第16話 地獄のラブレター



 雪ちゃんが杏子と僕の家で暮らすようになって一ヶ月が経ち、僕の胸も制服の上から膨らみが確認出来る程に成長していた。


 体つきも女の子のようになってきて、髪も少し伸ばした。


 自慢じゃないけど……もう僕は、どこから見ても可愛い女の子にしか見えないと思う。

 まぁ……パンツを脱がなければね?


 それから、雪ちゃんと杏子の仲も良好で、僕は新しい特注の布団が届くまで交代で一緒に寝るようにしている。


 新しい布団が来てもベッドの真ん中は固いので、結局はどちらかに偏るとは思うけど……。


 雪ちゃんは、最初は僕が杏子に甘やかされているのを眺めているだけだったけど、一日交代で一緒に寝るようになってからは「杏子ちゃんには負けないよ?」とか言って、……僕を甘やかしてくれるようになった。……甘い雪ちゃんは、とっても優しくて……僕はもう雪ちゃんがいないと駄目になってしまった。


 そして、二人に囲まれた生活は、僕にとってかけがえの無いものになっていた。


 僕は、こんなにも幸せで良いんだろうか?


 

◇◇



 今日は、いつもと同じように学校に通う日だったんだけど……実は、下駄箱の中にラブレターが2通も入っていたんだ。その差出人の相手は男子からだった。



 僕達は3人で暮らしているので、朝も一緒に登校している。


「ん?どうしたの?おたくん」

「雪ちゃん……どうしよう……不幸の手紙かなぁ……?」


 下駄箱に入っていた紙切れは封筒だった。僕の下駄箱に封筒が入っているのなんて不幸の手紙以外は見たことが無かった。


「おたくんそれラブレターじゃない?」

「え?」


 今の僕の下駄箱は2組になっているので、1組の男子の自分に宛てられたものでは無いのは確かなんだけど。僕にラブレター?


「ちょっと見せて?私が中身チェックしてあげるから安心して?」


(最近のおたくんは、私から見ても可愛いと思うし……寄ってくる害虫からは私が守ってあげなくちゃ)


「……うん」


 雪ちゃんの話だとラブレターの相手は2人。呼び出された場所はお昼に校舎裏、放課後に屋上。


 お昼の校舎裏の人は知らない人で……2年3組の上級生らしい。


 放課後に屋上へ呼び出した人は……僕にとっては最悪な名前が書いてあった。


 そこに書かれていたのは……中学の時から僕を虐めていたクラスメイトの白石君だった。



「……行かない方がいいと思う。先輩はともかく、1組の奴は絶対罠だって!」


 雪ちゃんは心配だから行かない方がいいよって言ってくれたけど。……ずっと付き纏われるのも嫌だ。


「行くなら、私も付いていくから!一人では行かない方がいいって、おたるん!」


 杏子はそう言うけど、杏子を危険に晒したくは無い。


「……でも女の子だけで行くのは危険だよ?」


「うーん」



◇◇



 悩んだまま歩いていると教室に着いてしまったので、そのまま教室で杏子と相談していたら……、珍しく男の子に声を掛けられた。


「「「「「話は聞かせてもらった!ここは我ら、おたちゃん親衛隊に任せてもらおうか!」」」」」


 親衛隊と名乗る男の子が5人、僕の前に現れたんだ。


 僕の親衛隊の面々は、体育会系の筋肉達磨もとい、体格の良い頼もしい連中だった。


 

「じゃあ……頼みマッスル?」


「「「「「おうよ!」」」」」


 昼休み、僕は呼び出された校舎裏にやってきた。


「えっと……この辺かな?」


 校舎裏に顔を出すと……巨漢でメガネをかけた太めの男が立っていた。


 え?この人?


「どうも、こんにちわ?」


「き、来てくれて嬉しいんだな?」


「えと、お手紙をくれたのは先輩ですか?」


「そ、そうなんだな?」


 あぁ……苦手だなーこの人。


「ぼ、ボクと突き合って欲しいんだな?」


「ごめんなさい。私付き合ってる人いるんです」


 僕はペコリと頭を下げて、ごめんなさいをした。


 なんかイントネーションが違うような気がしたけど?僕はすぐに断ったよ?


「だったら、せめてこれを持ってて欲しいんだな?」


 ん?これは……コンパクト?


「ありがとう?」


「ここを押してキャノって言うんだな?」


「きゃの?」

 

 僕は言われた通りにしてみた。

 何だろう嫌な感じがしてきたよ?


「これを持って続けて言うんだな?ぱんぷる……」


 魔法ステッキのような物を渡してきたので、僕は先輩の鳩尾に蹴りを叩き込んだ。


「あ、ごめんなさい?痛かった?」


「ぐは!おたちゃんは……天使なんだな?」

 

 先輩はロリコンだった。魔法少女は他でやって欲しい。ステッキは返したよ?


 ……やっぱり男は嫌いだ。


 なんとか昼休みは乗り切る事が出来たけど、問題は放課後だったりする。



◇◇



 ――放課後。



 僕は屋上にやってきた。


 屋上の扉の後ろには杏子と親衛隊が控えていて、逃げ道の確保もバッチリだ。


 そして、僕の視線の先には白石君がいた。


「初めまして、お手紙ありがとう?」


「はぁ!?はじめましてだぁ?俺の顔忘れちまったんかぁ?なぁオタク!」


 こいつ!白石は鬼の形相で僕をなじってきた。


「最近教室に顔ださねぇと思ったら……ギャハハ!オメェ女になってやがんじゃんよぉ!」


「しかも、オメェ!学校一の女と付き合ってるとか……調子に乗ってんじゃねーぞ!コラ!!」


「くっ……」


 このままだとヤバいかも……。


「オタク……オメェ女の子になりてえんだって?確かに似合ってるぜぇ!その制服!脱がしたいくらいになぁ!だったら……俺達が正真正銘!女にしてやんよ!」


 白石は僕に襲い掛かってきた。嫌!犯される!?


「嫌!やめて!」


 あっという間に服が脱がされ、下着が露出してしまった。

 もう駄目かと思った時……。


「「「「「そこまでだ!」」」」

「やめなさい!」


 そこに現れたのは僕の親衛隊と杏子ちゃんだった。……もう遅いよ!?


「誰だ!?」


「我らは、おたちゃん親衛隊!」

「会則その一!おたちゃんは遠くから愛でるべし!」

「「「「愛でるべし!」」」」


「その二!おたちゃんに手を触れるべからず!」

「「「「触れるべからず!」」」」


「その三!おたちゃんを害す者に死を!」

「「「「「害す者に死を!」」」」


「一人も逃すな!全員半殺せ!」


「「「「おおう!!」」」」


「うわ!やめろ!来るな!うわあああああああああああああああああああ!!!!」


 親衛隊の力は凄かった。あっという間に4人いた白石の仲間達を半殺しにしていった。


 ほぼ腹パン一発だったけど。


 あっという間に制圧したよ?


「後の処理は俺たちに任せてくれ。二度と逆らわないように調教しておく」


「うん、ありがとう親衛隊の人達?」

 

 ……結局親衛隊の人の名前知らないや。


 

 ……後日。

 白石君たちはその後、停学処分のあと退学し……お姉になったらしいけど……何があったんだろう?


 あと、助けるのが遅かったのは証拠を押さえるためだとか。もう酷いよ!





 読者様へ


お読みいただきありがとうございます。

いじめっ子の末路でした。

また、甘い路線に戻ります。


もっと続きを読みたいと感じて下さいましたら

☆☆☆、♡を頂けたら嬉しいです。

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