第17話

「やっと傷口が閉じた。あの十三の若造、生意気な真似をしやがって」

 自身の治癒を終えたプラムが、忌々し気に呟く。

 洞窟の奥にある開けた空間。ここがプラムを筆頭とする魔女の住処だ。方々に口を開けた小洞窟があり、魔女達は外に出る際に利用している。

「プラム。私達は四十人しかいない。それでも、あの女は殺すんだね?」

 プラムに次ぐ年長、八百歳のリーンが確認する。

「何を今さら。あの女を殺せば、ジルだって目が覚める」

 女王ローラの片腕、大魔女のジル。今は袂(たもと)を分かっているが、同じ魔女同士。しかもジルは、二千歳。この世界で魔女が復権を目指すには、プラムとてジルの後ろ盾がいる。

「七人の仲間が人間どもに捕まった。あれは大きな痛手だ」

 リーンの次に年長の魔女、アーリーが吐き捨てる。

「アーリー。人間どもに捕まった仲間は必ず……待て!」

 プラムが鋭い声を発するのと同時に、魔女達の瞳が黄色味を帯びる。魔力を練り始めたのだ。

「来る……私達を破壊に……それも四方八方から……人間じゃない?」

「人間どもが、ミサイルかバズーカを放ったのか? けれど、私の感知」

「リーン待て!……これは!」

 プラムが気付いたときには、手遅れだった。小洞窟から二つ、混成部隊の合作である贈り物が届いた。それは球形をしており、赤子の頭部程の大きさ。球形表面は無害のプラスチックだが――ドドーン! 大爆発が起こり、周辺にいた魔女が吹き飛ばされる。

「全員さっさと防衛魔法を張れ! 小洞窟を土魔法で埋めるんだ!」

 プラムが命を発するが、無数にある小洞窟から、次々に球体が現れる。

 ドドーン! ドドーン! 球体は次々と大爆発を起こす。

 球体の中は空洞になっており、仕掛けられたのは、遠隔起爆型のⅭ4プラスチック爆弾。

 渓谷の地理に通じているマギヌンの兵士達が、小洞窟の逆側から放り込んでいる。

「さっさと土魔法で穴を塞げ! 間に合わないやつは凍らせろ!」

 プラムは唇を噛んだ。どの種族でも基本、魔法属性は一つしかない。土属性と水属性の仲間は役に立つが、小洞窟の前に立つ分、被害は大きい。他の属性を持つ魔女は、ただ見ているしかない。

「狡猾な! 十三どもか!」

 プラムが吠えたとき。バアウンッ! と聞き覚えのある銃声がこだまする。

 魔女の一人が両肩から先を無くし、力なく倒れる。

「あの十三の若造か! 今度こそ殺してくれる!」

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