第三条 見たくないもの、知りたいこと

放課後。午後4時。

私は、笑梓藍甘の後をつけていた。












 "色恋罪科 第三条 見たくないもの、知りたいこと"








「(ここがあのバカ藍甘の家か……)」

一見して普通の家だった。いや、むしろ大きい。大きすぎる。

豪邸か?あんなに貧しい家だと非難されていた藍甘の家は、裕福だったのか?

動揺が止まらない。私は彼のことを知らなすぎるのかもしれない。


もっと知りたい。彼のことを。


もっと知って、花耶さんに近付きたい!

「ただいまー」

「おかえり。また痣作っちゃって…」

「ちょっとまた喧嘩してきちゃってさ。ボコボコにしてやったけどね」


こいつ、家では虚勢張ってるのか…!

いじめっ子にボコボコに虐められているのはお前だっつーの。


ばたん。ドアが閉まる。

私は考える。考えた。彼がドアから出てくるその瞬間を待って考え続けた。

可能性を考える。


ひとつめ。

バカ藍甘が実は花耶さんの後をつけているんじゃないかということ。そんな行いは私でも躊躇われるというのに、許せない。


ふたつめ。

全部バカ藍甘の妄想で、花耶さんとの接点などまるでないということ。


一番考えたくない、有り得ないこと。みっつめ。

藍甘が花耶さんと恋人関係ないし肉体関係にあるのではないか、ということ。


一つ目は情報を共有しあえていいのかもしれない。二つ目は、安心はするけれどとことん使えないやつだと思う。

三つ目はーー


「あっ……!」

思わず声が出る。藍甘が家から出てくる。

時計に目を見やると、色んなことを考えていたらいつの間にか2時間も経っていたようだ。

さっそく尾行開始だ。




ーーーーー



まさか、この方角は。


「(なんで、花耶さんの家を知ってるの……?)」


というか家に来てどうするつもりだ不純野郎。

インターホンのチャイムを鳴らす。ええ、待って。遮菜ですらあのチャイムを鳴らしたことはないよ!?

花耶さんの姿が見える。ああ、相変わらずかわいい。


「笑梓くん、まってたよ」


空気が凍りついた。私の周りだけが。

え。待ってたって、なんで?私すら家にお呼ばれしたことないのに。

どういうこと?


「やあ、花耶さん。今日はちょっとゲストも用意してるんだけど、いいかな」

「ゲスト?」

「ねえ、出てきなよおっぱいのでかい遮菜ちゃーん」


!?


「なっ、その呼び方はないでしょう!?」

あ。しまった。

バレた。尾行が。私としたことが。


ーーいや、最初からバレていたのか?

でなければ、あんな突拍子の無いこと言うまい。


「ほら、君も知ってるでしょ。優等生の学級委員長、野々葉遮菜ちゃん」

「あ!知ってるよ。遮菜ちゃんも…きたの?」

「ふえ、あ、えっと、その」

「いいよ。。」



何か見てはいけないような、見たくはないものを見てしまう気がした。

吸い込まれるように、私は花耶さんのお家に、禁断の聖域へと入っていく。

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色恋罪科 珈色かぷち @koirocaputi

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