第6話 佐々木さんと押し倒し
「あ、あの、うん……え?」
一瞬納得しかけて、いかんいかんと首を振って尋ねる。
このままだと、佐々木さんは俺のことを押し倒すために家に呼んだド変態になってしまうけどいいのかな?
いや、違う。佐々木さんが誰かを押し倒したくてウズウズしてしまうような特殊性癖の持ち主かもしれない。
うん、そうだ。だから、むやみやたらに変態のレッテルを貼るのは良くない。
まぁ、どちらにせよ変態は変態だけど。
「今日うちに来てもらったのは、これのためなんです。」
佐々木さんに上から見つめられると、彼女の長い髪の毛が垂れて来て、耳にかかったそれが綺麗な弧を作るのがとても綺麗だった。
黒く光を浴びたそれは、妖艶な香りを放ちながら俺の鼻孔をくすぐる(現実逃避
「こ、これ……?」
これとは、俺を押し倒すことなんだろうが……どういうことだ?
俺を押し倒して何をするんだ?
ナニをするのか!?
おいおいちょっと待て、そういうのはお付き合いしてから、デートとか行って手を繋いでハグとキスを済ませてからじゃないのか!?(童○の理想
「はい。私、山田くんに……」
「お、俺に……!?」
勝手に妄想して勝手に興奮している俺を真っ直ぐに見つめながら、佐々木さんが言う。
「前に助けてくれたお礼をしたいんです!!!」
…………what?
Oh? oh. oh ...... I see ! ! !
「あ、あぁ、そういうことね。いや別にいいよ。そんな、大層なことでもないし……ってか、だったら、これいる?」
なるほど、完全に理解した。
【朗報】佐々木さん、変態じゃなかった【悲報】
俺が変に勘違いしてただけだ。佐々木さんは清廉潔白な女の子。ただ、俺の心が薄汚れていただけ。
そんな、放課後にちょっと手伝っただけでここまでしてくれなくていいのにね。
「いや、その、とても嬉しかったですし、お礼……したいので。私にできることならなんでもしますから。」
佐々木さんが瞳に強い意志を宿してこちらを見る。
お礼するだけなら押し倒す必要あった? という俺の問は置いておかれたみたいだが、そんなことはどうでもいい。
なんでもって!!! 今、なんでもって言いましたよねぇ!!!!!?
なんでもって!! その文字通り、ナンデモですよねぇ!!!?
「な、なんでも……?」
心の内の俺が『言質とったりぃ!!』と叫ぶのを抑え込みながら、一応確認のため尋ね返す。
もしかしたら、佐々木さんが『ナンでも作りますか?』と言ったのを聞き間違えた可能性もある。
いや、ない。彼女はいきなりナンを作り出すような不思議ちゃんではない。ここインドじゃないし。CoC○壱でもないし。
「はい、な、なんでも……!」
ゴクリ
彼女が朱に頬を染めながらも、どこか嬉しそうに頷くのを見て、俺は無意識に唾を呑んでしまった。
お、おおおおお、落ち着け、俺……!!
授業中に密かに眺めて『あぁ、今日も可愛いな。マジ癒やし。天使。神。』と、ニヤついていた美少女がなんでも…… ナンデモ! してくれるというからって、そんなに興奮するな!!
お、落ち着けよ。ここは多分、天下分け目の関が原だ。
ここで俺が下心丸出しの答えをすれば、佐々木さんとの関係はここで終わりだろう。
反対に、しっかりと切実に節度を持ったお願いをすれば『なんでもって言ったのに、変なことしてこなかった!!』と、この先も俺たちの関係は続いていく。
つまり、俺が取るべき選択肢は後者!!!
湧き上がってくるメイド服が見たいとか、ニャンニャンしてほしいとか、後ろからおっ○い揉ませてほしいとか、そういう欲望を抜きにして。
どうにかこうにか欲望を理性で押さえつけて、彼女に『じゃあ、手作りのお菓子が食べたいな』とか、そういうことを言うのが正解!! イグザクトリーアンサー!!!
「じゃ、じゃあさ、良ければなんだけど……」
俺はクッキーを頼もうと、佐々木さんの手作りクッキーが食べたいと言おうとして。口を開いて…………。
でも、でも、やっぱり。
俺、男の子だし、推しの女の子だし、可愛いし、なんでもって言ってるし、こんなチャンス二度とないし。
俺、やっぱり、我慢できないよ!!!
だから。だから、これくらいは許してもらえませんか。
「耳かき、してくれない?」
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