閑話

閑話 フーちゃんの魔王城探検



 われは第九代魔王、リアール・フース。

 もともとはタタリ族であるピーちゃんの体の中で遊んでいたのだが、そこに現れたモモと一緒に行ったほうが楽しそうだと思って久しぶりの外に出た。


 第十代魔王。

 どうやらわれはピーちゃんの中にいた間に、死んだことになっていたようで新しい魔王が現れたようだ。そいつは、昔われと少し話したことがあるやつだったので別に嫌なわけではない。むしろ急にわれがいなくなったあと、おそらく魔族が取り乱してとったと思うがよくここまで成長させることができたと感心している。


 魔王が変わったので、魔王城はかな変化している。モモが働いているあのやばい場所然り、魔王城に働く魔族が多くなった気がする。

 

 われが魔王だったときの魔王城は、人族と仲良くなりたかったのであんまり魔族なんていなかった。まぁ、それは結局人族が大嫌いなドラゴンたちにボロボロにされちゃったのだが。


 ちなみになぜわれがそんなことを知っていながら、他の魔族たちに正体がバレていないかというと体を透明化させるものを作ったから。でもたまに……。


「むむ? ここらへんになにかものすごい魔族がいる気がする!」


 と透明化をしているはずのわれに向かって言ってくるやつらがいる。なんでバレてるのかわからないけど、とりあえずわれはわれの威圧が届いたのだということにしている。


(――さて、どうしようか?)


 そんなわれはい今、完全にすることがなくなって暇で暇で仕方がなかった。モモたちは仕事に行って構ってくれそうにない。


(――久しぶりにわれの部屋でも行こうかな?)


 そう思い、いつもよく寝たり遊んだりしていた懐かしの部屋にたどり着いたのだが。


「第十代魔王の……部屋?」


 第九代魔王と書いてあるはずの板には、塗りつぶされたよう上書きされわれの部屋ではなくなっていた。


(――あやつ、新しく部屋作らなかったのか?)


 そう疑問に思いながらすることもないのと、勝手に部屋の中に入った。


「うぅ〜ん」


 部屋の中は、板のところに第十代魔王と上書きされていたにもかかわらずどこも変わっていなかった。一つ一つの家具が、もともとわれが使っているもの。われ御用達のふかふかベットも同じだった。


(――あやつ、何考えてるんのだ……)


 われは、自分が魔王になったにもかかわらず部屋の中のものを全く変えずに住んでいる第十代魔王のことを考えて鳥肌が立った。


 そんなとき。


 ――ガチャ


 扉が開く音がした。


(――やばい)


 慌てて体を透明化して、バレないように息を潜む。


「えぇ〜と……あれがこれでそうしてこれで……」


 中に入ってきたのは、第十代魔王と言われている者ではなかった。顔や体から、オレンジ色のふかふかしてそうな毛がでている獣人。


(――まさかあいつって……!?)


 われは、見た目だけだが魔王時代に見覚えのある人物をまて驚愕した。その獣人は、いつも仲良くしていたハイト。われはいつもハイトの体めがけてジャンプして、ふかふかしていた。


(――懐かしいな……。また、ふかふかしたいな)


 そんなふうに思いながら、テーブルの上に乗っている資料を見てハイトのことを見ていたら……。


「誰だッ!!」


 ハイトは急に、われが透明化している場所に向かって威嚇してきた。動いてもいないし、ましては物も落としていない。


(――気が抜けて透明化が解けちゃったのかな?)


 そんなこと考えていても仕方がない。

 ハイトは依然として透明化をしていて何も見えないはずなのだが、われのことをその獣人特有の鋭い眼光で睨めつけてきている。


(――これはもう、見たかったも同然か……)


 われは、このままだとハイトは一生動かないと思ったのでため息をつきながら透明化を解いた。


「へぇきゅきょ!?」


 ハイトは、よくわからない言葉を叫びながら一瞬にして後ろに下がっていった。


「われは、リアール・フース。久しぶりなのだ」


 われは、びっくりしているハイトのことなど無視してとりあえず名乗っておいた。

 すると奥の壁に貼り付いているようなハイトは、徐々に死んだとされているわれが生きていて目の前にいるのだと受け入れているのか、近づいてきて……。


「お久しぶりですフース様。私はあなた様のことを信じておりました」


 地面に片膝をつけながら、頭を下げてきた。


(――いや、さっき完全に第十代魔王に必要そうな書類を探していたけど……)


「むぐ」


 変なことを口走りそうになったけど、慌てて口を塞いだ。元部下との久しぶりの再会。そんなことを言って再会を台無しにしたくないと思ったから。


「?」


 ハイトは、いきなり奇行に走ったわれのことを不思議そうに首を傾げながら見上げてきた。


(――いかんいかん)


 われは魔王だった頃、ハイトのような部下にはあまり威厳というものを見せていなかった気がする。いつもおちゃらけていた。なので、こういう感動の再会くらいはちゃんとしたいもの。


(――よし)


 決意を固めて、ハイトのことを見る。

 ハイトの顔は、喜んでいるように見える。広角が上がっている。さらになによりさっきから、後ろの腰ある尻尾がものすごい速さで動いている。


「久しぶり。元気だったか?」

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