第34話

「俺も聞きたいことがある。おとつい神社で弘志とヤッたって本当か?」



その質問にあたしは硬直してしまった。



クラスのあちこちから笑い声が聞こえてくる。



「俺と別れてすぐにそういうことできるんだな」



「あ、あれは違う!」



「なにがどう違うんだよ。マリナ、泣きながら俺に相談してきたぞ?」



「そ、そうだよ。全部マリナが悪いんだから!」



そう。



あたしがあんなことをしてしまった原因はマリナにある。



マリナがフラフラしなければ、あたしだって弘志君を寝取ることなんてなかったんだ!



「美弥最低」



「インラン」



「俺にもヤラせろよ」



あちこちからあたしをさげすむ声が聞こえてくる。



違う。



こんなはずじゃない。



こんなことになるはずがない!



だって、だってあたしはただ貴也のことが好きだっただけ。



1年生のころからずっと、好きだっただけ……!



☆☆☆


あたしは呆然と自分の机を見つめていた。



放課後になるのに、立ちあがることもできずにいる。



クラスメートたちはどんどん教室から出ていく。



それでもあたしはまだ動けない。



あたしの机にはマジックで《インラン、ヤリマン、ブス》などと乱暴な言葉がなぐり書きされている。



昨日までマリナがターゲットだったはずなのに、今日になって突然変わった。



仲が良かった安藤さんたちも今日はあたし抜きでお弁当を食べていた。



マリナは貴也と一緒に食べていた。



どうして?



なんであたしがこんな目に遭っているの?



理解できなくて、まだ立ち上がることができない。



その時だった、マリナが近付いてきたのだ。



あたしの机を無表情で見つめる。



そして、そっと顔を近づけてきた。



「ありがとう」



え……?



マリナが口角を上げて笑っている。



「おかげで、ようやく弘志と別れられたよ」



なにそれ。



どういうこと?



「やっぱり見た目で付き合っちゃダメだね。貴也とは大違いだったよ」



ふぅーと、長くため息を吐き出すマリナ。



嫌な予感が胸に膨らんでいく。



「早く貴也とよりを戻したかったんだけどね、弘志がうるさくて。自分は浮気するくせにさ」



待って。



それじゃまるで、あたしがマリナと弘志君を別れさせてあげたみたいな言い方じゃない。



スッと血の気が引いて行く。



もしも、全部マリナの思惑通りだったとしたら……?



質問する前に貴也がやってきて、怪訝そうな表情を浮かべた。



「全部教えてあげる」



クスッと笑って美弥は言ったのだった。

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