第18話 ふぉわちゃぁ!
「魔王……ですか?」
私はもしかしてなにかの聞き間違えか、言い間違えなのかと思い聞き返してみた。
「うむ。さっきも言った通りわれは、第九代魔王リゼール・フースなのだ」
(――えっ……嘘)
私は、聞き間違いや言い間違えではないことを確認して呆然としてしまった。
リゼール・フース。その名前は、人族なら誰でも知っている名前。魔族が大嫌いだった剣士のときに、何度も殺したいと妬んでいた相手。
それはなぜかというと唯一、魔族の頂点の魔王でありながら人族との友好関係を気づきたいと願っていたくせに裏切ったからだ。なので人族には、結果的に最悪の魔王として名が上がった。
(――いや、でもそんなはずない。あの魔王はとっくの昔に死んでいるんだから)
私は魔王としての力を見るまで、自分のことをここに連れ込んで油断させようとしている幼女かもしれないと思い警戒を解かないと固く決める。
「そのピカピカをよこすのだ!」
自称魔王、幼女ちゃんは私が警戒していることなんかお構いなしに目の前に来て指を指して言ってきた。
(――ピカピカ……? まさかじゃないけど、純金の装備のことを言ってるのかな?)
「これ?」
私は言う通りピカピカの剣とお盆とヘルメットのことを前に出して、確認する。
すると……。
「うむ」
幼女ちゃんは、腕を組みながら「それ以外になにがあるのだ!」と言わんばかりの顔をしてきた。その立ち姿は、まさに傲慢な魔王らしく堂々としている。
「どうぞ……」
正直私は、あげるつもりはなかったけど渡さないといけない空気になったので渡してしまった。すると、幼女ちゃんはそれらを自身の体に身に着けて……。
「ふぉ〜!!」
という、幼女らしいうれしそうな奇声を発してワチャワチャと体を動かして楽しそうに駆け回った。
(――この子、一体何をしたいんだろう?)
私は奇行に走っている幼女のことをどこか遠い目で見ていると、急に幼女ちゃんの体は止まった。
(――どうしたんだろう?)
幼女ちゃんの目は閉じている。顔はこちらに向いているので、どこか怪我をして止まったんじゃないことがわかる。
「ふぉわちゃぁ!」
「……え?」
私は、驚きを隠すことができなかった。
なぜなら体に身に着けていた金ピカの3つの物が、一瞬にしてなくなっていたから。
(――私の見間違いじゃないよね?)
目を擦ったり、2度見してみたりしても幼女ちゃんが身着付けていたものはなくなっていた。
(――どこにいったんだろう?)
私はそう疑問に思いながら、目線が自然と幼女ちゃんが体の前にある手にで止まった。両手は、何かを握りつぶすかのようにがっしり握り合わさっている。
(――もう、意味がわからない……)
「ふぅ〜……」
幼女ちゃんは、力を抜いているようなため息を付きながら手を離した。
すると……。
「え?」
手の平にあったのは、どこからともなく現れた金色のネックレスのが2つ。2つとも、シンプルでどんな服にでもアクセントとして合いそうなネックレス。
(――何よこれ?)
「これが、お主の分」
私が疑問に思っていると幼女ちゃはそう言って、嬉しそうに2つのうちの1つのネックレスを手渡ししてきた。
「あ、ありがとう……」
受け取らないわけにもいかないので、とりあえず感謝して受け取った。受け取ったネックレスは、あの装備の純金のようにずっしりとしている。
(――これ、一体何で出来てるのかしら?)
ネックレスを見てそう疑問に思ったのだが、突然ものが別のものに変わる。その事実を受けて、心のなかにあったもやが晴れた気がした。
第九代魔王。その人は、ある物体を別のものに変化させることができるという噂をきいたことがある。
(――第九代魔王リゼール・フースで、間違いなさそうね)
私はたとえこの衝撃の連続が偶然だとしても、こんなよくわからない場所のことを知っているのはよくわからない幼女しかいないので、信じざる負えない。
そうしないと、話が前に進まない。
「あの……フーちゃん。なんで、死んだはずのあなた様がどこかわからない遊園地で遊んでいるんですか? もしかして私も、死んじゃったんですかね?」
私はもう本人に直接聞くしかないと思い、もらったネックレスを首にかけながら聞いてみた。
するとフーちゃんは……。
「のんのん。われたちは死んだんじゃなくて、タタリ族の中に閉じ込められてるのだよ」
と、訳のわからないことを言ってきた。
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