第20話 ガイガイくん



 あれからフーちゃんに、ガイガイくんがいる場所を案内してもらいある場所にたどり着いた。


 ここは、言ってしまえば遊園地のお土産売り場のような場所。そこにはこの遊園地のマスコットキャラクターなのか、棚いっぱいの見覚えのあるキャットシーのようなぬいぐるみが置いてある。


(――本当にここなのかな?)


「ここ……ですか?」


 私は、こんな場所にいるのかと疑問に思っていたら自然と口にしていた。


「うむ。コンパスはここを指しておるんだが……ここに、お主が探しているキャットシーがおるかの?」


「ガイガイくぅ〜ん!」


「…………」


 試しに叫んでみたのだが返事はなかった。


(――本当の本当にここに、ガイガイくんがいるの……?)


 私は、疑心暗鬼になりそもそもコンパスがあっているのかと思いフーちゃんの顔をじろりと覗き込む。

 すると……。


「いや、たしかにコンパスはここを指しておるのでいるのは間違いないんだが……」


 フーちゃんは、コンパスを振ったり叩いたりして針が指している方向を確認した。


(――そもそも、コンパスがおかしいんじゃないかしら?)


 そう思って、やっぱり1から地道に探すと言おうとしたのだが……。


「はっ! まさか……」


 フーちゃんは、なにか心当たりがあるのか眉を寄せて考え込むような動作をした。


(――もう、なんなのよ)


 私はそんなふうに思いながら、フーちゃんの口が開かれることをまつ。まってから数十秒。突然フース

ちゃんは、人差し指を私に向けながら口を開いた。


「まさか、ガイガイくんなるキャットシーはタタリ族の呪いにかかっておるんじゃあるまいな?」


「呪い、ですか?」


 私は、タタリ族の呪いなんて一度も説明を受けていないのでフーちゃんの言っていることがまったくわからなかった。


(――呪い。私は呪いなんて、かかったことないけどお師匠様の教えだと呪いにかかった対象は術者のいのままに操ることができるらしい。もし、フーちゃんが言っている通りガイガイくんが呪いにかかっているとしたら大変!)


「うむ。タタリ族の呪いは恐ろしくてのぉ……。なんと、呪いを受けるとその場から一切動けなくなるのだ」


 フーちゃんは、暗い顔をしながら言ってきた。


(――……動けない。動けないなんて最悪の呪いね)


「もしかして、声も出せないってことですか?」


「うむ。だからお主一人でさがすとかなりかかるから、われも一緒にさがしてやろう!」


「……ありがとうございます」


 このお土産売り場には、大量のぬいぐるみがあるのでフーちゃんが一緒になって探してくれるなんて願ったり叶ったり。

 

(――だけど、いくらなんでも二人だけでこの中からガイガイくんのことを見つけるとなるとかなりかかるわね……)


 私はそんなことを思いながら、「でもやるわよ!」と気合を入れ直して棚にあるぬいぐるみを確認しようとしたら……。


「迷子の迷子のキャットシーのガイガイくぅ〜ん。ガイガイガイガイガイガイくぅ〜ん!」


 フーちゃんは、覚悟を決めた私のことなんか知らない顔でコンパスに向かって叫んだ。


(――いや、コンパス使えるのね!)


 私は、さすがにコンパスでこの中から見つけ出すのはできないと思い人力で探すと思い込んでいたのでついつい心のなかでツッコんでしまった。

 もちろん、声にはだしてはない。


(――それが使えるのなら使えるって早く言いなさいよ……)


 そんなことを思い、コンパスの針が止まるのを待つこと数分。


「いた!」


 フーちゃんは突然叫んで、ある棚の前で止まった。その棚は、他のものと特に変わらないキャットシーのぬいぐるみが置かれている棚。


「あの、棚の中にいるきゃわいいぬいぐるみなのだ!」


 そして棚の端っこにある、ぬいぐるみを指さしてきた。そのぬいぐるみは一見、周りにあるキャットシーのぬいぐるみとは変わらない。


(――本当にこれがガイガイくんなのかな?)


