第14話 雪ちゃんは家政婦?
雪ちゃんが家に来るようになって、家の食糧事情は改善した。
雪ちゃんは本当に布団を持ってきたんだ。
寝室は狭いと言ってもベッドが2つは置けるくらいの広さはあったので、同じ高さ同じ大きさのベッドを買ってきて、二つくっ付けてキングサイズのベッドにした。
因みに机は無いので勉強するのは居間になる。
「本当にここで寝るの?」
「うん、今日からよろしくね?おたくんを一人には出来ないから」
「ここ、私の家なんですけど?」
「うん、ありがとう杏子ちゃん。おたくんを助けてくれて……私には何も出来なかったから」
「ふん、そう思うなら、今すぐここから出て行くんだな?」
「そうは問屋が卸しません。それとこれとは話が別です」
「あの……喧嘩はよくないと……」
「おたるん?」「おたくん?」
はい、原因は僕です。すみません。
「でも親は大丈夫なの?高校生が同棲なんて……」
「ダイジョウブ。ちゃんと女の子3人でシェアハウスに住むって言ってあるから」
「あはは……そう、なんだ?」
「雪っち、シェアなら金払うんだろうな?」
「代金は美味しい手料理で払うよ?それとも体で払う?」
「うぐぐ、……そう来たか、いいだろう。家政婦として雇ってやる。賃金はここに住む権利だ」
「杏子ちゃん?ありがとう!」
ふぅ、どうやら話は纏まったようで。
◇◇
杏子との暮らしも慣れてきたし、ちゃんと女子として学校にも通っている。
今日はベッドが届くというので、午後からは家に帰ってきていた。
二人の話が終わったので、様子を伺ってみると、雪ちゃんは今日の晩御飯の下準備を始めていた。
「ねぇお姉ちゃん?」
あれ?杏子は学校モードを解除して、甘々モードになったようだ。
「今日から家政婦を雇い入れたけど、手を出しちゃダメだよ?」
杏子は上目遣いで、子猫みたいに可愛いポーズを取っている。あざとい!
そんな事されたら……惚れちまうやろがぁ!って既に惚れていたんだった。
「大丈夫だよ。僕からは手を出さないから」
僕は杏子の頬に手を当てて、杏子の透き通った瞳を真っすぐに見つめ返した。
「ほんとに?家政婦さんは可愛いよ?」
「僕は杏子が好きだから」
「お姉ちゃん♡私も……大好きだよ♡」
どちらともなく顔が近づき、もう何回目か分からないキスを交わす。
「ん……んちゅ♡……あは♡……このまましちゃう?」
「……家政婦さんが見てるよ?」
「見せてあげるのよ?」
その時、家政婦の今泉雪代は、涙を流して二人の行為を眺めていた。ここに住む条件として、もう一つ追加されていたのが……二人の行為を邪魔しないことだったから。
◇◇
今日から家政婦として今泉雪代が住む事になったけど。私がおたるんの一番だって事を教えてあげるわ。どれだけ私がおたるんを愛しているのか。どれだけおたるんが私を求めているのか、その目でしっかり確かめてみるといいわ。
「……甘やかせてあげる♡来てお姉ちゃん♡」
おたるんは私を求めてくれる。おたるんは女の子になって、私が他の男の子を好きになって離れてしまう事を恐れている。
そんなこと無いのに。私はおたるんだったから好きになったんだから。
おたるんが男の子だったから好きになったんじゃない。最初はアレが小さなおたるんが好きだったけど。それはきっかけでしかなかった。
だから私の気持ちは本当なんだよって教えてあげるの。
今の女の子のおたるんを愛してあげるの。
いっぱいいっぱい。おたるんが私の気持ちを分かってくれるまで。
いいえ、分かったとしてもずっと愛してあげる。
絶対に離してなんかあげない。このおたるんを大好きな気持ちは本当だから。
「……杏子」
「ベッドにいきましょ?」
「うん」
ベッドに横になったおたるんは、餌を待つ雛のように可愛かった。
いいよ。今餌をあげるから。
おたるんに餌を挙げたら、美味しそうに食べてくれたよ。
「おいしい?私の……?え?もっとほしいの?」
おたるんは凄く甘えてくれる。もっともっと甘えていいんだよ?
「あはん♡」
苦しいの?そうよね。まだおたるんは、男の子の部分が残っているもの。
薬で抑えているとはいえ、おたるんは男の子だ。
私にはその苦しみは分かってあげられない。私は女の子だから。
どこが苦しいの?その苦しみを分けてもらいたい。そう思っておたるんの苦しい所を温かく優しくしてあげる。
そう、ここが苦しいのね?そこは私の大好きな場所。おたるんのコンプレックスの塊。でもこれが私とおたるんを導いてくれた大事な物。
何の役にも立たないけど……私はこれが好きなの。
……それは、小さくてもおたるんだから……。
◇◇
私は家政婦として今、初めての食事を作っている。おたくんの食事は私に任せて!
全部私が作ってあげるから。まだ夕食の時間には早いので下準備から始める。
炊飯器は持ってきたし、お米も買って来た。電子レンジは倉庫から出して既に設置してある。
ハンバーグを作るのでタネから作る必要がある。ナツメグとか繋ぎにパン粉も入れようかな?ピーマンは嫌いかな?でも好き嫌いは良くない。
シイタケは出汁に使えるけど人によって好き嫌いがあるし、おたくんはどっちかな?
そうやって夕飯の支度をしていると、後ろからエッチな声が聞こえてきた。
え?ここに住む条件として、二人の行為を邪魔しないでとは言われていたけど?
いつもこんなことしてたの?
今、二人は家族だよね?
……すごい。私はもう、夕飯の準備なんか後回しにして、その二人の行為に夢中になっていた。
二人の行為は、愛している。を体現していると言っても過言では無かった。
こんなにも愛にあふれた行為を私は知らない。
だから、私はいつのまにか涙で視界が滲んでいた。
私はこの二人の間に入っていけるのだろうか?
でも、負けない。私も負けてはいられない。私はまずはお料理で、おたくんに愛をささげるから。
――でも、そっちも頑張るよ?……私のおたくん?
読者様へ
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