良さそうな人としか聞こえない…。


「仕事はどんな事をするんですか?」何をするか。…ぐらいは聞こう。


「うちの探偵とコンビになって依頼をこなすだけだよ。」

「あと本名は隠すこと。君の名は今日からね。」


偽名は使うし、やることは抽象的で分からないよ。やっぱり断ろう…。


断ろうとした、その時に、

「社長。お呼びですか?」


返事と同時に美少年のイケメン高校生が入ってきた。

うわ。顔、綺麗だな、この人。見とれてしまった。


「あっ、紹介するね。彼は高倉 慶介(たかくら けいすけ)。うちの探偵だよ。」(えっ、でも制服着てるから、高校生だよね?)


「高倉です。よろしくお願いします。」

(とても爽やかな挨拶…。カッコいい男の子だな。)


「慶介。彼女は野々宮 朝日さん。今日から君の恋人になる人だよ。」


(えっ!突然、なに言っているの?社長さん!)


その言葉を聞いた彼は私をガン見して、

「朝日さん…。可愛い、好き。」(君もなに言ってるの?)


「気に入ってくれたみたいだね。良かったよ…。」

「じゃあ、野々宮さん。今日から働いてもらうね。よろしく。」

(なんで!勝手に採用されてるし。)


「朝日さん。今からデートに行こ?」突然、引っ付いてきた。

(いや、年下だし、高倉くん?って言えばいいのかな?)


「ちょっと、待って!高倉くん。いきなり何を言ってるの?」


「そうだぞ、慶介。今は勤務中だ。それに依頼がある。」

(いや。社長さん…。フォローの仕方が少し違うよ?)


「依頼人に二人で会ってこい。頼んだぞ。」

(私も含まれているし。)


「分かったよ、社長。」彼は少し残念そうな感じで了承した。

「朝日さん。デートは仕事終わりにしようか?」異常な距離感で迫ってくる。


「いや~。いきなりは困るかな~。」(いきなり、近寄られると困る。)


「うん。そうだよね。当日に突然は失礼だよね。じゃあ、いつにしようか?」

(そう言う問題じゃ無いんだけど…。)


「君たち!遊びじゃ無いんだから仕事をする。さっ、行ってこい!」

(私、何もしてないのに怒られた…。)


応接室を出ると侑香里さんに、

「はい。今回はこれを着て学校に行き、依頼を聞くこと。」


これって高倉くんと同じ高校の女子生徒の制服かな?


そういう問題じゃなくて、

「すみません。私、こう見えても、24歳の成人女性なんですけど…。」

 着たくないよ。そっちの趣味を持った女性って思われるし、


「学生じゃないのは分かってるわ。だから、制服を着て学校に行くの。」

「あと、スマホを貸して、私の連絡先を入れるから。」

 かなり強引に押されてる…。


私はされるがまま、更衣室に連れて行かれ、着替えさせられて、

「あら、メイクも若く見えるようにしたらいけるわね。」

 侑香里さんのおまかせコースで女子高生に仕立てられた。


「OK、慶介くん。どう?」侑香里さんは彼に尋ねている。


「朝日さん、可愛い。やっぱり好き。」彼は私を見てうっとりしている。

(年下にベタ惚れされてる…。)


「じゃあ、お願いね。二人とも。」

侑香里さんに言われたあと、学校に向かうことになった。


(なんか大変な事に巻き込まれちゃったな…。)どうなるんだろ私……。

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