第4話 【満天の星と6つの想い】

 「?」ちょんちょんと、つつかれて、僕は、はっ!と振り返った。鈴だ!何故か首を少し傾げ、でもさっきまで見てたのと変わらない微笑みを向けて、僕に近づいてきた。

「ど、どうしたの?」

皆も、静かに見つめていた。鈴は、何も気にせず、急に僕を引っ張ってきた。

「鈴?どうしたの?いったいどこへ…」

それでも、鈴はピクリとも反応せず、僕をどこに向かっているのかも分からず、霧の中へと、どんどん進んでいった。

 気付いたら、さっきまでの事は無かったかのように錯覚してしまうような、心地良い草原だった。夜空満天の星と、どこから吹いてるのかも分からない、優しい風が、僕に心地よさを届けてくれた。

「こっ、ここは?」

(喜)「ここは、僕たちがよく過ごしている、とっておきの場所なんだ。」

(楽)「いつも、哥奈たちはここで理椿君の幸せを願ってるんだよ!『今日は、理椿君はどんな事をするのかな?』『今日の理椿君はちょっぴり寂しいのかな?』『今日の理椿君は…』って!皆で色々な理椿君を考えるんだ」

「僕の、事を?」

(愛)「当たり前だろ?僕たちはいつだって理椿君が1番で、今日だって僕は『今日の理椿君も大好きだなぁ』なんて、想ったりしてたんだから」

(怒)「皆、理椿のことが大好きなんだよ。理椿だけで、抱え込まなくたって良い。少なくとも、ここに居る6人はいつだって側に居るから」

何でなんだろう、たった数時間一緒に居ただけなのに。今じゃ、さっきまでの混乱は嘘みたいだ。

「ありがとう。さっきはごめんね。やっぱりまだ、信じられないことは沢山あって、今でも嘘だろ、とか考えてしまうけど。嘘だったとしても、やっぱり皆からそう言って貰えるのって、嬉しいね」

ほんと、今の僕は今までとは少し、違うような感じがする。きっと君が、こうやって連れ出してくれたからだよね。

「鈴、ありがとね。僕を連れ出してくれて」

鈴は、少し頬を赤く染めた。初めて、僕の声が届いたかのようだった。ねぇ、鈴。君は、どうして喋ってくれないの?僕は君の声を聞いてみたい。君が、どんな風に笑うのか見てみたい。君が、どんな事を好きなのか知りたい。鈴が、どんな風に僕のことを見てるのか知りたい。いつか、知れたら良いな。鈴を。

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