第15話 ずっと貴方のお傍にいさせてください

 


 結局最後まで二人の情事を見せられて、私の心は今オーバーヒート状態なんです。 

 

 でもがんばってご飯は作りましたよ?今日は自信作のハンバーグです。 

 

 さて二人は疲れて寝ているので起こしましょう。


「あの~杏子ちゃん?ご飯が出来ましたよ~」


 耳元で囁くように言うと杏子ちゃんが目を覚ました。


「ゆきよん?ありがとう♡」


 杏子ちゃんが聞きなれない愛称で私を呼んできた。


「え?ゆきよん?」


「あ~あれよ、雪代ゆきよだから、ゆきよん?」


 雪代だからゆきよんって?「おたるだからおたるん」と同じじゃない?


「どうして?」


「ゆきよんと仲良くなったんだから……呼び方も変えようと思ってね?」


「本当に仲良くなったのかなぁ?」


「ほら、私のエッチなところを見せた仲?」


 はい見せられましたよ?たっぷりと。しかも性格も変わるのよこの女。


 学校の時と私と話している時の性格と、おたくんと二人の時の性格にギャップがありすぎなのよ?でも今は、おたくんと2人の時の性格のままみたいね。


「……っ、確かに見せてもらったわ。杏子ちゃんの恥ずかしい姿」


「私はこっちが素の自分なの……学校での自分は作った仮の姿、男を寄せ付けない為の防衛本能っていうの?」


「そう……なんだ」


「私のこの姿を見せたのは……おたるんの他は、ゆきよんだけだよ?」


 悲しそうな顔……こんな顔するんだ杏子ちゃん。


「私には誰にも言えないトラウマがあったの……でもおたるんはその私のトラウマをやっつけてくれた。私のヒーローなんだ」


「おたくんに杏子ちゃんがそんなに思われているなんて……私、知らなかった」


「分かった?私達の愛の絆は深いの。それでもゆきよんは、おたるんが好きでいられる?」


「私がおたくんを好きになったのは幼稚園の頃……もう10年も思い続けた恋だもん諦めるなんて出来ないよ?だから、まだ私は頑張れる!おたくんが好きだから!」


「……その覚悟があるなら安心かしら?でも、おたるんを悲しませたら許さないからね?浮気したら……おたるんは絶望して死んじゃうから。これだけは守って。浮気は許さない。浮気は死刑だから」


「おたるんを一生支える覚悟が無いなら、今すぐ別れて頂戴。おたるんが死んでしまうから」


 怖!でも、その覚悟が無いと……本当におたくんの心はつぶれてしまうんだ。


 私が一生おたくんの支えになってあげないと。いえ、私がおたくんを一生支えるの!



◇◇




「お姉ちゃん?起きて?ご飯できたってよ?」


「ん?ああ、もう出来たの?」


 杏子に甘やかされていた僕は、いつの間にか寝てしまったらしい。杏子に起こされるまで夢を見ていたようだ。雪ちゃんと杏子が仲良く遊んでいる夢。二人はとても仲良くてまるで姉妹のようだった。


「おたくん!今日はおたくんの好きなハンバーグにしました!じゃーん!」


「すごい!これ雪ちゃんが作ったの?」


「褒めて!褒めてぇ♡」


「すごいよ!レストランみたい!雪ちゃん!ずっと一生!僕のご飯作って欲しいくらい」 


「はぅ♡」


(尊い!おたくんが私を求めてくれる!しかも!ずっと一生!ああ♡もう……ずっと付いてくよおたくん♡)


「はい、すごいすごい。ほんと見た目はレストランね?でも味はどうかしら?」


「ご飯よそるから座っててね」


 雪ちゃんが、お茶碗にご飯をよそってくれた。いいなこの感じ家族ってこんな感じなのかな?

 

「それじゃどうぞ食べてみて」


「「いただきます!」」


「このハンバーグ!美味しすぎ♡いくらでも食べられそう」


「このサラダも作ったの?」


「ドレッシングはゴマがいいな」


「付け合わせのこれ、バター炒め?これも作ったの?美味うま!」


「そうだよ?ほうれん草と人参のバター炒めだよ?」


 こんなに美味しい料理を作ってくれて本当にうれしかった。だから聞いてしまったんだ。雪ちゃんには確認しておきたかったから。


「雪ちゃん……僕と結婚出来なくなっても一生作ってくれる?僕が女の子になってもずっとずっと一緒にいて欲しいんだ。こんなの僕の我儘わがままだと思ってるけど。やっぱり雪ちゃんには一緒にいて欲しい」


「うん、やっと言ってくれたね。おたくん♡私は、おたくんのその言葉を10年も待ったんだよ?結婚なんて紙きれ一枚に過ぎないじゃない?私は、そんな事は気にしないよ?私はおたくんが女の子になっても……ずっと一緒にいたいよ?……いいえ、ずっと貴方のお傍にいさせてください。おたくん!おねがいします!」



「雪ちゃん、……ありがとう。そんなに僕の事を思っててくれたなんて……。気付かなくてごめん。こちらこそお願いします!」



 夕飯の時間だったんだけど……雪ちゃんと僕の告白大会みたいになっちゃったよ。

 隣に座っていた杏子は苦笑いしてたけど、いいって事なのかな?嫌なら止めてくるところだったし。



 夕飯の時間はこうして過ぎて行った。



◇◇



 ご飯も食べて歯も磨いた。テレビも確認したし今日は後は寝るだけとなる。


 そう、あのキングベッドに3人で寝るんだ。


 布団は2つしかないから、真ん中に僕が寝ると……真ん中の布団が無くなって僕が風邪をひきかねないので、本当ならもう一組、かけ布団があるといいんだけど……。


「今日は、私とおたるんが一緒に寝るから。ゆきよんは一人で寝て?」


「杏子ちゃんは、いつもおたくんと一緒に寝てるんでしょ?今日は譲ってよ?」


「そう、譲らないのね。では勝負よ?」


「おたくんに決めてもらおうよ?」


「「で、どっちと寝るの?」」


「ええええ?どっちも選べないよ?」


 どっちを選んでも、角が立つので僕には選べなかった。


「じゃんけんで勝負よ?」


 結局じゃんけんで買ったのは、雪ちゃんだった。


 杏子は悔しがっていたけど。結局は最初に寝るときだけの話で、いつの間にか杏子は僕にしがみついて寝ていたり、僕が雪ちゃんに羽交い絞めにされてたり、朝までにはいろんな事があったみたい。


 布団はぐちゃぐちゃで朝には掛けてなかったんで、いつかは風邪をひいてしまいそうだった。



 今度からはこうならないように、キングサイズの布団を用意することなったんだ。

 





 読者様へ


お読みいただきありがとうございます。


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