第30話 因縁


 場所はステージ裏。

 私は鬼上司に、いろいろ変なことを言われ放心状態になっていたがそろそろ暴露大会の時間だと気づいてステージに戻っていった。


(――ふぅ〜……緊張する)


 すでに暴露大会は始まっており、さっきからステージの奥にいる観客の驚く声が耳に入ってきている。

 そして次はアーサーの番。


「行ってくる」


 アーサーは一言言ってステージに出ていった。


(――一体、何を暴露するんだろう)


 私は疑問に思った。だが暴露といえば、アーサーにとって一つだけあるきがする。


(――いやでもそれはさすがに……。ここは、魔王城でこれは第十代魔王生誕祭の出し物だからそんなこと言わないはず……)

 

「僕、実は勇者なんだッ!」


 アーサーは、ステージに立った瞬間何も迷いもせず私が思いさすがに言わないだろうと思ってたことを堂々と言い放った。


(――だ、大丈夫かな?)


「「な、なんだってぇ〜!?」」


 どうやら観客は、嘘だと思っているのかみんなわざとらしくリアクションしていた。


(――よかった……)


 そう安堵していると、ステージからドヤ顔のアーサーが帰ってた。


「すごいわね」


 そう言うとアーサーは、満面の笑みになった。そして満足したのか足早に後ろに下がっていった。


(――よくあんなこと言わたわね……)


 私は改めて、アーサーの度胸に感銘をうけていると今度はガイガイくんが緊張しているような顔をしながらステージに行った。


(――ガイガイくんは一体、なにを暴露するんだろう……?)


 緊張しているガイガイくんには申しわけないけど、ワクワクしながら待っていた。そしてカチカチに固まっているガイガイくんは、ステージの上にぴしっとしながら立ち……。


「おいら、キャットシーなのに実は魚が大っ嫌いなんだ」


 そう、言い放った!


(――そ、そうだったんだ。これは私も初耳。もしガイガイくんがキャットシーだからって魚を勧めていたと思うと……)


 わずかに身震いして、嫌われたくないから絶対にそんなことしないぞと心の中で強く決心する。


「「え、えぇ〜!!」」


 会場にいる人たちは、やはりどこかわざとらしい反応。


(――まさかこの暴露大会、嘘だと思われてるのかな?)


 そう不安になっていると……。


「がんばれよ」


 いつの間にか、ステージから戻ってきていたガイガイくんに元気づけられた。


「うん」


 私は、そんなこと考えていても仕方がない。こっちには、悪事を暴くための証拠となる資料があるんだから信じてもらえる!

 

 そう思って、かなりの数のスポットライトが照らされているステージに向かって足を進める。


(――うぅ……緊張する)


 当たり前だが、目の前にいる観客たちは私が何を言うのか楽しみな顔をしながら待っている。ステージの真ん中に立ったのだが、緊張で口が思うように動かない。


(――大丈夫よ、モモ。あなたならいける)


 私は、いざとなったら何もできない臆病な自分自身に勇気づける。


「実は私が働いて……」


 あとは暴露するだけだと言うところで……。


 ――バタン


 急に会場の電気が全て消えて真っ暗になったてしまった。もちろん私が立っているステージも。目の前は真っ暗。どこに何があって、どっちが前なのかさえもわからない。


(――どうしようかしら……)


「なんだ?」


「いいところだったのにぃ〜!」


 どうやら、観客たちは私よりかなりこの状況に混乱して叫んでいる。


(――このままじゃ、けが人がでちゃう)


 そう思った私は、なにか注意喚起のようなことを口にしようとしたのだが……。


「今すぐ膝を地面につけて両手を上げろ」


 後ろから、そんな男の声と同時に首に剣を突きつけられ身動きが取れなくなった。


(――何がどうなっているの?)


