第5話 【きみを忘れた日常】

 気が付いたら、いつもの空っぽの部屋で僕は1人、涙を流していた。変わらない、変わるはずが無い、ただの夢で。でも、あぁ、どうして僕は泣いているんだ。とっても幸せな夢を見ていた気がするのに、どうして僕は泣いているんだ。あぁ、忘れたくない、ふんわりと浮かぶのに、出てこない。君たちの名前は…。せめて、彼女だけでも…。僕を連れ出してくれた…。

ーーピーンポーン

「あ、あれ?何か頼んでたっけ?」

僕は目を擦りインターホンを覗いてみると、そこには優太がいた。

「えっ!ど、どうして。今日も、部活のはずじゃ」

僕は、びっくりさせた心臓で、急いで扉へ向かった。

ーーガチャッ

「よっ!何となく、暇だったから来てみた」

「部活は!大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫。急遽休みになっちゃって、久しぶりに休んだら、何したら良いか分からなくなっちゃった。だーかーら!来ちゃった!」

「あっ、ありがと?でも、僕の家とくに何もないよ…」

「まぁまぁ、全然気にしないから。お邪魔しまーす…。ほんとだな。お前相変わらず、性格そのまんまな家だな!まぁ、何か買ってきて食おうぜ。俺、まだ何にも食べてなくて、良かったら、一緒に食べに行こ」

「じゃあ、なにか作ろうか?僕もお腹すいたし。寒いしどうせだったら鍋とか作る?ちょっと朝早いけど。」

「えっ!良いの!じゃあ、今日はゆっくり理椿の家で過ごそうかな」

「よし、そうと決まれば、具材買い足しに行かないと、一人分の予定だったから」

「じゃあ、俺、行ってくるわ」

「よろしく!僕は、今ある材料で準備をしとくよ」

「頼んだ!じゃあ行ってくる!」

「いってらっしゃい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る