第5話 佐々木さんとお家

「お、おじゃまします……!」


 俺はガチガチに緊張しながら、一歩踏み出した。


「私の部屋でいいですよね? ついてきて下さい。」


 慣れた様子でスリッパを出してくれる佐々木さんに頭を下げながら、家へと上がる。


 そう。何を隠そう、俺は今佐々木さんのお家に来ていた。


 駅からしばらく歩き、てっきり駅前でなにかするんだと思ってた俺がどこに行くかと尋ねても、彼女にはぐらかされてしまった。


 そして、そのまま閑静な住宅街を進んでいって、着いたと言われて見上げたのがこのお家でした。


 淡い灰色のとてもきれいな外観。

 きれいに整えられたお庭に、モノクロに統一された玄関。


 俺なんかが上がるのはためらわれるくらいに、素晴らしいお家だ。


 いやでも、初めてのデートがお家デートとは佐々木さんも中々にやるね。


 まず俺たちは付き合っていないし、これがデートなのかというといは置いておいて。


 同級生の女の子の部屋にあがるなんて、昔仲良かった幼なじみを除けば初めてで、とても緊張してしまう。


 佐々木さんについて階段を昇れば、すぐに彼女の部屋についたらしい。


「体を崩して待っていてください」


 佐々木さんはそう言って、階段を下っていってしまった。


 …………さて、


 俺は健全な男子高校生。


 週末、同級生の美少女の部屋で一人。

 そんな絶好のシチュエーションで、指をくわえて見ているだけのはずもなく。


「ちょいと失礼…………」


 そんな軽い声かけとともに手を伸ばして――


 ――――止めた。


 おい、待て俺。何をしている?

 何がちょっと失礼なんだ?


 その伸ばした手で何をする気だ?

 ナニをする気だ!?


 佐々木さんが毎晩寝ているであろうベッドを漁るか?

 それとも佐々木さんが普段着ている衣服が詰まっているでおろうクローゼットを開けるか!?

 はたまた、佐々木さんがいつも座っているであろうカーペットを這いずり回るか!!?


 違うだろ!! お前は理性ある紳士のはずだろ!!


 落ち着け、落ち着くんだ。焦るにはまだ早い。

 焦ってナニかして、過ちを犯してから悔いても遅いんだぞ。


 ほら、一旦深呼吸だ。

 落ち着け、落ち着くんだ。


 俺は一旦自分を落ち着かせようと、深呼吸をする。


 いっぱい空気を吸って〜〜〜吐〜〜く

 空気を吸って〜〜〜吐〜〜く

 もっともっと吸って〜〜〜吐〜〜く


 ウンウン落ち着ついて……って、いられるか!!


 なんかめっっちゃ、良い匂いするんですけど!?


 深呼吸で吸い込んだ空気から香ってくる、甘美な匂い。こ、これは、噂に聞く『女の子の匂い』と言うやつだろうか!!?


 だとしたら、俺はなんて大罪を犯してしまったんだ。


 貴重な女の子の匂いをろくに堪能せずに吸い込んで、その上で自らの汚らしい息で汚すなんて。


 そんなの許されざる大罪。

 死刑だね。しかもスパッとはいかずに、ジリジリと痛みつけての死刑だね。俺氏、死刑!


「お待たせしました〜。紅茶で良かったですか?」


 俺がノコギリ片手に断罪される姿を思い浮かべていると、トレーにカップを載せて佐々木さんが帰ってきた。


「あ、はい。あざす。」


 カップを受け取って、頭を下げる。


 いただきますと小さくつぶやいて一口飲めば、紅茶の優しい香りが抜けていった。


 うん、美味しい。

 あんまりお茶とかにこだわりがないからわからないけど、多分いい茶葉なんだろう。


「そ、それでなんですけど……」


 紅茶の入ったカップを両手で持って、その縁を撫でながら、佐々木さんが口を開いた。


 彼女は少し戸惑うような、覚悟を決めたような。どこか、獲物を狙う狩人のような目をしていた。


「はいよ」



「ベッドに座ってください」



 何を言われるのかと顔を上げた俺に、佐々木さんが告げる。


「え? あぁ、全然大丈夫だよ。」


 カーペットに直に座っているのを気にしてくれたのかもしれないが、ふかふかだし床に座るの別に苦じゃないから大丈夫だ。


 そう思って、やんわりと断ったのだが……。



「座ってください。」



 佐々木さんは目からハイライトを消して微笑みながら、ベッドの方を指差す。


「え、あ、はい」


 その何も言わせないといったような圧に瞬時に屈し、俺はピンクで統一されたキレイなベッドに腰を掛ける。


 うお、やわらけぇ。

 それになんかふわふわしてるし、良い匂いする。


 俺が女の子のベッドに腰掛けるという最高のシチュエーションに興奮と感動していると、佐々木さんはこちらを見て小さく微笑んで――



「では、失礼して。えいっ……!!」



 ――――そんなかわいらしい声を上げて、こちらへと飛び込んできた。


「!!!!?!!!!!?!?」


 俺は脳の処理が追いつかぬ間に、反射的に彼女の肩を受け止め、その勢いに押されてそのまま倒れ込んだ。


 ボフッと、柔らかい音を立てて俺たちの体重をマットレスが受け止めてくれる。


 だから痛みも怪我もないし、問題もないはずだ。


 あるとすれば、彼女を受け止めたその体勢が、傍から見れば、まるで……



「えへへ……押し倒しちゃいましたね。」



 まるで、佐々木さんが俺のことを押し倒しているように見えるところだろうか。








 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


 佐々木さん、なんて大胆なの!!?

 ここからヤンデレの片鱗を見せていきます!


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 こういうお話を書いていきますので、作者フォローの方も良ければお願いします!

 ⇨ https://kakuyomu.jp/users/Ch-n


 では、今後ともよろしくおねがいします!

 どうぞご贔屓に。

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