「だ、誰ですか」


 私はいきなり電気が消えたと思ったら、後ろから何者かに首に剣を突きつけられているという摩訶不思議な状況についていけず、思わずその人物に向かって問いかけてしまった。


「黙れ。言うとおりにしろ。知り合いが傷つくところは見たくないだろう?」


 後ろから首に向かって突きつけられている剣の圧がかかってきた。


(――やばい。あと少しで、殺されちゃう)


 命の危機を感じたので、男の言うとおりに地面に膝をつけて両手を上げた。

 すると……。


「へ?」


 視界が暗転し、いきなり体が浮遊感に襲われた。



  *



「なんなのだ……?」


 モモがステージの上に立ち、いよいよ暴露が始まるのだと思っていたのだが急に会場の電気がなくなった。


(――誰かの差し金か……?)


 われはそう思いながら、とりあえずモモのところに行こうかと足を進めようとした。だが、急に目の前に白髪のおじさんが現れて眉を寄せる。


「フース。やっぱりお前、予想通り生きていたか」


 目の前のおじさんは、われのことを知っているかのようなことを言ってきた。


(――われは今、認識阻害の力を使っているから認識できるわけないんのだが……)


 われは有りえないと思った。だが事実として、目の前のおじさんが声をかけてきたので、見えているのかわからないが答える。


「誰だ」


「ふっ……ふふふ。俺はジジル。お前が俺にした屈辱の数々、決して忘れないぞッ!!」


 ジジルと名乗った白髪のおじさんは、われの方に向かって指を指しながら怒声を放ったできた!


(――ジジル……。われ、そんな魔族の名前聞いたことない。このおじさんは何を言っているのだ?)


「……人違いだと思うのだ」


「なっ!? お前まさか、俺のことを忘れたとでも言うのかッ!!」


 ジジルは、自分のことを何度も指を指して「ありえないだろ!」と言いたげな顔をしていってきた。


(――忘れた……? ということは、われ以前にこんなおじさんを3回ぐらい経験した濃いおじさんと会ったことがあるの?)


「いや、お主のことなんてわれの頭の中にいないのだ。だから、忘れたんじゃなくてそもそも知らないのだ」


「くっ……おい、お前が魔王だったときいつも隣に誰がいた!?」 

 

 ジジルは、睨めつけながら歯ぎしりをしてぶっきらぼうに問いかけてきた。


「誰、誰……」


(――魔王だったとき、いつも隣りにいたのって……)


 われは、一匹狼。そんな感じで魔王をしていたので隣りにいるという言葉は、理解できなかった。


(――隣にいるっていうか、そばにいるって言うことなのかな……?)


「あっ、お主か」


 われは、そばにいるという言葉を思い浮かべるとすぐに目の前にいるおじさんが誰なのかわかった。


(――多分、いつも書類と睨めっこしていたおじさんなのだ)


「あぁ、そうだ。俺はなぁろ…ろお前に何度も何度も遊ばれて殺したかった、が立場上殺せなかったんだ」


 ジジルは、涙目になりながらそんな暗いことを言ってきた。


(――われ、別にジジルのことで遊んだことなんてないと思うんだけど……)


「でも、今はお前なんて魔王城にとってただの亡霊だ。死ねぇ!」


 ジジルは、いきなりわれに向かって思いっきり剣を振り下ろしてきた!


 ――キィン


「ちょっと待つのだ」


 われは、冷静にたまたま持っていたミニ剣でジジルの攻撃を受け止める。

 なぜそんなことをしたかというと……。


「今、モモの気配がなくなったのだ。まさか、お主の差し金か?」


「そんなの知るかッ!!」


 ジジルは、そんなふうにいい投げてもう一度われに向かって思いっきり剣を振り下ろしてきた!


 ――キィン


「くっ……」


 われは、完全に受け止めることができると思ったのだが少し体が押された。なのでそれ相応に力を加え、五分五分にさせる。


「お主、腕上がったか?」


(――われが一度だけこやつの相手をしたことがあったけど、こんなパワーなかったのだ)


「俺はお前と違って毎日鍛えてたからなッ!!」

  

 ジジルは、切れながら再びわれに向かって剣を振り下ろそうとしている。

 

(――これ、少し本気を出さないとわれが押されちゃう)


 そう思い、剣を大きく振りかぶっているジジルに向かって魔法でもぶつけようかと思ったのだが……。


「あれ? 何やってるのかしらジジル?」


 われの後ろから、ジジルのことを知っているかのような女の声が聞こてきた。


「ジ、ジジエ姉さん……」

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