 よくわからないので、顔を近づける。

 ヒゲがまばらで、目に少し水の膜のようなものがはっている。これらを見ると、たしかにぬいぐるみではないことがわかる。


「ガイガイくん! 大丈夫?」


 私は、ガイガイくんだとわかってとっさに問いかけてみたのだが……。


「…………」


 その返事はなく、一切動かなかった。


(――もう、だめなのかしら……)


 私はガイガイくんの肩を揺らしたり、声をかけたりしてもなんの返答もなくあきらめかけていた。


「だめだ。タタリ族の呪いは、問いかけた程度で解ける程度ではないのだ」


「じゃ、じゃあもうガイガイくんのことを助けることができないの……?」


(――フーちゃんの言い方はまるで、もうあきらめろって言ってるみたい……)


「いや、われならできる。ちょっとまっておれ」


 フーちゃんはグッジョブサインをして、自信満々に言ってきた。


(――私には、ガイガイくんのことを助ける方法なんて思い浮かばない。もうフーちゃんにかけるしかない!)


 私はそんなことを思い完全に他人任せになっているととフーちゃんは、「これでいいかの……」と後ろにあったぬいぐるみを手に取った。

 そして……。


「ふぉわちゃぁ!」


 再び、何度も聞いたことのある奇声を放ってきた。


(――この声を発しているってことは、まさか……)

 

 私は、フーちゃんがこの声のときに色んなものを変化させているということに気づいて手のひらを確認する。


「ふぅ〜……これを、このキャットシーに振りかけるとよいのだ」


 手のひらにあったのは、謎の白い粉が入っている瓶。


(――こんなので呪いが解けるのかな?)


「わ、わかりました……」


 疑問に思ったのだが、これ以外ガイガイくんのことを救う道がない現実をみて受け取った。


 そしてこの粉をかけて呪いが解けなかったら、本当の本当に取れる手がなくなるという厳しい状況を振り返り、少し吐き気がした。だが、今一度深呼吸をして覚悟を決めガイガイくんの頭から一気にかけた。


「ほりゃ!」


 私がかけた白い粉は最初、なんの変化もなくただただ顔が白くなっただけだった。だが少しづつ顔に浸透していきそれと同時に、徐々に目の前のキャットシーから生気が戻っていき……。


「おう? 体が動く……」


 ガイガイくんは、自分の手を確認しながらそんなことを口にした。


「ガイガ……」


 私は本当に呪いが解けたので思わず、抱きつこうとしたがそれは流石にしすぎだと思いとどまった。

 だが……。


「うおぉ〜。モモォ〜!! お前はおいらの命の恩人だぁ〜!!」


 ガイガイくんは、顔を涙でぐしょぐしょにしながら私の体に抱きついてきた。


(――顔に当たる毛がもふもふしてて気持ちいなぁ〜……。って、そんなこと今はどうでもいいや!)


「え、えっと助けたのは私じゃなくて……」


 私はそう言って、もっと抱きついてきてほしかったが体からガイガイくんを引き離してフーちゃんの方に体を向けた。


「うむわれだ。だな、ガイガイくん」

 

 フーちゃんは、腕を組みながら顎を上にあげて言った。

 

(――……ん? 今フーちゃん、って言ってなかったかな?)


 私は、フーちゃんの言葉使いに違和感を覚えた。


「ま、ま、ま、ま、ま……魔王様!? な、な、な、な、な、なんであれ? 魔王!?」


 ガイガイくんは、もともとフーちゃんの事を知っていてここにいるのが衝撃的だったのか目をパチパチさせながら噛み噛みに動揺している。


「うむ。よく一緒にいたお主の知っている、魔王リアール・フースなのだ」

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